2016年03月02日 21:31 リアルサウンド
男女トリプルボーカルのロックバンド、Swimyが、シングル『あっちむいて』でメジャーデビューを果たす。
2013年に現体制となり、関西を中心に活動してきた彼ら。昨年にはタワーレコード限定でミニアルバム『ラブルと宇宙』をリリースし、3人の歌声を活かしたカラフルな音楽性でライブハウスシーンの注目を集めてきた。アニメ『銀魂゜』エンディングテーマとなった「あっちむいて」も、疾走感とキャッチーなメロディを持った一曲だ。
リアルサウンド初登場となる今回は、バンドの音楽的なルーツ、そして「一人でいることを肯定したい」というその価値観を語ってもらった。(柴那典)
・「僕のバンドに対する理想は、みんなが歌うもの」(Takumi)
ーー今回のデビューシングルは、いろんな遊び心や仕掛けを詰め込んだ楽曲だと思います。Takumiさんが曲を作っているそうですが、どんなところから楽曲のモチーフが生まれるんでしょう?
Takumi:基本的には散歩している時とか歩いているときに出てくることが多いですね。メロディーやリズムを頭の中で完成させて、そこから取り掛かる。で、DTMソフトで形にしたものをメンバーに聞かせることが多いです。
ーー最初に浮かぶのは?
Takumi:最初に思いつくのはサビのメロディーですね。そこを一番大事にしています。今回の曲も〈あっちむいて こっちむいて〉という言葉とメロディーが同時に浮かんできた。そこが最初にできて、さらにどんな歌詞をつけていこうかということで作っていきました。
ーーメンバーの皆さんはそのデモを聞いた段階でどんな感じがしましたか?
みっけ:すごく新鮮だったし、すぐに口ずさんでましたね。
タイキロイド:ボクモスグニオボエマシタ。トテモ、キャッチーダトオモイマシタネ。
ーーそもそもこの4人がSwimyというバンドとして集まったのは、どういう経緯だったんでしょう?
平成のまお:もともとTakumiと私が高校の軽音で一緒で、そこで一緒にバンドをしていたのが前身なんですね。で、私とみっけは保育園からの幼なじみで、音楽とは関係なくずっと仲が良くて。ドラムが出来ることも知っていたし、Takumiは一緒にやりたいとずっと言っていて。
Takumi:で、まおと一緒にSwimyの前身バンドを組む前に高校生の時にコピーバンドを一緒にしていた時があって、その時にすごいギターが上手いなって思っていたのがタイキロイドだったんです。で、前身バンドでボーカルが抜けてしまって、僕とまおの2人で歌うようになって、男女ツインボーカルになって。で、2013年にみっけとタイキロイドを誘って、そこからトリプルボーカルのバンドとしてやってきたんです。
ーーみっけさんもずっとドラムを叩きながら歌っていたんですか?
みっけ:いや、それは違うんですよ。ずっとドラムだけで、Swimyに入ってから歌うようになりました。
ーー男女トリプルボーカルのバンドにしようという意図は、どういうところにあったんですか?
Takumi:そもそも、僕のバンドに対する理想として、みんなが歌えた方がいいんじゃないかというのがあるんです。みんなが歌えた方がより面白いし、僕らが聴いてきたポピュラーな音楽もそうだった。たとえばアイドルとか、ジャニーズの音楽とか、そういう日常生活で聞いてきたポップスの音楽ってボーカルが沢山いるグループが多いじゃないですか。それがバンドになった途端にそういうルールじゃなくなるのはおかしいなと思って。バンドだってそういうスタイルでいいじゃないかと思うんです。だから、トリプルボーカルを名乗りつつ、結構ライブではタイキロイドも歌ったりするんですよね。
ーーポップスや歌謡曲を聴いて育ってきたということですが、それはどの辺りなんですか?
Takumi:母親が聴いていた音楽とか、小さい時に聴いていた音楽はすごく心に残ってます。ゴダイゴさんとか、今でもグッときちゃうんですよね。そういう歌謡感のあるメロディーはすごく好きです。
ーーみなさんが憧れて育ってきたのはどんな人たちですか?
