3月に入って、初日が92周、2日目が121周。2月下旬の1回目のテストで憂慮されたホンダの信頼性の問題は、この2回目のテストでは、概ね解決したように見える。
昨年、パワーユニットにトラブルが続出したとき、前任の新井総責任者は、ある部分を修正すると次に違う箇所がトラブルに見舞われるという状況を「まるでモグラ叩きをしているようだ」と表現したことがあった。
あれから1年が経ち、いまホンダは信頼性に関してモグラ叩きをする必要はなくなったようだ。1回目のテストで出たトラブルはマイナーなものばかりで、最後のほころびを繕っている段階に入ったといっていいだろう。
しかしこの日、カタロニア・サーキットでホンダに新たなモグラ叩きが用意された。それは、パワーユニットの性能をいかに出すのかという課題である。2回目のテストの2日目のステアリングを握ったジェンソン・バトンのベストタイムは、同じソフトタイヤを履いて前日に記録したフェルナンド・アロンソの1分24秒735よりもコンマ4秒遅かった。理由のひとつに、この日の強い風が挙げられたが、テストを終えたバトンに笑顔がなかったのは、それ以上にセットアップがなかなか正しい方向へ進められなかったからである。
「今日はドライバーが(クルマのセットアップに)あまり満足できていませんでした。クルマが決まっていなかったために、ドライバーは自信を持ってアクセルを踏めていませんでした。テストなので、この時点ではまだクルマのパフォーマンスをとやかく言うべきではないと思うんですが、少なくとも今日のクルマのフィーリングに関して、ドライバーが満足していなかったことが、われわれとしては大変残念です」とホンダ長谷川総責任者は語っている。
また長谷川総責任者が残念だったと語る理由はもうひとつある。それは、ドライバーがアクセルを踏めなかったために、車体のパフォーマンスだけでなく、パワーユニットのパフォーマンスも正しい評価ができなかったからだ。
というのも、この日、カタロニア・サーキットを駆けるホンダのRA616Hのエキゾーストノートは、いつもより甲高かったと感じた者は少なくなかった。つまり、ホンダはエンジン単体にハード的、あるいはソフト的になんらかの変更を加えた可能性がある。しかし、それがどれくらい性能アップにつながっていたのかが、正確に把握することができなかったのではないか。その質問に、長谷川総責任者は否定はしなかった。
「開幕戦向けて、今日もデータのチューニングはいろいろやりましたし、今日のテストではほぼ最終段階まで来ていると思います」
クルマを速く走らせるためには、次から次へと新たなモグラ叩きが現れる。しかし、信頼性というモグラ叩きと真剣に向き合う段階はもう終わった。それが、いまのマクラーレン・ホンダである。
「ライバルの中には150周近く走っているところもあるので、今日われわれが121周を走ったからといって、安心していてはいけない。でも、昨年より進歩したことは確認できました」
残り2日。昨年できなかったレースシミュレーションをスタートさせる準備はできている。