ジーン・ハースによれば、彼のF1チームは「どうしてもスポンサーを必要としているわけではない」という。
ハースF1チームは、先週バルセロナでF1マシン「VF-16」を披露したが、そのボディにはオーナーが所有する工作機械会社「ハース・オートメーション」と時計メーカーのリシャール・ミル以外のパートナーのロゴは見られなかった。
これとは対照的に、ジーン・ハースが共同オーナーを務めるNASCARチーム、スチュワート・ハース・レーシングのレースカーはまさに走る広告塔で、賑やかに数多くのブランドのロゴを背負って全米各地のサーキットを転戦している。
F1マシンの簡素なカラーリングについて質問されたハースは「スポンサーになりたいという人は大勢いる。ただ、金を払いたい人はひとりもいないんだ」と冗談まじりに答えた。
彼は自身の会社のプロモーションという目的もあってF1参戦を決めた。3億5000万人の人々に見てもらうことで、会社の世界的な認知度の向上が期待できるからだ。その目的から言えば、当面は他のスポンサーはないほうが良いかもしれないと、ハースは考えている。
「会社名がマシンの名前でもあるのは、私の会社の製品を売るためにはむしろ良いことだ。ハース・オートメーションは消費者向けの製品を作っているわけではない。マーケティングの観点からは、消費者向け製品のほうが関心を呼びやすいのかもしれないが、F1はハースのブランド戦略には適している」
「適切と思われる企業が現れて、チームのスポンサーになりたいと言うのなら、もちろん話を聞くつもりはある。だが、どうしてもスポンサーを必要としているわけではないんだ。スポンサーがなくても活動は続けられる。このチームはとても効率良く仕事をしていて、これからやろうとしていることへの予算もごく常識的な額にとどまる。適切なパートナーが現れたときには、予算規模を拡大することになるだろう」
もちろんハースは、彼のマシンがコース上でそれなりのパフォーマンスを見せるまでは、スポンサーも積極的になりにくいことを承知している。誰もグリッド最後尾のマシンに資金を投じたくはないからだ。
「最大の問題は、まだ“商品”がないことだ。レースにデビューするまでは、スポンサーに対して売れるものがない。スポンサーシップを考えている企業が、シーズンの開幕と同時にバツの悪い思いをすることを恐れるのは当然だ。実際、チームがあまりにもひどいありさまだとしたら、誰もスポンサーになりたいとは思わないだろう」
「だが、その点では私は楽観的だ。チームは最初からプロフェッショナルに見えるはずだし、他のチームから競争相手として認めてもらえるようなレベルでレースができると思う。それを示すことができれば、スポンサーも『オーケー、まともな商品があることは分かったし、成果も期待できる』と感じ、安心してパートナーになろうとしてくれるに違いない」
アメリカの消費者向けブランドがパートナーになってくれれば理想的だ、とハースは言う。
「他のチームのスポンサーを見てみると、エキゾチックなスポーツカーとかエナジードリンクとか、一般大衆の関心を引くものがたくさんある。そうしたスポンサーと組むことはこちらにもメリットがあるし、スポンサーの製品のマーケティングにも大いに役立てると思う。特にアメリカの製品を世界各国に売り込むには最適だろう。F1は世界中に膨大な数の観戦者がいるからね」