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ダイスケ、デビュー5周年を迎えた心境を語る「もっと“いま”を生きなくちゃ」

2016年02月29日 18:01  リアルサウンド

リアルサウンド

ダイスケ(撮影=下屋敷和文)

 今年デビュー5周年を迎えたシンガーソングライターのダイスケが、4枚目のオリジナルアルバム『君にかける魔法』をリリースする。シングル曲「愛は散って ライライラライラ」「HAPPY」「birthday」「せかいにひとつのフタリ」を含む本作は、エレクトロからアコースティック・サウンド、フォークロアを取り入れた楽曲まで、彼の多彩な音楽性が楽しめる作品となっている。また「いつも不安を抱えているタイプだからこそ、“いま”を生きないといけない」という思いが込められた「泡沫」など、彼自身のパーソナリティが感じられる楽曲も聴きどころだ。今回リアルサウンドでは、ダイスケの単独インタビューを実施。アルバム『君にかける魔法』の制作をフックにしながら、5周年を迎えた心境、ファンとの関係性、彼自身のソングライターとしての変化などについて語ってもらった。(森朋之)


(関連:ダイスケ、5周年アニバーサリーライブで全28曲披露 ニューアルバム&全国ツアーの発表も


■「自分の音楽をみなさんに聴いてもらいたかった」


——4thアルバム『君にかける魔法』が完成しました。フルアルバムは前作『tsumugu』(2014年)以来、約2年ぶりとなりますね。


ダイスケ:そうですね。しかも前作はカバーアルバムとセットだったから、完全なオリジナルアルバムは2nd(『星のドロップス』/2013年)以来なんですよ。


——『tsumugu』以降の2年間は、ダイスケさんにとってどんな期間だったんですか?


ダイスケ:2年前はちょうど『ZIP!』のレギュラー(情報番組『ZIP!』のスマイルキャラバン。ダイスケが日本各地を訪れ、その土地の名所・名物を紹介するコーナーで2011年5月から2013年3月まで続いた)が終わった頃で、僕にとってもひとつの節目だったんですよね。それまでの活動はテレビがメインだったんですけど、2年前からは音楽が中心になって。47都道府県ツアーをやったり、楽曲の制作にもさらに時間をかけるようになりました。『ZIP!』をやらせてもらっていた頃は、1週間のうち5~6日は旅をしてたんですよ。だから曲を作る時間、レコーディングできる期間もかなり限られてたんですよね。特に1stアルバム、2ndアルバムは詰め詰めのスケジュールだったので、けっこう大変だったんです。だから今回のアルバムの制作なんて、逆に余裕はあったのですが……まあ、結果的にはギリギリになったんですけど(笑)。


——(笑)。テレビ出演で知名度が上がった後、「ここからはいよいよ音楽で勝負」という気持ちもありました?


ダイスケ:うん、それはありましたね。実際、『ZIP!』で名前を知ってもらうことが多かったんですけど、「テレビで見たことはあるけど、音楽は聴いたことがない」という方がけっこういらっしゃって。とにかく自分の音楽をみなさんに聴いてもらいたかったし、楽曲の制作にも時間をかけたかったんですよね。制作のスタイルも変わってきてるんです。いままでは自分が弾き語りで作ったデモをアレンジャーの方に渡してたんですが、最近、まずは自分で1回アレンジしていて。歌詞やメロディもさらに作り込んでいるし、少しずつ自分のやりたいことが形に出来てるんじゃないかなって思います。


——いままで以上にダイスケさんの音楽性が表れていると。


ダイスケ:そうだと思います。たとえば「GOKU」「東京ラヴァーズ」などは自分のアレンジをもとにして、アレンジャーの方に手直ししてもらってる感じなんです。もともと僕はリズムやコード進行を先に打ち込んで、そのうえにメロディを乗せることも多くて。歌詞がいちばん最後なんですよね。


——シンガーソングライターというより、楽曲全体を構築するクリエイター気質なのかもしれないですね。アルバムの全体像に関してはどんなビジョンがあったんですか?


