2016年03月01日 11:52 弁護士ドットコム
「マイナンバー制度で全国の花火師が続々と廃業」。こんな刺激的なテーマの記事が東京スポーツに掲載された。これまで、ホステスや風俗業の副業バレが話題になることが多かったが、話はついに花火師にまで及んできたのか。
【関連記事:18歳男子と16歳女子 「高校生カップル」の性交渉は「条例違反」になる?】
東スポの記事によると、花火を車に積んで、会場まで運び、現場設営をして打ち上げるまでが花火師の仕事で、普段は工事現場や畑仕事をしている人が多いそうだ。そういう人は夏だけ、メーカーのアルバイトとして働いているのだという。
この報酬が「1現場あたりいくら」という形で支払われてきたが、これまではどんぶり勘定で日給が支払われ、『ご祝儀』をもらうケースもあったそうだ。収入を申告する花火師はほとんどいなかったため、マイナンバーの影響で懐具合を明らかにすることになることを嫌って、辞めようとしている花火師が出ているという。そんな事態は本当に起きうるのだろうか。堀内太郎税理士に聞いた。
「一応断っておきますが、そもそも、マイナンバーの導入以前から、副業の収入もきちんと所得として申告することが必要なのは変わっていません。(20万円以下の場合は、申告不要のケースもあります)
まず、マイナンバー導入によって、『どんぶり勘定』でやってきた会社が急にきちんと経理するようになるということもないかと思います。その場合には、報酬をもらう側にとっても従来と何も変わりません」
では、特に変化はないということか。
「ただし、税務署などの指導によって、会社がルールに則って処理するようになった時には、報酬を申告してこなかった花火師の方々に影響が出てきます。会社が花火師への報酬を給料として処理しているにせよ、外注費として処理しているにせよ、年間で50万円を超える額を支払っている人の給料や報酬の金額は、翌年の1月に税務署に申告することになります。
そうすると、もらっているほうがその収入を申告していない場合は、おかしいということになります。マイナンバー制度の導入によって、変わってくるのはこの点です。従来であれば、会社側と、給料や報酬をもらっている側の申告のマッチングは非常に手間がかかる作業だったと思いますが、マイナンバーの導入によって、迅速かつ効率的にその作業が行われることになるのではないかと思います。
いずれにせよ、花火師の職人文化の衰退をマイナンバー制度のせいにするのは、ちょっと東スポらしい論理の飛躍ではないでしょうか。
花火師の職人文化は、花火師への経済面と安全面での待遇改善によって守っていくべき問題だと思います」
堀内税理士はこのように話していた。
【取材協力税理士】
堀内 太郎(ほりうち・たろう)税理士
税理士法人シグマパートナーズ代表社員。公認会計士・税理士。監査法人系コンサルティング会社で株式上場支援、内部統制構築支援、上場会社の税務申告等に携わった後、会計事務所を経て、現職。
事務所名 : 税理士法人シグマパートナーズ
事務所URL:http://www.sigma-tax.or.jp
(弁護士ドットコムニュース)