平成のまお:昔はテレビで音楽番組をよく観ていて。ジャニーズ系のグループとか、SPEEDとか、そのあたりにすごく憧れてました。
ーージャニーズはどの辺?
まお:Kinki Kids、V6、TOKIO、SMAP……ほぼ全部かも(笑)。姉と一緒に机の上で踊りながら歌ったりしてました。
ーーTakumiさんもそういうものを聴いて育った?
Takumi:めちゃめちゃ聞いてましたね。KinKi Kidsとか、小学生のころに振り付けまで真似してましたし。中学生の時はORANGE RANGEをめちゃめちゃ聴いてました。
みっけ:私はまおと幼稚園から一緒で、中学生までは一緒の音楽を聴いたりしたんですけど、高校から激しい方に行ったんです。ドラムもツインペダルにして、DIR EN GREYをコピーしたり。ガゼットとか、スリップノットも好きでした。
タイキロイド:ボクハズバヌケテB’zガスキデシタ。マツモトサンガヒーローデシタ。B’zバッカリキイテ、ヘヤニヒキコモッテズットギターバッカリヒイテマシタ。
ーーTakumiさんとまおさんはジャニーズ的なアイドルに憧れていたわけですよね。そこは、楽器を持ってステージに立つということに直接は結びつかないわけで。
Takumi:確かにそうかもしれないですね。
平成のまお:確かに、私もベースを弾くとは思わなかったですね。バンドを聴くよりモーニング娘。とか、歌って踊ってる人ばっかり追っかけていた。
Takumi:結果として今もバンドを続けているっていうのは、高校生の時に初めてバンドを組んだ時の衝撃が大きいかもしれないですね。自分のルーツには歌謡曲があるんですけれど、その一方で高校生の時にバンドを初めて組んだ時に洋楽のロックに衝撃を受けて。その頃はずっと洋楽ばっかり聴いてました。
ーーそれはどのあたりでした?
Takumi: ザ・ユーズドとか、フロム・ファースト・トゥ・ラストとか、ニュー・ファウンド・グローリーとか、イエロー・カード、シンプル・プランとか、マイ・ケミカル・ロマンスとか。その辺とかも大好きなんです。
・「時代を超えて歌い紡がれるアーティストになりたい」(Takumi)
ーー2013年に滋賀で結成して、それから関西を拠点に活動してきたんですよね。2010年代の関西というと、KANA-BOONとかTHE ORAL CIGARETTESとかシナリオアートとか、そのあたりのバンドの印象が強いですけれども。あの辺とも同世代感はありますか?
平成のまお:それはもう、すごい仲良しです。
Takumi:シナリオアートに関しては、僕らがいた軽音楽部の先輩なんです。一緒にバンドやってたこともあるくらい近い存在で。もうオーラルも友達みたいな感じでずっとやってました。
平成のまお:一緒にツアーとかも回ってたもんね。
Takumi:仲良くやっていたら、なんか知らん間にみんなすごいことになってるみたいな感じで(笑)。
ーーそういう人たちがまだ何者でもない時代からずっと見ていた。その頃から「この人たちはすごいな」という風に思っていた?
