2016年03月07日 12:01 弁護士ドットコム
恋人間でも発生しやすい、お金をめぐるトラブル。恋愛関係にあるからこそ、相手の求めを断りきれずにお金を貸してしまい、いつまでたっても返してもらえない...というケースは少なくないようです。
最悪なのは、お金を貸したまま破局してしまったケース。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、「別れた彼女が金を返してくれない」と話す男性から相談が寄せられました。
男性は3年前、当時の彼女に70万円を貸しました。ところが、返済してもらえないまま破局。いまだに一銭も返してもらっていないそうです。「借用書はなく、証拠となりそうなのは、手帳に書いた『貸した日付と金額』だけ。少ない額ではないので、返してほしい」と男性は語ります。
別れた彼女からお金を返してもらうには、どうすればいいのでしょうか。石井 龍一弁護士に詳細な解説をしていただきました。
A. 話し合いが無理なら、訴訟に。勝訴のカギは借用書。
恋人間のお金の貸し借りであっても、法律的には「金銭消費貸借契約」という法律行為になります。金銭消費貸借契約が成立したと認められるためには、(1)返す約束で、(2)お金を貸した、という二つの事実が必要です。
今回のケースでは借用書を作っていないということですが、口頭の約束で借用書がない場合でも、(1)(2)の事実があれば、貸したお金を返すよう請求できます。
まずは相手に、返してくれるよう話をしましょう。お金を返すように請求できる権利には時効がありますが、個人間の貸し借りでは返済期限から十年です。ご相談者は三年前にお金を貸したということですから、まだ時効にはかかりません。
話し合いをしても相手が応じない場合は、内容証明郵便を送るなどして、返済を請求できます。
それでも支払いを拒まれたら、民事訴訟を起こすことになります。
民事訴訟で相手が争ってきた場合、裁判で勝つためには、前述した①返す約束で②お金を貸したという事実を立証しなければなりません。
明確な借用書などがあれば立証は容易ですが、今回のように、日付と金額が書かれた手帳だけでは上記二つの事実の立証としては不十分かもしれません。
「借金の踏み倒しは、犯罪ではないか?」と思う方もいるかもしれませんね。もし、借金をする時点で、返す意思も返せる能力もないことが明らかにわかっているのに金を借りたという場合には、借りたこと自体が詐欺罪になる可能性があります。
しかし、借りた時点ではそのような事情がなく、単に後で返せなくなったというだけでは犯罪にはなりません。交際中は相手を助けてあげようとか、相手からよく思われたい、という思いでお金を貸してしまうことがあると思います。
しかし、関係が破綻すると、今回のように借金の回収が困難になることがあります。恋人や友人のような親しい仲でも、お金の貸し借りは慎重にすべきです。トラブルを防ぐためにも、借用書を作成した方がいいでしょう。借用書の体裁に決まりはありませんが、貸した金額や日付、貸した相手のサインや印鑑、いつまでに返すなど、返す意思があることが明確にわかる言葉は必要です。
万が一借用書がなくても、(1)返す約束と(2)お金の交付が立証できる可能性もあります。
また、交渉により、一部でも回収がすることができる場合もありますので、弁護士など専門家に相談されるのがよいでしょう。
【取材協力弁護士】
石井 龍一(いしい・りゅういち)弁護士
兵庫県弁護士会所属 甲南大学法学部非常勤講師
事務所名:石井法律事務所
事務所URL:http://www.ishii-lawoffice.com/