まるで悪い夢を見ていたようだ。2月27日の「めちゃ2イケてるッ!真冬に汗をかきまくれ 国民投票だよ全員集合」(フジテレビ系)。たまたまテレビで観たら、終始嫌な気分にさせられた。(文:松本ミゾレ)
規制で萎縮するめちゃイケに同情するも、あり得ない企画に疑問
この番組、1996年からスタートした、フジテレビの超人気コンテンツだった。「だった」と過去形で書いたのは、現在ではメイン視聴者層であろう、若い世代の放送時間中の在宅率が低くなっているためか、やたらスペシャルを放送する割に全く話題になることがないからだ。
現在31歳の僕が小学生の頃から放送している番組であるわけで、当時からメインキャストがほとんど変わらずに今に至るため、新鮮味を感じにくくなっていることもあるだろう。
最近は色々と自主規制しているのか、当初の尖った企画が「いじめを助長するのでは?」という懸念から次々と封印され、グルメだのなんだの、つまらない企画を放送することを強いられている。この点から言って、僕はこの番組に非常に同情している。ただ、この日のスペシャルには頭を抱えた。
素人をレギュラーにしておきながら、リストラで視聴率を稼ごうとするな!
今回の放送のメインは、2010年から追加レギュラーとして活躍してきた、三中元克の進退をかけたコンビ漫才の生放送。テレビを観ている視聴者に、彼が組んでいるお笑いコンビの漫才を見せ、結果的に面白いか、面白くないかを投票で決めようという企画であった。
今はテレビリモコンにdボタンがあるが、これを利用することで、視聴者に三中の今後を決定させようと、こういうわけだ。
しかし、ちょっと待てよと言いたくなる。漫才の結果が面白いか面白くないかを、どうしてレギュラー番組からの卒業に絡めるのか、これがさっぱり分からない。その理由めいたものも、長ったらしい時間をかけてVTRが放送されたが、そんなものは後付けでどうにでもなる。
番組側は何をしれっとレギュラーメンバーの今後について、視聴者に委ねて責任逃れをしようとしているのか。dボタンを使ってリアルタイムで視聴者の声を番組に反映させるという取り組み自体は、朝の情報番組ばかりが行って、バラエティ番組ではあまり例がない。
その発想の原点は良いだけに、いわば視聴者にリストラの決定権だけ与えて、自分たちはそれを見守るという姿勢が卑怯に思えてしまう。
めちゃイケ制作陣はレギュラー出演者を一体なんだと思っているのか
前述のように、三中は2010年に行われた追加メンバーのオーディションを勝ち抜いて、素人枠で起用されることになったキャストである。多数の応募者の中から、オーディションを経て、最終的に番組側の意向で選ばれた人物ということになる。つまり番組の都合で誕生した新メンバーだったわけだ。
その三中を、今回は番組の都合で。それも単発の企画として、これまで一緒にやってきた仲間であるにも関わらず、無責任にも博打の種銭にしたような形だ。結果的に三中は、番組に振り回されっぱなしで、涙ぐむ相方と一緒に、クソ寒い中意味もなく屋外で漫才をさせられ、そして投票によってレギュラーを下りることとなった。
確かに三中は芸能界にいる人間のまとうオーラはない。僕も彼の顔が生理的に好きではない。でも、そんな人物を、ああいう形で、「視聴者の選択の結果」という免罪符をもって追放するというのは、それを見せられる視聴者の中の1人としては「馬鹿げた番組をダラダラやってんじゃないよ」と思わざるを得ない。なんであんな茶番に視聴者が巻き込まれなきゃならないのか。
そもそも、レギュラーメンバーは立派な人材。そんな人材を大切に思ってるのなら、ああいう企画はそもそも誰かが発案した時点で否定されるはずだ。この不景気に、テレビでやっているスペシャル版の終盤で、公開リストラを見せ付けられた土曜の夜。めちゃ2狂ってる。
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