第2回バルセロナテストを終えたホンダF1プロジェクトの総責任者、長谷川祐介氏。第1回のバルセロナテストではトラブルにより走行ができない日があったものの、後半の4日間は順調に走行することができた。今回、長谷川総責任者にテストを終えた感想、パワーユニットを供給しているホンダとしての目標などについてインタビューを行った。
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――テストを終えた現在の率直な感想は?
長谷川総責任者「素直にうれしいです。パワーユニットに関しては、最後の4日間はきちんと走り切ることができました。目標としていたマイレージは、このテストではまだ到達することはできませんでしたが、この(2回目の4日間の)テストに限って言えば、信頼性が証明できたと思います」
――テストで走りきれなかったマイレージ分の信頼性の確認はどのように行うのでしょうか。
長谷川総責任者「すでにパワーユニット単体での信頼性の確認はそれぞれやっています。ただ、クルマに乗せて走らせると、想定していなかったいろんな問題が起きることもあるので、実際に走らせてみないとわからない部分があり、テストではできるだけたくさん走らせたかった。今後は、このパワーユニットをさくらの研究所に戻して、ベンチの上でテストで走らせたときと近い状況で動かして再確認することになります」
――開幕戦へ向けて、今回のパワーユニットが最終仕様だと考えていいですか。
長谷川総責任者「すでにホモロゲーションも2月28日に済ませました。今回、3月1日から走らせたパワーユニットは、それと同じ仕様です。したがって、最後の4日間でトラブルなく、走っていたことはすごくポジティブな事としてとらえています」
――開幕へ向けて、やり残したことはないですか。
長谷川総責任者「パワーユニット側の最後のテストでの作業は、信頼性を実走で確認することと、レースに向けて最後のデータセッティングを行うことでした。信頼性に関しては先ほども述べたように、この後、引き続きさくらで確認作業を続けます。データセッティングに関しては、開幕戦に向けては、もう少し調整したかったんですが、チームと話し合って、パワーユニット側の調整は行わずに、車体側のセットアップにテストの時間を使ってもらうことにしましたので、若干やり残した部分があります」
――1回目のテストではデプロイが改善されたという評価を受けていますが、それ以外の性能に関して、ドライバーからの評価はいかがでしょうか。
長谷川総責任者「2回目のテストは風が強く、しかも車体のセットアップがなかなか決まらない状況に陥ってしまい、難しいコンディションとなりました。そういう状況で、パワーユニットに関する評価をしても、正しい評価が得られないので、それに関してはもう少し待ちたいと思います。ただ、ドライバーはデータ上でデプロイを含めてパワーが向上していることは確認しています。でも、実際ラップタイムもそんなに良くないですし、ドライバーというのはパワーはあればあっただけ欲しいというのが正直な気持ちでしょう」
――車体側のセットアップの遅れが気になるところです。
長谷川総責任者「今回のテストでは様々な空力パーツのデータ取りを行っている状況で、実際セッティングを煮詰めるという段階まできていません。したがって、ここでセッティングが出ていないことに対して、エリック(・ブーリエ/レーシングディレクター)も「まだ焦っていない」と言っています。おそらく、今後さらに新しい空力パーツを投入する予定で、オーストラリアGPのパッケージはこのテストとは異なるはずですから、テストでセッティングを合わせ込んでも仕方がありません」
――不安は?
長谷川総責任者「正直、Q3にコンスタントに進出するという当初の目標に対しては、テストのパフォーマンスのままだとちょっと厳しくなってきたなという印象です。でも、空力の変化やタイヤのデグラデーションなど、有意義なデータがたくさん取りました。マクラーレンは地力のあるチームですから、そのデータを生かして、しっかりと準備してくると思います」
――長谷川総責任者にとって、今回のテストは総責任者としての初仕事でした。
長谷川総責任者「チームのオペレーションの状況や進め方、技術的な課題を把握することが今回のテストでの重要な仕事だったので、その点に関しては、ずいぶん理解が進みました。例えば、今回ここで走らせたパワーユニットというのは、私がこのポジションに就く前に、さくらの技術者たちが開発したもので、実際には私はまったく関わっていません。でも、その方向性が間違っていなかったことが確認でき、彼らが信頼に耐えうるメンバーだということがわかったことは率直にうれしい。これから、さくらに帰って、みんなと相談しながら、仕事を進めていこうと思います」
――今シーズンの目標を聞かせてください。
長谷川総責任者「コンスタントにQ3を目指すことです。それはイコール、毎レース、ポイントを目指して戦うポジションにいるということです。まずは最低限そこを目標にしなければなりません。『14位を目指して頑張ります』というのはあり得ない話ですから。もちろん、テストでのベストタイムだけを見れば、それが簡単なことではないことはわかっていますが、このマシンにはそれだけのポテンシャルがあるし、マクラーレンにはそのレベルまでパフォーマンスを引き出してくれる優秀がスタッフがいるので、やってくれると信じています」
――パワーユニットを供給しているホンダとしての目標は?
長谷川総責任者「もちろん、チャンピオンであるメルセデスに勝ちたい。そこを目標にしなければ、ホンダとしてF1に参戦している意味はない。やはり、ターゲットはナンバーワンのパワーユニット、エンジンを供給すること。ただ、それもいますぐ達成できる現実な目標ではなく、エンジニアとしてのターゲット。ですから、いつ超えますと宣言するつもりはありません」