少子高齢化が進み、労働力が減少する中、期待を寄せられているのが「外国人労働者」だ。中でも日本の学校で学んだ経験のある留学生は、外国語と日本語を使える人が多く専門知識もあることから、グローバル化を進める日本企業への就職も増えている。
日本企業に就職した留学生は、2014年には1万2958人にのぼり過去最高。ただし就職先の半数は中小企業というのが現状だ。2月26日放送の「おはよう日本」(NHK)では、中小企業で働く留学生社員の様子や企業の取り組みを取り上げていた。
50人の中小メーカー、7人の新入生全員が留学生出身
番組が取材に訪れたのは、埼玉県川口市の金属加工メーカー川島金属。主な発注元は国内大手メーカーだが、海外に生産拠点を移す企業が増え、業績が伸び悩んでいた。そこで海外企業との直接取引に乗り出したという。
はじめは海外事業を任せられる日本人を探したが、応募がない。そこで注目したのが外国人留学生だ。3年前から採用を進め、いまでは約50人の社員の4人を占める。さらに海外事業を強化しようと、今年の新入社員7人全員が留学生出身となる予定だ。
埼玉大学大学院を修了して2015年に入社した中国人の李さんは、取り引きに必要な専門知識を得るため製品設計をしたり、来日した中国企業の担当者との商談に臨んだりと多様な仕事に携わっている。語学力を生かし、英語を日本語に翻訳する業務もこなす。
李さんは「いまの仕事は会社の発展に関わる仕事。信用してもらい感謝している」と笑顔で話す。北川典宏部長も、会社にとって留学生社員は欠かせないと語る。
「母国(留学生の出身地)の言葉をしゃべれる強みを持っている。日本人で外国語を話せる人材は社内にいない。なくてはならない存在」
ネットを介して留学生と中小企業をつなげるサイトも
ただし、川島金属のようにうまくマッチングしているところばかりではない。留学生は日本の独特な就職活動についていけないことも多く、企業も留学生がどこにいるのか分からないこともあり、すれ違いが生じている。
このようなミスマッチを減らすためには、どうすればよいのか。留学生の就職支援のサポートを行う留学生支援ネットワークの久保田学事務局長は「(企業と留学生との)接点を増やしていくことが一番の課題」だと指摘する。
九州経済産業局は今年度から、福岡県を中心として中小企業に留学生を紹介するサイトを立ち上げている。留学生が自己PRなどを撮影してサイトに投稿すれば、登録している中小企業が閲覧できる仕組みで、気になる人材がいれば直接やりとりも出来る。
サイトの開設から4か月程度だが、登録した留学生の数は10か国のおよそ100人に上る。来年度からは九州経済産業局と各県が協力し、九州全域で行う予定だ。
最も多い外国人の不満は「給与が低い、給与がなかなか増えない」
しかし番組の視聴者からは、留学生の定着に懸念を示す声もあがっていた。
「留学生を中心に中小企業が採用するのは各社の勝手というものだけど、入社後の昇進昇給について、ひいては将来経営陣に加えるところまで考えてやってるのかなぁ…?」
人手不足を一時的に解消するために、従順な外国人労働者を安く使い捨てるつもりであれば、悪評は留学生の間で広まり、日本に寄り付かなくなってしまう。経済産業省が2月5日に公表した資料によると、中小企業で働く留学生の不満として最も多かったものは「給与が低い、給与がなかなか増えない」(34.0%)というものだった。
取材を担当した川島記者も、「特に優秀な人材についていえば、将来はいかに定着してもらえるのかといったことも重要になってくるかもしれません」と、スタジオでその点を指摘していた。
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