5日、富士スピードウェイでディレクション・レーシングのランボルギーニ・ウラカンGT3をシェイクダウンさせたケイ・コッツォリーノ 3月5日、富士スピードウェイ。この日シェイクダウンされたスーパーGT300クラスに参戦するディレクション・レーシングのランボルギーニ・ウラカンGT3は、ひさびさに日本でレーシングスーツ姿をみせた男がコクピットに乗り込み、初めてのコースインを担当した。その男の名は、ケイ・コッツォリーノだ。
「こんにちは! おひさしぶりです」。
爽やかな笑顔でコッツォリーノはこちらを見るなり声をかけてくれた。トヨタの育成ドライバーとしてフォーミュラトヨタ、全日本F3とステップアップ。2010年には、国内最高峰であるフォーミュラ・ニッポンに参戦。特別戦のJAF Grand Prixではアグレッシブな戦略でポールポジションも獲得したドライバーだ。気さくなキャラクターで、その頃毎戦のように貴重なコメントをくれていた。
■レースから遠ざかり、そしてふたたびサーキットへ
そんなコッツォリーノだが、2011年に向けてFニッポンのシートを得られず、2012年に乃木坂46カラーのBMWを駆りWTCCにスポット参戦して以降、サーキットから遠ざかりはじめた。持ち込みのシートのオファーはあるが、プロとしてなかなか声がかからない。
一方で彼はイタリア人のカルミネ・コッツォリーノさんを父にもつが、カルミネさんが経営するレストランチェーンの表参道のお店を任され、“ケイ・コッツォリーノ店長”としての活動が板についてきていた。しばらく、コメンテーター等の仕事でサーキットには来るが、ドライバーとしての活動はめっきりなくなっていった。
しかし2015年、コッツォリーノはレーシングカーのコクピットに舞い戻った。元F1ドライバーのビンチェンツォ・ソスピリの誘いを受け、ランボルギーニが14年からスタートさせた育成プログラムのメンバーとなったのだ。
「ランボルギーニもこれからモータースポーツに力を入れていくというので、その波に乗ろうと。これが最後の波かと思いました(笑)」とコッツォリーノは言う。
「イタリアに行ってオーディションを受けて。レース活動はいったん休憩していましたけど、モータースポーツを長くやりたいと思ったら、やはりメーカーのドライバーになりたかったんです」
その後コッツォリーノは、ランボルギーニ・スーパートロフェオ・ヨーロッパにソスピリ率いるVSRから参戦。その一方で、15年に実戦デビューしたウラカンGT3の開発ドライバーを任された。ワークス格のグレッサー・レーシングで、3回ほどウラカンGT3をテスト。「自信になりましたし、今年に向けていいトレーニングになりました」という。
●「もし日本で走ることができたらすごく嬉しい!」
5日、富士スピードウェイ。カーボンブラックのウラカンが用意されたピットに着くなり、コッツォリーノは手慣れた様子でコクピットの計器類をチェックしていく。この日はディレクション・レーシングのエースである横溝直輝もステアリングを握ったが、まずはウラカンに慣れているコッツォリーノがステアリングを握りコースイン。チェックを行いながら周回を重ねた。
「まず、しっかりエンジンもかかって、シェイクダウンさせることができたのは良かったです」とコッツォリーノ。
「まだクルマもイタリアから運ばれてきたままですし、タイムはまだ出せるパッケージではないんです。でも、まる1日トラブルなしで走り切れたのは良かった」
まだチームは正式にスーパーGT参戦ドライバーを決定したわけではないが、ランボルギーニと密接な関係を構築しているディレクション・レーシングにとって、育成ドライバーのコッツォリーノは有力な候補であるはずだ。まして彼は語学も堪能。日本語、イタリア語はもちろん英語も自由に使いこなす。チームには欠かせない存在になるだろう。
もしスーパーGTを戦うことが決まったら、コッツォリーノにとってはひさびさの日本でのレース。コッツォリーノ自身も「日本でのレースは2010年が最後でしたからね。5年ぶり。もし走ることができたらすごく嬉しいです!」と楽しみにしているようだ。
「僕は日本国籍も持っていますし、日本人として海外メーカーのファクトリードライバーになれたというドライバーは今までの歴史の中でもなかなかいないと思うんです。ぜひファンの皆さんに応援していただきたいです」
「それにこの顔で、ヨーロッパよりも日本のサーキットの方が知ってますから(笑)。なかなかフクザツですけどね!」
熱きイタリアの血と、日本人らしい繊細さ、ていねいさをあわせ持つコッツォリーノ。ふたたび日本のサーキットで、その走りを見たいドライバーのひとりだ。まずはチームの体制発表を待ちたいところ。ちなみに、現在コッツォリーノはレストランビジネスには関わっていないというが、彼には“とっておきのプラン”があるようだ。
「祝勝会でみんなで行きたいです。その時は僕がちゃんと料理を作って、サービスしたいですね!」