ダイスケ:「HAPPY」「せかいにひとつのフタリ」などアッパーチューンもリリースしていたので、パーティ感のあるアルバムにしたいなというのはありました。いままでのアルバムはメッセージ性がテーマになることが多かったので、今回はもうちょっとシンプルに楽しめる作品にしたかったんですよね。歌詞だけじゃなくて、サウンド、メロディ、アレンジを含めて楽しんでもらいたいなって。


——確かにサウンドもさらに多彩になってるし、ライブで盛り上がりそうな曲も多いですよね。


ダイスケ:たとえば「GOKU」は完全にライブをイメージして作った曲なんです。アコースティックギターがメインになっているんですけど、とにかく「アコギも上手いんだぞ」というところを見せたくて(笑)。さっきの『ZIP!』の話につながるんですけど、僕はミュージシャンっていう色が少ない気がするんですよ。テレビで知ってくれた人に対しても「しっかり音楽をやっていて、ギターも上手いし、いい曲も作ってるよ」っていうのをアピールしたいなと。それが顕著に出たのが「GOKU」ですね。ちなみにこの歌詞は『ドラゴンボール』から来てます(笑)。


——そのまんまなんですね(笑)。


ダイスケ:『ドラゴンボール』が大好きなんです(笑)。悟空って、どんなにボロボロになっても前向きだし、必ず這い上がってくるじゃないですか。僕は失敗も多し、ヘコむこともたくさんあるから、悟空の精神でがんばりたいなって思って。ホント、「デビューから5年経って、そんなミスする?」みたいなことがあるんですよ。たとえば特効のタイミングを間違えて、曲を止めちゃったり……。


——どういうことですか?


ダイスケ:ライブ中、ある曲でキーを間違えて、途中で曲を止めちゃったんです。その曲のなかでテープを飛ばすことになっていたのをすっかり忘れていて、曲が止まった瞬間にパーン!っとテープが舞い散ったっていう。だいぶトラウマになってますけど、後悔しつつ「次はがんばろう」っていう気持ちで乗り切ってます(笑)。



「いい意味で人に気を遣わなくなってきた」


——「東京ラヴァーズ」はおしゃれなサウンドが印象的で。これもダイスケさんのアイデアなんですか?


ダイスケ:そうですね。この曲は「渋谷系みたいな曲を作ってみよう」というところから始まっていて。ピチカート・ファイヴとか、初期のCAPSULEみたいな雰囲気が好きで、それを自分でもやってみたいなって思ったんですよね。そうやって曲の雰囲気から決めるのもすごく楽しいんですよ。


——好きな音楽の幅も広そうですね。


ダイスケ:どちらかというとリスナーの意識のほうが強いというか、音楽を聴くのが好きなんですよね。曲を作るときのアイデアにもなるし、いまもいろんな音楽を聴くようにしてます。


——「なんて」に代表される、ダイスケさん自身の生身の感情が伝わるラブソングもこのアルバムの魅力だと思います。


ダイスケ:1stアルバム(『ボクにできること』)に「惑星プラトニック」という曲が入っているんですよ。“世界を敵に回しても君を守るよ”っていうピュアなラブソングなんですけど、その続編を書いてみようと思ったのが「なんて」なんです。純情だった自分が5年経って、ちょっと現実を知ったというか……。


——5年経てば人生観、恋愛観も変わってきますからね。音楽活動のスタンス、シンガーソングライターとしての考え方も、この5年のなかで変化があったと思うんですが。


ダイスケ:そうですね。以前よりは腰を据えて音楽に取り組めていると思うし、いい意味で人に気を遣わなくなってきたんじゃないかなって。「音楽人生が何年あるかわからないんだし、そのときにやりたいことをやろう」と思えるようになって。自分の名前で音楽活動をやってるのに、ヘンに気を使ってしまったら、もったいないじゃないですか。最終的には、ぜんぶ自分でやりたいと思ってるんですよね。奥田民生さんが大好きなんですけど、民生さんってひとりで全部楽器を演奏することもあるでしょ? それを自分もやってみたいなって。


——「泡沫」にある<一秒だって/無駄にはしないよ>というフレーズにも、現在のダイスケさんのリアルな思いが反映されているのかも。


ダイスケ:これは完全に僕の恐怖心から生まれた曲ですね。家族だったり仕事だったり、「失ってしまったらどうしよう」って常に怯えてるところがあって。そうじゃなくて「もう少し“いま”を生きなくちゃな」っていう気持ちで書いたのが「泡沫」なんです。


——ということは、仕事が好調だったり、プライベートが充実していればいるほど、それを失うのが怖くなるっていう…。


ダイスケ:まさにそうですね(笑)。中学生みたいですけど「明日、死んだらどうしよう?」なんて考えちゃうし、そういう夢を見ちゃうこともあるんです。ただ「泡沫」みたいな曲を書くことで、自分自身が救われているところもあるんですよね。失恋したときに失恋の曲を書けば、ちょっとスッキリするし。そういうことがないと、シンガーソングライターをやっている意味はないのかなって思います。


