2016年03月03日 11:52 弁護士ドットコム
高市早苗総務相が放送法4条違反を理由に、テレビ局に「停波」を命じる可能性に言及したことについて、民放キャスターやジャーナリストら6人が2月29日、東京都内で記者会見を開き、「私たちは怒っています!」と書かれた横断幕を持って、高市総務相への抗議を表明した。そのニュースはさまざまなメディアで報じられ、6人が横断幕を持っている写真も反響を呼んだ。
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しかし、Twitter上では現在、この写真のパロディ画像が多く出回っている。その名も「#私たちは怒っていますクソコラグランプリ」。横断幕の言葉が「電気...消して。恥ずかしい」や「我々6人が新たなSMAPになります」に変わっていたり、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』に登場するセリフ「滅びろジョースター家」に書き換えられた横断幕を、キャスターたちではなく同作のキャラクターが持っている画像もある。
数々のパロディ画像が出回り、「クッソワロタw」と人々の笑いを誘っているようだ。だが、元の画像に書かれた横断幕の言葉を勝手に変えたり、顔に別人の画像を貼り付けてTwitterで流す行為は、法的に問題ないのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。
「クソコラは見ていて笑いを誘うものになっており、楽しいかもしれないですが、法的に見れば著作権侵害である可能性が高いといえます。
著作権には、著作者人格権と著作財産権がありますが、前者の内容として『同一性保持権』という権利があります。これは、著作物について、著作者の意に反する改変を加えられない権利のことです。
クソコラに用いられている写真は、ニュースサイトで掲載されているものなので、ニュースサイトの運営会社やカメラマンに著作権が帰属しているものと思われます。そして、クソコラでは、この写真の中で掲げられた横断幕を白く塗りつぶし、思い思いの文章を書くなどして、改変しています。
言うまでもないことですが、ニュースサイトは、あくまでもジャーナリストらの記者会見の様子を伝えるために写真を掲載したのであって、クソコラを作成してほしくて掲載したのではありません。
したがって、このような改変は一般的に言って、著作者の意に反しているといえます」
クソコラは、どんな場合でも著作権侵害になってしまうのだろうか。
「著作権法上、『著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変』であれば、同一性保持権の侵害にはならないとされます。しかし、クソコラは楽しむために行われているに過ぎないため、『やむを得ない』とは認められないでしょう。
また、クソコラではアニメや漫画の画像を貼り付けているものも散見され、それは別途、そのアニメや漫画に関する複製権などを侵害していることになります。
ちなみに、『私たちは怒っています!』と横断幕で意見表明したジャーナリストたちは、このようなクソコラに使われてしまったことについて、不本意と感じているかもしれません。内容によっては名誉感情を害したり、さらには名誉を毀損されたといえるものもあり得るところです。
そのようなものについては、(実際に請求するかどうかはさておき)ジャーナリストたちとの関係で、不法行為が成立する余地もあります。
このようなものについて、個々に法的責任が追及される事態は実際上少ないと思いますが、法的な問題があるということは理解しておくべきだと思います」
清水弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、Twitterに対する開示請求、Facebookに対する開示請求について、ともに日本第1号事案を担当。2015年6月10日「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル(弘文堂)」を出版。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp