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GALNERYUSが“100%ヘヴィ・メタル”であり続ける理由「自分が聴きたいものをやる」

2016年03月02日 12:12  リアルサウンド

リアルサウンド

GALNERYUS

 1年に1枚、年によっては2枚ペースというハイペースでリリースとツアーをくり返した結果、王道ヘヴィメタル・バンドとして確固たるポジションを築き、かつさらにツアーの動員やセールスを伸ばしているGALNERYUS。00年代デビューで、ヘヴィ・ロックやミクスチャーに触れず純然たるメタル魂を(しかもすごいハイ・クオリティで)音にし続け、支持を集め続けている稀有なバンドである。


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 12月にリリースした、バンド初のコンセプト・アルバム『UNDER THE FORCE OF COURAGE』を携えた全国ツアー『“JUST PRAY TO THE SKY”TOUR 2016』も3月からいよいよスタート。現在のGALYNERYUSの考え方・創作のしかたをテーマに、バンド創始者であるギターのSyuと、2009年に電撃加入して世間を驚かせた(でもとうにすっかりバンドになじんだ)ボーカルのMasatoshi“SHO”Onoに話を聞いた。(兵庫慎司)


■「風景が頭のなかにしっかりと浮かぶ、映画的なものを作りたい」(Syu)


──最新作をコンセプト・アルバムにしようと考えたのは?


Syu:GALNERYUSというバンドを結成して、いろいろメンバーチェンジがありましたけど、現体制になって、バンドに対する自信であったりとか、各メンバーがすばらしいスキルを持っていて、かっこいい演奏ができたりとか……本当に心の底から胸を張れるバンドになったな、と、2009年にこの布陣になってから思うんですよね。
で、僕としては、バンド創設の時から、こういうコンセプト・アルバムは作りたいなと思ってて。ファーストからサードまでの3枚は、ちょっとコンセプチュアルな、3部作的なアルバムにしたんですよね。で、今回は、完全にストーリーを作りこんで、ジャケットとかもひとつの物語になるようなアルバムを作ろうという、ずっとしたかったことが、ようやく今回のアルバムでできたかなあ、という感じです。何枚もレコーディングして、曲作りもいっぱいしてきて、メンバー間の阿吽の呼吸であったりとか、かなりの域まで到達できている今だからこそやるべきだ、というような感じですね。


──では、そもそもなぜコンセプト・アルバムに惹かれるんでしょうね。


Syu:やっぱりメタルバンド、シンフォニック・メタルが好きなのは、聴いていると風景が浮かんでくるようなね……たとえば鎧であったりとか、ソードとかね、そんな戦いの場面が浮かんでくるような音楽だからなんですね。僕はもともと映画をすごく観るんですけど、いつも音楽がすごく映画を盛り上げてるな、と観るたびに思うんですよ。僕もこういうのがやりたいと。まあ、言うてしまえば、映画を作りたいみたいな(笑)、そんな気分でね。
今までは音楽だけに集中してきたんですけど、今回はアルバムのジャケットやインナーに挿絵とかも……すごく風景が頭のなかにしっかりと浮かぶ、映画的なものを作りたい、という思いが常日頃からありましたね。で、タイミングを図っていると、今回になったというような感じですね。


──曲全体の構成とかアレンジとかは、作り上げてからバンドに渡すんですか?


Syu:はい、もう作曲者が練りまくって、ほぼ完成形に近いところまでデモで作り上げて、メンバーに渡していくという感じです。僕とYUHKI(key)のふたりが。


──その、ひとりでアレンジを練りあげていく時に、メンバーがこれを演奏できるのかどうかを、あまり考えずに作ってません?


Syu:ああ。信頼ですね、そこは(笑)。まあ、みんなすごく努力する人なんで、そういう個人のスキルは信用してますね。あと、自分がデモの段階で考えてた演奏に対して、さらにすごいことをやって返してくれるというのも、信頼しているところだし。


──託される側としてはいかがですか?


SHO:もう僕はGALNERYUSに加入して、今年の秋で丸7年経つんですよね。加入の時、冗談半分で、「声をかけてくれたのはありがたいけど、もうハイトーンは疲れるんでイヤだ」みたいな話はしてたんですけど。「大丈夫、大丈夫」って言われて入ったんですけど、全然(笑)。でもSyuくんの頭の中に流れてるメロはこうなんだ、YUHKIさんの頭の中に流れてるメロはこうなんだ、GALNERYUSとしてこれを再現するんだ、ということで歌うんですけど……大変は大変ですよね(笑)。まあ、GALNERYUSは修行の場なので。


──作曲者としては作りやすいですか?


