2016年03月03日 14:31 弁護士ドットコム
NPO法人ヒューマンライツ・ナウは3月3日、若い女性たちがアダルトビデオへの出演を強要される被害の実態をまとめた調査報告書を公表した(URLは、http://hrn.or.jp/news/6600/)。報告書には、暴力的な撮影が行われたケースや、AV業界から長年ぬけ出すことができないケース、自殺に追い込まれたケースなどが詳細に記されている。
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報告書によると、若い女性たちは「タレントにならない?」「モデルにならない?」といった甘い言葉でスカウトされたあと、AVプロダクション等が本人の意に反する出演を強要しているという。調査に協力した「ポルノ被害と性暴力を考える会」に寄せられた相談件数は2012年は1件だったが、2014年は32件、2015年は81件にのぼり、増加傾向を見せている。
今回、調査報告書に掲載されていた実例の中から、3つを紹介したい。
Bさんは20歳のころ、知人から「グラビアモデル」の事務所を紹介するといわれたことがきっかけで、X社の専属モデルになった。ところが、撮影直前にAVであることを知らされた。出演を拒否したが「キャンセルすれば高額の違約金が発生する」と言われたため、応じざるを得なかった。
すぐに、Bさんは契約の解除を申し出たが、X社から「キャンセルすると違約金が発生する」「現場に来なければ大学や実家まで迎えに行く」「違約金を支払えないなら親に請求する」などと出演を強要された。その後、Bさんの意思に反して、撮影内容は次第に過激になっていった。
たとえば、撮影のために1日12リットル以上の水を飲まされたり、避妊具を付けず洗浄をしないまま複数人から挿入行為をされたり、膣内に男性器に見立てた管を通し大量の卵白などの液体を何時間も続けて流し込まれるなどした。
Bさんは、「AV に出演した過去から逃れるためには、自分の顔を変えるしか方法はない」と思い詰めて、整形手術を繰り返しているという。
アイドル志望だったLさんは、街でX社からスカウトされた。その際、女性タレントの名前を引き合いに、「みんなAVから女優になった」というとウソの説明を受けた。Lさんは誘いを断り続けていたが、X社から「所属すれば、業界人と繋がりができるのでアイドルになりやすい」といった説明を繰り返し受けて出演を決心した。
しかし、AV撮影は過酷でやめたいと思ったが、食事やプレゼントなどで懐柔を受け、出演を続けた。しかし、有名AV女優として顔が知られてしまったため、「アイドルなどなれるわけもなく、AV以外の仕事は難しい」と言われるようになった。また、X社の広告塔として、AVに関してポジティブな発言をSNS上でするよう求められた。
Lさんは AV 女優以外の選択肢を絶たれたことに絶望して、AVでできる限り生活費を稼いでから海外に移住するしかないと考えた。だが、次第に与えられる仕事の内容は、レイプやスカトロなどの過酷なものに変わっており、Lさんは心身ともに深く傷つきながら出演を続けている。
気の弱い性格だったDさんは、X社の複数のスカウトマンから取り囲まれて説得を受けて、出演の承諾した。出演直後に強く後悔したが、その後も出演を強要された。Dさんは半年ほどの間に、複数のAVに出演した。
DさんはX社との契約を解除することができたが、自分のAVが販売され続けていることに、次第に精神的に追い詰められていった。被害者支援団体に相談し、弁護士にAVの販売停止交渉を依頼することを決意した。しかし、実際に依頼する直前に、首を吊って自殺したという。
(弁護士ドットコムニュース)