2016年03月11日 10:12 弁護士ドットコム
「夫名義の家に住み着く義理の妹一家を追い出したい」という女性が、Yomiuri Onlineの「発言小町」に相談を寄せました。
トピ主によると、義理の妹は駆け落ちして2児をもうけるも、夫の借金問題などで離婚(現在は再婚して新しい家族あり)。住むところがなくなり、当時独身だったトピ主の夫が購入した中古マンションに親子で住み着いたそうです。
その後、夫はトピ主と結婚、子どももできました。トピ主いわく「(夫は)年上のため定年まであまりありません。収入はありますが、夫があまりお金に執着がなく使うほうなので、子どもの進学などがいまから心配です」。そこで将来的には、夫名義のマンションを売って換金することを考えており、義理の妹一家にはマンションを明け渡してほしいと希望しています。
トピ主の相談に対して、レスには「婚前に買ったマンションは、ご主人だけのものです。どうしようとご主人の勝手。あなたにはあれこれ指図する権利はありません」と、トピ主が出る幕ではないという意見が並びました。
トピ主は、義理の妹一家にマンションを明け渡してもらうことはできるのでしょうか。濵門 俊也弁護士に話を聞きました。
(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「シングル義理妹親子が夫のマンションに住み明け渡し見込がない」はこちらhttp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2016/0227/752968.htm?g=15)
A. 「明け渡してもらうことはできません」
結論から申し上げますが、トピ主は現時点で、義理の妹一家にマンションを明け渡してもらうことはできません。
トピ主の義妹一家は、トピ主の夫から無償でマンションの部屋を借りています。この状態を法律用語で説明すると、義妹は「使用借権」(無償で借りる権利)を有していることとなります。
本件中古マンションは、トピ主の夫が独身時代に購入したということですから、トピ主の夫の「特有財産」です。特有財産とは、「婚姻前から片方が持っていた財産」と、「婚姻中であっても夫婦の協力とは無関係に取得した財産」のことです。
特有財産は夫婦の共有財産ではなく、例えば、処分するかしないかといったことは、取得した人に決める権利があります。トピ主は、本件中古マンションに関しては「現時点においては」何の権利もなく、義妹一家に明け渡しを要求することはできません。ですからトピ主としては、夫を説得し、義妹一家を追い出してもらうほかありません。
もっとも、先ほど「現時点においては」と断わりを入れたのは、相続のことを念頭に置いたからです。仮にトピ主の夫がトピ主よりも先に亡くなり、相続が発生した場合には、トピ主が本件中古マンションの所有権を取得できる可能性があります。
そして相続後には、貸主として義妹一家に「解約」の申し入れをし、本件中古マンションの使用貸借契約を終了させることができます。しかし義妹一家が同意しない場合には、裁判に発展することもあり得ます。裁判では、使用期間の長短、ほかに住む場所があるかどうか、諸々の事情に基づいて判断されるでしょう。
ちなみに、義妹が亡くなった場合には本件中古マンションの使用借権が消滅します(民法第599条)。なお、義妹の子どもや現在の夫は、使用借権を相続できません。
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
法曹に求められる最も重要な力は、当たり前のことを当たり前のように処理できる、基本に忠実な力「基本力(きほんちから)」と考えている。依頼者の「義」にお応えするするべく、業務に取り組んでいる。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/