Syu:というか、自分の曲作りに対して……上から目線で言いますけど、すごく相性のいい声というか。昔は、曲を作って歌ってもらうと「あれ? なんかちゃうな」みたいに思うことがけっこうあったんですけど、小野(SHO)さんの場合は、僕はそれをまったく感じない。


──じゃあ思い出すと、加入が決まった時は「やった!」と?


Syu:いや、もう! だって僕、ファンでしたからね、普通に(笑)。それがまさかね、バンドに入ってくださるなんて思ってなかったですけど。だから、もともと知ってる時間が長かった、というのも、曲作りに反映されてる感じはありますね。「小野さんならこう歌うだろう」みたいな。


SHO:まあ僕も、歌メロを作ろうっていう時に、「ほんとはこういうメロディにしたいんだけど、小野はこうは歌えないから違うのにしようか」みたいなことは、なるべくないようにがんばりたいなと思ってるんですけど、ボーカリストとしては。


Syu:ないですないです!


■「流れ的に同じことをしてても、毎回違うことは絶対している」(Syu)


──で、このアルバムは……というかGALUNERYUS自体そうですけど、本当に、正面から、100%ヘヴィ・メタルだなと。


Syu・SHO:はい。


──で、以前のSyuさんの発言で印象的だったんですけど、今、自分がいいと思えるメタル・バンドって、実はすごく少ないんだと。だから、その中でなぜGALNERYUSを求めてくれる人がこれだけいるのかが、最近わかったんだと。


Syu:ああ。その頃は、毒を吐いてた時やったんですね(笑)。なんか……まあ、言うてしまえば、昔の偉人に対して、リスペクトしすぎて、おんなじことをしちゃってる人が多い。もう姿形まで。それを僕は「イングヴェイ・マルムスティーン症候群」って言ってるんですけど。それはオリジナルを聴けばええやんか、ってなるじゃないですか? 僕もイングヴェイ大好きですけど、あえてストラト(キャスター)は弾かない。ストラトって僕、いちばん好きなギターなんですよ。ほんとはストラト使いたい、だけどメタルの枠内でストラト弾いてしまうと、絶対イングヴェイと比較されるから。
ヘヴィメタルというジャンルの中で、リッチー・ブラックモアとかイングヴェイ・マルムスティーンっていうのはやっぱり神ですから。おんなじことしてちゃダメ。おんなじことしてる人いっぱいいますけどね、プロでも(笑)。


SHO :(笑)。


──自分たちが求められている理由がわかった、というのは?


Syu:それはもう、なんせ、自分が聴きたいものをやる。僕、高校1年の時に「こういう曲をやったらええやろな」と思って書いてた曲があったんですけど、そのあとすぐにストラトヴァリウスを聴いて「あ、やられたっ!」と思ったんですよ。これマジバナで。めっちゃキャッチーで、演奏陣も必要以上に要らんことせんから歌がすごく前面に出てきてて、だけどすごくトータルの音像がよくて……ストラトヴァリウスってすげえなと思ったんですよね。
で、GALNERYUSになって、こういうことをやりたいと思って、それがだんだん受け入れられ始めて、どんどん妥協なくやってきて、気がついたら小野さんが入ってくれて、本当に自分のやりたいことを表現できるようになってきた……その頃に言ったんじゃないですかね、調子こいてね(笑)。でも、事実ではあるからね。


──で、ヘヴィ・メタルのスタイルとかルールは、必ず守るじゃないですか。


Syu:はい、そうですね。それはもう感覚的な問題で……簡単に言うたら、ギターは歪んでなければならないとか、ドラムはツーバス踏んでなきゃいけないとか──。


SHO:ボーカルだったらどうしてもハイトーンが求められますしね。


Syu:そういういろんなルールは、僕もすごくわかるし。たとえば1曲目にSEみたいなのがあって、2曲目で速いの来ました!っていう、そういう定形な流れとか、そういう部分もすごく大事だと思うし。「こうきてくれるか? ああっ、そうそうそう!」って言ってくれるようなアルバム、で、毎回新鮮な感じがする……すっごい難しいですよね! それ。


SHO:はははは!


Syu:10作以上作ってきて、それを守り続けてる。でも、僕らもお客さんも、イントロをパッと聴いた時に、「これ何枚目の何曲目のなんていう曲」って、絶対言えると思うし。で、各アルバムの性格はすごくあるから、それが僕らにとっては武器なのかな。流れ的には同じことをしてますけど、毎回違うことは絶対している。


──僕の世代だと、90年代になってグランジ、オルタナティヴの波がきて、ミクスチャーやヘヴィ・ロックにクラシカルなヘヴィ・メタルが駆逐されていくのを見ているんですね。GALNERYUSってそのあとに、グランジやヘヴィ・ロックの波をかぶってない純粋なメタルとして登場したから、「ええっ今? しかも若いのに!」ってびっくりしたんです。