——ダイスケさんの一般的なイメージって、おそらく“明るくてハッピー”というところが強いですよね。


ダイスケ:キラキラした曲も多いですからね。「HAPPY」や「せかいにひとつのフタリ」みたいな曲——明るくて幸せでポップで——は、たぶん自分の理想なんですよね。だから、周りの方から明るいイメージで見てもらえるのはすごく嬉しいんです。「泡沫」みたいな裏の部分もちょいちょい入ってきちゃうんですけど(笑)、自分の内面を見てほしいという気持ちもありますからね。


——アルバムのタイトルともリンクしている「僕にかける魔法」はフォークロア調のサウンドを取り入れていますね。


ダイスケ:アルバムのなかで最初に作った曲なんですけど、まさに「民族的な音楽を取り入れたい」というところから始まったんです。DEENの池森秀一さんにサウンドプロデュースをお願いしたんですが、ギター以外は全部打ち込みなんですよ。自分でやってたらもっと生楽器を入れてたと思うので、すごく新鮮でしたね。


——“魔法をかける”というテーマはどこから生まれたんですか?


ダイスケ:『メリーポピンズ』ですね(笑)。映画が大好きで、そこからヒントを得ることもしばしばあるんです。自分に魔法をかけるというか、スイッチを入れるために音楽を聴くこともありますからね。ライブの前はテンションを上げるためにずっとユニコーンを聴いてたり。心配性なところがあるから「これを聴けば必ずテンションが上がる」っていうものがあるって、すごく大切なんです。もちろん「君にかける魔法」がみんなにとって、そういう1枚になってくれたらいいなという気持ちもあるし。感情の手助けになると思うんですよね、音楽って。



「僕を支えてくれる人たちって、僕に近いところがある」


——アルバムの最後に収録されている「音符の傘」はファンに対する思いが込められたナンバー。


ダイスケ:昨年はツアーをやっていないので、なかなか会える機会がなかったんですよ。特に地方のファンのみんなに届いてほしいなと思って書いた曲ですね。みんなには本当に支えられているので……僕、ファンの子たちが大好きなんですよ。ファンとかお客さんっていう言い方をしたくないくらい、すごい理解者だと思っているので。僕もみんなのことを理解してあげたいし、助けてあげたいなという気持ちも強いです。


——ライブの雰囲気もすごく温かいですよね。アーティストとファンというより、もっと近い距離でつながっているというか。


ダイスケ:友達みたいな感覚なんですよね。ぜんぜん段差を感じないというか、高校生くらいの男の子も「ダイスケ~」ってタメ口で話しかけてきますから(笑)。そういうのが嬉しいんですよね、僕は。ステージに立ってるときは少し高いところにいますけど、ストリートライブをやっていたときは駅のロータリーとかで歌っていたわけだし。「フラットな関係でいたい」というのは、いまもまったく変わってないですね。だからこそ「理解してもらいたい」「理解してあげたい」という気持ちも強くて……これは僕の勝手なイメージかもしれないですけど、僕を支えてくれる人たちって、僕に近いところがあると思うんですよ。どこかで孤独を感じているというか……。


——ダイスケさんの内側にある孤独に反応しているのかもしれないですね。


ダイスケ:ライブを続けていると、そういう子が変わっていく過程も感じられるんですよね。最初はひとりで会場に来ていた子がまわりの人たちと話したり、いっしょに歌ったりしていると「吹っ切れたのかな」って思ったり。そういうこともすごく嬉しいんですよ。ファンの子の成長が自分の成長につながっているというか。Twitterでも友達感覚で接しているから、ときどき「ファンのこと、ホントに考えてくれてる?」みたいなことを言われることがあるんですよ。いつも「いやいや、待ってよ。俺、みんなのこと大好きだから」って答えるんですけど、それを曲として形にしたのが「音符の傘」なんだと思います。


——アルバムリリース後の展開も、ファンの気持ちを優先することになりそうですか?


ダイスケ:今年は純粋に、みんなに会いに行きたいですね。ツアーも1回ないし2回はやりたいと思ってるので。ライブをやることがいちばん充実感を得られるんですよね、やっぱり。ステージに立つ前はすごく怖いんですよ。ライブをやるたびに1日ずつ寿命が減ってるんじゃないか? と思うくらいのプレッシャーがあるんですけど、生きてる実感がいちばんあるのもライブなので。ハダカの状態でやるしかないし、自分を削ってる感覚もあるんだけど、終わったときはいつもスカッとするんですよね。ファンのみんなもすごく楽しみにしてくれてるから、期待以上のものを返して、しっかり楽しませたいなって思います。