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嵐メンバー、俳優として“転換点”へ それぞれの役柄の変化を読む

2016年03月11日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 嵐メンバーの俳優としてのあり方に、大きな変化が生まれている。


参考:嵐・松本潤は弁護士役をどう演じる? 『HERO』木村拓哉に匹敵できるか


 メンバー中、連続ドラマで最もはじめに変化の兆候を見せたのは、相葉雅紀だ。2015年に主演した『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ)はサスペンスタッチのホームドラマで、相葉は臆病者ながら果敢に問題解決しようとする青年役を演じた。嵐のメンバーのなかでもバラエティ番組での活躍が多い相葉は、これまで「見守っていたい」と思わせる柔らかい性格の役柄が中心だった。連続ドラマ初主演を務めた『マイガール』(テレビ朝日)の笠間正宗や、『三毛猫ホームズの推理』(日本テレビ)の片山義太郎などは、まさにそういうタイプの主人公だった。しかし、『ようこそわが家へ』で演じたのは身近に感じられる庶民的な人物像でありながら、精神的な強さも持つ青年であり、相葉の新たな一面を見ることができた。30代のアイドルとして、どうあるべきかを示した作品だったといえよう。(参考:嵐・相葉雅紀の演技が評価を高めている理由とは? 『ようこそ、わが家へ』好調の背景を読む)


 3月4日に行われた第39回日本アカデミー賞で、最優秀主演男優賞に輝いた二宮和也もまた、変化の時期を迎えているようだ。受賞作の『母と暮せば』は山田洋次監督、吉永小百合主演で昨年12月に公開された。二宮は、1945年の終戦から3年経った長崎を舞台に、亡霊として登場する吉永小百合の息子役として出演し、ユーモアを愛する明朗な青年を好演した。戦争を題材にした映画は『硫黄島からの手紙』(2006)以来の出演である。そのほか、昨年12月28日に放送された『赤めだか』(TBS)や今年1月3日に放送された『坊ちゃん』(フジテレビ)など、特に過去の時代を舞台にしたドラマで二宮の高い演技力が発揮されている。ドラマ評論家の成馬零一氏が指摘するように、30代前半の二宮がこれまで持ち味としていた“青年役”の演技を活かすために、こうした題材が選ばれているのではないだろうか。(参考:嵐・二宮和也が『母と暮せば』『赤めだか』『坊っちゃん』で示した、俳優としての真価)


 松本潤は、4月からTBS系日曜劇場『99.9-刑事専門弁護士-』に弁護士役で主演する。2014年に主演したフジテレビ系連続ドラマ『失恋ショコラティエ』以来のドラマ出演となる。これまで『きみはペット』、『花より男子』(いずれもTBS)や映画『僕は妹に恋をする』(2007)など、少女漫画原作の実写作品への出演が目立ち、原作のキャラクターを想起させる圧倒的なオーラが高評価を得ていた松本。次回出演ドラマでは、専門用語を多分に含んだ論理的なセリフと、知性を醸し出す芝居が予想される。「今回の作品は新たなチャレンジになると思っています」と本ドラマの公式サイトで松本が語るように、近作の『ラッキーセブン』(フジテレビ)で見せた男らしい役や『失恋ショコラティエ』で見せた草食系男子とは違う一面が見れそうだ。(引用:『99.9-刑事専門弁護士-』公式サイト)また、同じ弁護士役で出演が決定している香川照之や榮倉奈々は、時に主演を喰ってしまうほどの実力派。演技派キャストのなかで松本がどう存在感を示していくのかに注目したいところだ。(参考:嵐・松本潤は弁護士役をどう演じる? 『HERO』木村拓哉に匹敵できるか)


 大野智は、4月から日本テレビ系連続ドラマ『世界一難しい恋』で初のラブコメ作品に挑戦する。ドラマ『歌のおにいさん』(テレビ朝日)や『怪物くん』(日本テレビ)などで披露したコミカルな役柄から、『魔王』(TBS)や『鍵のかかった部屋』(フジテレビ)で見せた影のあるミステリアスな役柄まで幅広く演じてきた大野だが、恋愛シーンの含まれた作品への出演は珍しい。(参考:嵐・大野智がラブコメディーに挑戦する意義は? 明治大学の名物講師に訊く)次回ドラマで演じるのは、仕事はできるが、変人な上に恋愛ベタというホテル経営者。アーティスティックなイメージが強い大野だけに“変人”を演じるのは問題なさそうだが、メンバーの中でも特に照れ屋なため、その恋愛シーンは観ている側もドキドキしそうだ。


 櫻井翔は最近、連続ドラマへの出演はないものの、2015年の新春ドラマ『大使閣下の料理人』(フジテレビ系)にて、妻子のある料理人の役柄を演じた。当時のインタビューで「奥さんがいて、子どもがいて、というシーンをやれるようになったのは、すごく自分の世代を生きているという感じがしました」と語っていたように、櫻井にとっても感慨の深い作品となったようだ。(参考:嵐・櫻井翔、妻役の広末涼子を絶賛「こんな素敵な人いるのかな」)今後はほかのメンバーと同じように、年相応の役柄が増えていくのではないか。自身の冠バラエティ番組『櫻井有吉アブナイ夜会』(TBS)では、毎回迎えるゲストと分け隔てなく接し、自身の恋愛観や女性の好みについてもオープンに言及するなど新たな一面を見せているだけに、次なる連続ドラマではさらなる変化も期待できそうだ。


 グループ結成17周年を迎える嵐は、いまなおアイドルとして絶大な人気を誇っているが、メンバーは全員30代となっており、これまでとは異なる役柄に挑戦する時期に差し掛かっているのだろう。メンバーそれぞれの現在地を探ると、それがよくわかる。ジャニーズアイドルは役者としてどう年齢を重ねるべきかという問題に、頂点を極めたグループである嵐は今後、どう向き合っていくのか。この2~3年が大きな転換点となりそうだ。(小島由女)