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インディカー7年目を迎える佐藤琢磨、合同テストで新エアロの理解を深める

2016年02月29日 14:51  AUTOSPORT web

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最終セッションで4番手に入るタイムを記録し、マシンの理解を深める佐藤琢磨
2016年シーズンのインディカー・シリーズは、開幕直前の公開テストをアリゾナ州フェニックス郊外にある全長1マイルのオーバルコース、フェニックス・インターナショナル・レースウェイで行った。佐藤琢磨は今年でインディーカー参戦7シーズン目を迎えるが、フェニックスで走るのは今回が初めて。インディーカーが最後にここでレースを行ったのは2005年と、もう11年も前のことだ。

 今回のテストは、シボレー、ホンダの両陣営がストリート/ショートオーバル用エアロキットの2016年バージョンを初めてお披露目する場でもあった。また、エンジンも2016年シーズンに向けては開発可能なエリアが広げられたため、より大きなパワーが引き出されている。昨年までとは大きく異なるマシンを使い、走ったことのないコースでテストをする。それが多くのドライバーたちの置かれていた状況だった。マシンだけでなく、コースの特性や特徴といったものまで素早く掴み取る力が試されたのだ。

 琢磨が走るのは、今年もAJフォイト・レーシングだ。エンジン及びエアロキットは、もちろんホンダである。驚くべきことに、琢磨のフォイトでの活動は今年で4年目になる。チームと彼はとても強い信頼関係で結ばれているということだ。

 フォイト・チームは昨年から2台体制へと拡大し、若いイギリス人ドライバーのジャック・ホークスワースに41号車を委ねた。そのホークスワースも今シーズンに向けて残留させた彼らは、2年続けて同じドライバー・コンビネーションでフルシーズンを戦うのである。その上で、チームのエンジニアリング部門は強化がされた。

 テスト初日の最初のセッション、琢磨は20秒3268のベストで21台がエントリーした中で16番手につけた。夕方から行われた2セッション目ではタイムが20秒0000まで縮まり、順位はひとつだけだが上の15番手だった。

 2日目、琢磨は正午からのセッションで19秒7689まで自己ベストを縮めて見せた。ところが、ライバル勢の進歩の方が大きく、順位は17番手へと後退。

 そして最終セッション、琢磨はまたしても自己ベストを更新。19秒4998で4位という上位につけた。セッション毎にタイムを縮めていったことは、琢磨というドライバー、及び彼のチームのエンジニアたちが新しいマシンとフェニックスというコースへの対応を正しく行い、マシンのパフォーマンスを向上させていったことを意味している。ただし、琢磨のベストは全員が予選用セッティングで走ることをしなかった4セッション目に記録された。その時のコンディションは、日中のセッションより気温が下がった、タイムの出し易いものになってもいた。4セッションを総合すると、琢磨のベストは21台中の13番手にランクされるが、実際のポジショニングはそれよりやや後方かもしれない。

 しかし、249周という多くのラップをこなしたことで、琢磨陣営は豊富なデータを集めることができた。作業を分担していたチームメイトのホークスワースも、4セッションの総合でタイムでは最下位とはなったが、194周を走り込んでいる。ふたりのデータを解析し、フェニックスでのシリーズ第2戦では戦闘力の高いマシンを用意したいところだ。

 フェニックスでのプレシーズンテストは、シーズン序盤のフェニックスでのレースに向けたものとしての意味も間違いなく大きい。しかし、それ以上に重要なのは、今年から使用される新エアロをまとい、新しいエンジンを搭載したマシンへの理解を深めることだ。琢磨陣営の場合は、強化したエンジニアリング部門を狙い通りに機能させ、マシンのセッティングを向上させることが必要で、その第一歩としては、まずまずのものを見せられた2日間のテストとなっていた。

 AJフォイト・レーシングは、今シーズンに向けてマネジメントスタッフの補強も行った。彼らの加入は、マシンの準備やレースでのピットストップなど、チームの総合力を高めることを狙ってのものだ。琢磨自身の2勝目、そして更なる勝利を重ねるためには、チーム全体のレベルアップが必要である。しかし、今回のテスト期間中、フォイト・チームは2台ともピットストップの練習をほとんど行っていなかったのは残念なところだ。

(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)