Syu:(笑)。


──小野さんはグランジ以前から音楽をやっている世代だからわかるけど、Syuさんはなぜその年齡(1980年生まれ)で、クラシカルなヘヴィメタルを目指したんでしょうか。


Syu:簡単に言うと、それしかできない。もちろんNIRVANA以降の音楽もワーッて聴いて、いろんな影響も受けたし、かっこいいなと思うこともあったんですけど、好きになりきれないところがあって。やっぱり自分がいちばん好きなのは、今やってるようなシンフォニックなヘヴィメタル、スピードメタル、パワーメタル……それがいちばんですね。


──GALNERYUSって小野さん以外も、メンバー10歳ぐらい上だったりするじゃないですか。たぶん結成の時、同世代とは趣味が合わなかったんだろうなあと思って(笑)。


Syu:いや、確かにそうですね。20歳すぎぐらいで結成した時に、大阪でメンバーを探したら、やっぱり10歳ぐらい上の人しかいなかった。同じぐらいの歳やったら、ビジュアル系の人しかいなかったんですよ。僕、当時ビジュアル系、ちょっとだけやってたんですけど、そういう中で探しても、あんまりスキルフルな人はいなくて。で、10歳くらい上の人たちを見ていくと、「ああ、すごいなあ」っていう人がいっぱいいて。そういう人たちと組んだ、という感じでしたね。


──じゃあ、のちに小野さんに声をかけた時と、そんなに変わらなかったんですね。


Syu:いや! 小野さんに声をかけるっていうのは、もう……難しい話ですよ?


SHO:はははは! いや、簡単なんです。


Syu:いろんな事情もあるし、OKしてもらえるかどうか……「1曲でもいいからレコーディングで歌ってくれないですか」ぐらいの感じやったんですけどね。小野さんが入ってくれてから、世間様で認めてくださる方が圧倒的に増えたんですよ。やけど、小野さんは……入る前に、あれだけ世間様からの認知度があったのに、GALNERYUSのことを認めてくれて、入ってくれて。それはすごいなと思いました。


──ああ、自分より知られてないバンドに入るのはキャリアダウンだな、的な?


Syu:そうそうそう。


SHO:(笑)。そんなのはないですよ!


Syu:それはすごい感謝してますね。


■「押しつけがましくなくて、必然性があって、かっこいいバンド」(SHO)


──片や小野さんは、ソロデビューより前に東京のジャパメタ・シーンにいたわけじゃないですか。当時の自分のバンドや周囲のバンドと比べて、GALNERYUSってどう思われますか?


SHO:いや、GALNERYUSがデビューした時に──プロデューサーが知り合いで、ファーストアルバムはいただいてたんですよ。「うわ、ほんとにメタルだなあ、かっこいいなあ」と思ってたんです。80年代に僕らがやってたようなメタルって、もっと泥くさいというか、あかぬけてない感じが、今思うとするんですね。でも、GALNERYUSは洗練されてるし……ヘヴィメタルってどうしても「高い」「速い」みたいなのをみんな目指すから、やっぱり自己満足的なプレイヤーとかいたわけですよね。でもGALNERYUSはすさまじくテクニカルなんだけど、押しつけがましくなくて、必然性があって、かっこいいなと思って。


Syu:ドラマティックっていうことですよね。ドラマが曲の中にないバンドが多いんですよ。


SHO:うん。そこは違うなあと思いましたね、自分が入る前から。


──コンセプトアルバムって、まさにドラマですもんね。


Syu:うん。コンセプチュアルなアルバムを出してるバンドはいっぱいいますけど、その中の仲間にはなれたんじゃないかな、とは思いますね。


──もうすぐツアーですが、このアルバムの曲をやるというのは──。


Syu: いやあ、やってみないとわかんないですね(笑)。


──ライブでの再現性を考えずに作ったから?


Syu: 難しいっすね。非常に……表現力も難しいし、単純に技術も難しいし。ちゃんと弾けてやっと0点、の世界なんで。それができた上で、そっから表現をできるかどうかですね。


──小野さん、いかがですか?


SHO: ……ねえ?(笑)。これだけのアルバムを出すと、ライブに行こうっていうお客さんは、かなり期待されるわけで。毎回GALNERYUSは、その期待にちゃんと応えてきたと思うんですけど、今回はコンセプト・アルバムなので。曲順を変えるわけにもいかず──。


──あ、アルバムそのまんまやるんですか?


Syu: やりますやります。1部・2部みたいな感じになると思います。1部はこのアルバムをそのままやって、2部はもう無礼講な感じで(笑)。


SHO:はははは。


Syu:たぶん、すごい開放的な気分でやれるんじゃないですかね。