2016年03月04日 18:42 弁護士ドットコム
残業代が支払われないのに時間外労働を強いられ、肉体的・精神的に追いつめられた末に退職を余儀なくされたとして、大手住宅メーカー「積水ハウス」(本社・大阪市)の元社員の男性2人(いずれも20代)が、同社に未払い残業代の支払いを求めて労働審判を申し立てていた事件で、和解が成立した。
【関連記事:バスの降車ボタンを押して「うっそでーすw」 小学生の「いたずら」は犯罪になる?】
男性らは3月4日、東京・霞ヶ関の厚生労働省記者クラブで会見を開いて、明らかにした。
和解が成立したのは、それぞれ昨年12月と今年2月のことだという。男性側代理人の明石順平弁護士は「和解条項の中で、経緯や内容については一切口外しないことになっている」と述べ、和解内容について明らかにしなかったが、申立人の男性2人は「満足いく形で和解できた」と納得している様子だった。
和解に至ったことを受けて申立人のAさんは「同期や先輩が長時間労働で苦しんでいる姿を見てきた。営業が壊れると、お客さんとの関係も続けられないし、積水に関しては辞めてしまう営業も多かったので、そういう状況を解決したいと思った」と、申し立ての理由を語った。
そして、晴れ晴れとした表情で「人生でまさか裁判所に行くことになるとは、完全に想定外だった。申し立てたことで、会社から何かされるのではないかと不安に思ったこともあった。今はようやく終わって、ほっとしている」と話した。
今回の労働審判では、何が争われていたのか。申立書によれば、AさんとBさんは、新卒で同社に入社し、外回りの営業を担当していたが、2人ともに長時間労働にもかかわらず残業代が支払われなかったという。2人とも入社1年未満で退職。2015年7月、同社に対し、未払い残業代を請求する労働審判を申し立てた。
同社では、外回りの営業職について、事業所の外で働いているため正確な労働時間を算定しにくいとして、「事業場外みなし労働時間」という制度を適用している。申立書によると、Aさんは多い月で約67時間、Bさんは約79時間の時間外労働をしていたのに、残業代が支払われなかったという。
男性側は「携帯電話を持たされて頻繁に上司に連絡していた」「スケジュール表で予定と実績を管理されていた」などと主張。男性の労働時間は会社によって管理されていて、「事業場外みなし労働時間制度」の導入要件を満たしていないため、多額の未払い残業代が発生していると訴えていた。
審判では、こうした主張に対し、どのような判断が示されたのかは不明だが、男性側代理人の戸舘圭之弁護士は会見で、「安易に『事業場外みなし労働時間制」を導入している企業は多いと思う。今回、労働審判を申し立てて一定の解決をみたことで、事業場外みなし労働の問題点を社会に訴えられたのではないか」と、手応えを語っていた。
積水ハウスは「和解内容についてはコメントできません。なお、制度はすでに改革を終え、残業代を支払う制度に改めております」と話している。
(弁護士ドットコムニュース)