Takumi:そうですね。何より音楽が好きで、格好いいなと思っていたので。先に売れたのはただただ嬉しかった。関西でやっている時って、いい音楽をやってると信じている仲間が世間にはまだ認められてない状態なわけですよ。だから自分の感性も間違ってんのかな、こうやって仲良くうだうだやっているだけの感じになっているんかなって思ってたところがあって。でも、自分が信じていたのは間違っていなかったし、Swimyにとっても自分らを信じられるきっかけになった。「よし、俺らも頑張ろう」っていう。
ーーそういう中でSwimyならではの魅力を形にしていったと思うんですが、その最初のきっかけになったのが、昨年にリリースしたタワーレコード限定のミニアルバムに収録された「マスコットになりたくて」だと思います。この曲はどういう風にできたんでしょうか。
Takumi:この曲はこのメンバーになってまだ時期も浅かった時なんで、Swimyというのはこういうバンドだよっていうのをちゃんと示そうと思って作ったんですね。僕がAメロ歌って、次をみっけが歌って、サビではまおが歌ってるんですね。そういう風にトリプルボーカルということを念頭に置いて作った初めての曲だった。そういう意味で僕らにとっては転機になったし、始まりになった曲だと思います。
ーー「あっちむいて」という曲はメジャーデビュー曲でもあるし、アニメ『銀魂』のエンディングテーマである。そこに関してはどういう風に捉えていましたか。
Takumi:もともとこの曲は勝手に『銀魂』をイメージして作っていたんですが、それが本当にたまたまタイアップが決まったんです。そこから、僕が思っているアニメ『銀魂』の世界観と、今僕らが立たされている状況、これから僕らが立ち向かう世界というのをリンクさせようと思ったんですね。サビでは〈あっちむいて こっちむいて〉って言っていて、ふらふらしているように見えるんですけれども、テーマとしては、いろいろ荒波を乗り越えて前に突き進むようなものにしようと思った。バンドサウンドもしっかり勢いのあるアンサンブルにしたんですね。
ーー歌詞のキーワードには「時代」という言葉も出てきています。
Takumi:僕らは今からメジャーデビューするにあたって、時代を超えて歌い紡がれるアーティストになりたいっていう思いもあったし、ちゃんと今の時代を自分たちで切りひらいていきたいと思ったんですね。で、もう一つは『銀魂』の世界観に合わせたところもあって。あのアニメは SFと時代劇があわさった、時空を超えたような感覚があるじゃないですか。そういう意味合いもこめてます。
・「一人で音楽を聴いているところを全面的に肯定したい」(Takumi)
ーーこのデビューシングル以外にも沢山の曲があると思うんですが、Swimyというバンドでは、どんな世界観を描いていきたいですか?
Takumi:基本的には、まず僕らの音楽にいろんな音を入れたいって気持ちがあるんですね。ライブでも風の音とか鳥の鳴き声とかを演じてたりしていて。というのは、僕らの音楽で現実から離れてほしいという思いがあるんです。
ーーちょっとミュージカルっぽいような?
Takumi:そこはライブのステージを作る時によく言ってますね。ミュージカルみたいなステージを作りたい。もっとセリフが入ってもいいんじゃないかと思うし。エンターテインメントとしてステージを面白いものにするのが理想です。僕、ジブリ映画が好きなんですけれど、ジブリ映画を観てるときって、その世界に入り込んで、自分がいる場所を忘れてしまうような感覚になっていたりする。Swimyの音楽でも、そんな風になってほしいと思うんです。だから、まずは一人で音楽を聴いているところを全面的に肯定したい。そこからがスタートだと思っています。
ーーなるほど。一人でいることを肯定したいというのは?
Takumi:最近はフェスが人気で、僕らもやっぱりそこを目指すし、大勢に歌ってほしいという気持ちもあるんですけれど、でも、もともと僕の音楽の聴き方ってそうじゃなかったんですよね。僕は母子家庭で育ってきていて、母親が夜中も仕事にいって、家で一人でいる時が多かった。そういう小さい時に自分の心のやり場がなくて悲しい、怖い、苦しいっていう思いがあったんです。でも、そういう時に音楽に助けられたというのもあって。一人でいるからこそ音楽を独り占めできると思うんです。だから自分も、一人でいることの意義を感じる音楽を作れたら、一人でいる時間を否定しなくてすむ。そう思うんです。
ーーキャッチーなもの、メインストリームなポップソングを志向する気持ちと、一人を肯定する気持ちと、その両方がSwimyの音楽には入っている。
Takumi:そうですね。結局、大勢の人がいても、それは一人の集まりだと思っているので。一人を実感するからこそ大きな輪を作れることがより尊く感じるんじゃないかと思います。
ーーでは、最後の質問。バンドがこの先やってみたいことを聞ければと思うんですが、もし何十億でも使っていい、金に糸目をつけないとなったら、たとえばどんなことをやってみたい?
平成のまお:私たちがよく言っているのは、たとえばどのライブハウスでやりたいみたいな目標より、森の中とか、普通人がやらない場所でやってみたいっていうのがあるんです。ステージもイチから作って、完全なる異空間を作りたい。
Takumi:インフラも全部整備してもらってね。そういう初体験になるような場所を作りたい。バンドをやっていく中で、そういうものを探し続けたいですね。
(取材・文=柴那典)