2016年03月07日 11:42 弁護士ドットコム
日用品大手ライオンが「トクホ」(特定保健用食品)として販売していた飲料について、飲むだけで薬に頼らずに血圧が下がるような広告をしたのは「著しく効果を誤認させる違法な表示だ」として、消費者庁は3月1日、健康増進法違反(誇大表示禁止)として、ライオンに対して再発防止を求める勧告を行った。
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ライオンの発表によると、勧告の対象になったのは、酢を使った「トマト酢生活トマト酢飲料」。2007年にトクホとして許可されたものだ。ライオンは、2015年9月15日から11月27日まで、日刊新聞紙に掲載した広告表示で、「『トマト酢生活』は、消費者庁許可の特定保健用食品です」「“薬に頼らずに、食生活で血圧の対策をしたい”」などと記載していた。
消費者庁は、『トマト酢生活』に血圧を下げる効果があると表示することについて、消費者庁長官から許可を受けているかのように示し、一般消費者の誤認を引き起こす可能性があると指摘している。
勧告を受けライオンは「この勧告を真摯に受け止め、お客様にわかりやすく誤認されない表示になるよう、広告出稿時の管理体制をより一層強化し、再発防止に努める」としている。今回の『トマト酢生活』はなぜ誇大表示だとされたのか。消費者問題に詳しい大村真司弁護士に聞いた。
「いわゆる『トクホ』は、国が食品の有効性や安全性について審査を受け、食品に、特定の健康上の効果があると表示することを許可された食品です(健康増進法26条)。
ただし、許可を受けていたとしても、著しく事実と異なったり、誤認させたりするような表示は禁止されています(健康増進法31条)」
大村弁護士はこのように述べる。ライオンの表示は、何が問題とされたのか。
「ライオンの商品は、『酢酸が含まれており血圧が高い人に適している』という趣旨の表示を許可されていました。
これは、あくまで『血圧が高めの人に効果がある』という趣旨で、『血圧を下げる効果がある』という表示まで許可しているわけではありません。血圧を『上げない』というレベルも含むわけです。
それなのに、『驚きの血圧低下作用』『薬に頼らずに、食生活で血圧の対策をしたい』などと表示して、あたかも血圧を下げる効果があるかのような広告をしました。これは明らかに許可の範囲を超えるため、勧告されたわけです。
トクホといってもあくまでも食品なので、医薬品のような劇的な効果はないのが前提ですが、消費者のイメージでは『誰でも実感できる効果』のようにとらえているケースが多いようです。
このため、誤認の恐れが大きいので、『健康食品の効果表示は慎重にすべき』というのが日弁連の消費者問題対策委員会の立場です。意見書も何度か出していますが、国の政策はさらに積極的な表示を認める流れになっています。
ますます、誇大広告への注意は必要になってきますし、消費者庁や国民生活センターの監視が期待されます」
大村弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
大村 真司(おおむら・しんじ)弁護士
大村 真司(おおむら・しんじ)弁護士
広島弁護士会所属。日弁連消費者問題対策委員会委員、広島弁護士会 非弁・業務広告調査委員会委員長、消費者委員会委員、国際交流委員会副委員長、子どもの権利委員会委員
事務所名:大村法律事務所
事務所URL:http://hiroshima-lawyer.com