2016年02月29日 11:12 弁護士ドットコム
「うちの夫は、犯罪行為とは無縁なはず」と、安心していても、まさかの裏切りにあうこともあります。出会い系サイトなどを通じて知り合った少女と関係を持った男性が、「児童買春容疑」で逮捕されたなどのニュースが日々、報道されています。この中には、妻子のいる男性も珍しくないようです。
弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、「出会い系サイトで知り合った17歳の女子高生と性的関係を持った」という男性から相談が寄せられました。「つい魔が差してしまって...」と、今さら後悔している様子です。そして「ばれて前科がついたら、妻の意思だけで離婚されてしまうのですか?」と、身勝手な心配をしていました。
配偶者以外と肉体関係を持つことは、「不貞行為」として民法の離婚理由に定められています。女子高生と肉体関係をもったことも「不貞行為」にあたり、離婚されてしまうのでしょうか? 坂野真一弁護士に詳細な解説をしていただきました。
A.未成年との淫行は処罰対象だが、前科がついたら即離婚とは限らない
はじめに、未成年との性交渉が犯罪かどうか説明しましょう。
ご相談者のように、相手が十三歳以上で、肉体関係を結ぶ合意もあれば、刑法上の強姦罪などは適用されません。
しかし、相手の女性は十八歳未満ですから、お金など何らかの「対償」(対価)を支払っていた、または支払う約束をして、肉体関係を結んでいたら、「児童買春、児童ポルノにかかる行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(「児童ポルノ禁止法」)に該当する可能性があります。
また、何らかの対償がなくても、肉体関係を結んだ地域の条例に、青少年との淫らな性行為・性交類似行為(いわゆる淫行)を処罰する規定がある場合は、条例違反として処罰される可能性があります。
真摯な男女交際に基づく性行為までは禁止されませんが、自らの性的欲望を満足させる目的での青少年との性行為は、処罰対象です。
ご相談者が、お金を支払う約束をしたかどうかは不明ですが、結婚している男性が出会い系サイトで知り合った女子高生と真摯な男女交際に基づく性行為を行ったとは認められないでしょう。前述の条例が制定された地域であれば、条例違反には問われるケースだと思います。
また、事件の発覚によって前科がついた場合、離婚されることを心配していますが、前科がついたというだけで離婚原因になるかは明確ではなく、その他様々な事情をふまえて判断されるでしょう。
もっとも、今回のケースに関しては、前科の問題以前に、「不貞行為」をしたこと自体が、裁判上の離婚原因に該当します。ただ、裁判上の離婚原因があって離婚裁判を起こされたとしても必ずしも離婚判決になるとは限りません。
不貞を働いてしまった夫側には、「タイムマシンがあれば、当時の自分を殴り倒してでもやめさせるのに・・・」とおっしゃる方が多いものです。
しかし、現実にはタイムマシンはなく、過ちは消えません。配偶者に誠意ある謝罪をして許しを請い、与えた被害以上の償いをする、という当たり前のことをする他ないと思います。
その結果として、被害を受けた側も、お互い人間なのだから、自分でも失敗することはあり得るのだから、と考えてくれ、双方の溝が浅くなることがあるかもしれません。
離婚は本来、幸せになるための決断です。離婚をすることで本当に幸せになれるのか、じっくりと考えてもらう他ありません。
【取材協力弁護士】
坂野 真一(さかの・しんいち)弁護士
ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則(中央経済社)」。近時は火災保険金未払事件にも注力。
事務所名:ウィン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.win-law.jp/