2016年02月28日 07:41 弁護士ドットコム
夫か妻のどちらか一方にだけ家事の負担がかかれば、結婚生活は一気にストレスフルに。夫婦間の「家事分担」は、平和な結婚生活をおくるための永遠のテーマです。弁護士ドットコムの法律相談には、ある男性から「妻がほとんど家事をしない」との嘆きの声が寄せられました。
男性と妻は結婚して4年。子どもはいません。妻は専業主婦ですが、料理以外にほとんど家事をせず、「食器を流しに放置して何日も洗わなかったり、平気でゴミを1ヵ月溜め込んだり...」。妻はいたって健康体で、家事ができない特別な理由もありません。しかし帰宅後や週末には、掃除、洗濯など妻が放棄した家事全般を男性がおこなっているそうです。
大黒柱として経済的な責任を負っている上に、家事負担も大きい結婚生活に、男性は「結婚生活の意味がわからない」という気持ちが芽生え、最近は離婚を考えることもあるそうです。
妻が離婚に同意しなければ、調停や裁判となります。その場合、妻の「家事放棄」は離婚理由になるのでしょうか?原口未緒弁護士に詳細な解説をしていただきました。
A. 「家事をしない」というだけで離婚できる可能性は低い
私がよくするたとえ話ですが、離婚が認められる理由として、柔道でいう「一本勝ち」になるのは、浮気(不貞行為)とDV。それ以外の理由は柔道でいうと「有効」や「技あり」で、いくつか組み合わせないと勝てない、というのが実情です。
ご相談者の妻のように、「家事をしない」という理由は、「有効」になりうる理由の一つです。民法に定められた離婚事由の中では、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかどうかが判断のカギとなりうるでしょう。ただ、なぜ、「なる」ではなく、「なりうる」なのかというと、それは「家事をしない」と一口にいっても、そのレベルは様々だからです。
一般的に、夫は、「自分の母親と同レベルの家事」を妻に要求することが多いように感じられます。母親が専業主婦だった場合は要求するレベルが高く、母親がワーキングマザーだった場合には要求レベルは低くなるということです。これは、子育てについても同様ではないでしょうか。家事や子育てをどこまでやれば「十分」なのかは、その人の価値観次第、というところが大きいのではないかと思います。したがって、裁判所としては、離婚を認めるか否かの判断を下しにくいといえます。
「家事をしない」「子育てをしない」というのは、「有効」にはなるとしても、ポイントが低く、それだけで離婚が認められることはないでしょう。例えば、家事をしないことに加えて、別居しているなど、他の事情もあれば、離婚が認められるかもしれません。
今回は男性からの相談ですが、女性にぜひ聞いていただきたいアドバイスを一つ。男性は、基本的にすごく寂しがり屋です。かまってあげたり、褒めてあげたり、いたわってあげないとすぐにヘソを曲げてしまいがちです。なので、奥さんが仕事と子育てばかりに邁進していて、頑張るあまり疲れて、例えばセックスレスになってしまったりすると、男性は浮気をしてしまうケースもあります。「愛情が冷めたから離婚する」と言って、突然家を出て行ってしまうケースもあります。これは私も経験済みですので(苦笑)、どうかご用心を!
【取材協力弁護士】
原口 未緒(はらぐち・みお)弁護士
東京弁護士会所属。ココロもケアするカウンセリング離婚弁護士。コーチング・カウンセリング・セラピーなどをもとに、調停・裁判をしないで円満離婚を実現する、『幸せになるための離婚』を提唱しています。
事務所名:弁護士法人 未緒法律事務所