2016年03月07日 10:42 弁護士ドットコム
「部活がブラックすぎて倒れそう… 教師に部活の顧問をする・しないの選択肢を下さい!」。現役教員らが部活顧問制度の改革を呼びかけるインターネット上の「署名活動」が話題になっている。署名サイト「change.org」には、3月6日までに約2万4000人の賛同者が集まっている。
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文部科学省に対して「学校の教師に部活動の顧問をする・しないの選択肢を与えるよう、文部科学省が日本全国の教育委員会に指導することを求めます」というのが署名活動の趣旨だ。
部活顧問をめぐっては、ネット上にも教師たちの悲痛な投稿がみられる。ある相談サイトには「部活指導で、毎週休みがありません。休みにすると父母会から文句が出て、子供たちもやりたいと言います。もうまともな休みは半年以上とっていません。疲れました」という中学校教員の嘆きが書き込まれていた。
現在の部活顧問制度に、法的な問題はないだろうか。また、教員の過重負担を避けるため、部活動制度はどのようにあるべきなのだろうか。土井浩之弁護士に話を聞いた。
「時間外や休日にも部活動のために時間をさかなければいけない教員たちは、人間として尊重されていない状態ともいえます。残業代請求など、きちんと自分の権利を主張していきましょう」
土井弁護士はこのように語る。そもそも学校教育において、部活動はどのような位置づけなのか?
「各学校が教える内容を学校教育法に基づき定めた『学習指導要領』では、部活動について、『生徒の自発的な参加により行われること』『学校教育の一環として教育課程と関連が図られるよう留意すること』などと定めています」
今回の署名活動については、どうみるか?
「今回の署名を通して教員らは、部活動の顧問をするかしないか、選択の自由すらない、と訴えています。この状況がただちに地方公務員法などの法律に違反するというのは難しいと思います。
しかし今回、教員が署名を通して訴えている権利主張とは『自分を尊重するように』という要求です。人権という言葉には、『人間らしい扱いをしてほしい』という願いが込められています。
部活のために土曜日、日曜日も休めなければ、自分の時間を確保することは難しいでしょう。毎日遅くまで部活動の顧問をしていれば、家族との時間も持てないかもしれません。
こういう状態は、人間として尊重されているとは思えません。さらに、部活動に時間をとられることによって、授業の準備に支障が出たり、心の余裕がなくなって、子どもたちの変化に気づかず、いじめが放置されてしまうかもしれません。
教員に過剰な負担となっている現在の部活顧問制度には、見直しの必要性があります」
具体的に、どこを見直すべきなのだろうか。
「学習指導要領に基づいた取り組みを徹底するということに尽きるでしょう。すなわち、要領にあるように、『学習意欲の向上や連帯感を目的として行われる』ことを目的として部活動を行っていくべきだと考えます。
仮に『生徒の自発的な参加』であっても、『学習意欲の向上や連帯感』という目的を超え、土日や放課後の長時間練習をおこなうことは教員、生徒双方のためにもやめるべきです。
そこで2つ提案があります。
まず、部活動の成績を入学選考の評価からはずすこと。次に、現役教師が他の学校の顧問と一緒に運営する公的な大会を廃止することです。こうすることで、部活への過剰な取り組みを軽減することができるのではないでしょうか。
少なくとも、公立学校においてはこれらを実践してほしいですが、無理であれば、教員の労働時間を労働基準法32条の範囲内(1日8時間、週40時間)でおさめることを徹底し、その範囲内でのみ部活動の顧問活動を命じる制度に改めていく必要があるでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
土井 浩之(どい・ひろゆき)弁護士
過労死弁護団に所属し、過労死等労災事件に注力。現在は、さらに自死問題や、離婚に伴う子どもの権利の問題にも、裁判所の内外で取り組む。東北学院大学法科大学院非常勤講師(労働法特論ほか)。
事務所名:土井法律事務所
事務所URL:http://heartland.geocities.jp/doi709/