2016年02月27日 07:01 弁護士ドットコム
「旦那の風俗遊びが許せない」「風俗遊びはとても嫌なので離婚したい」。そんな悩みを抱えたことはありませんか。ネット上にも、夫が風俗に行くことをめぐる妻の悩みが多数投稿されています。
「Yahoo!知恵袋」にはこんな事例がありました。
夫が風俗に行くことを一切許すことができない、自慰行為をすることさえも「気持ち悪い」と感じてしまう女性は、夫が一度、会社の付き合いで風俗に行ったことで、離婚を考えています。ただ、夫は離婚を拒否しているそうです。
一方、「教えて!goo」には、夫の財布の中身を見た際に、風俗店のポイントカードが5枚も入っていて、常連客であることを知った女性の投稿がありました。
「お金は相当使い込んでるようですが浮気確認は出来ず、彼は認めてませんが出金のでどころは風俗通いだけです。風俗が原因でも慰謝料や養育費など請求できるものでしょうか?」と打ち明けています。
また、弁護士ドットコムの法律相談コーナーには夫が風俗に行ったがために、性病に巻き込まれて、離婚を考えている女性からの相談もありました。
夫からうつされたのはクラミジア。後遺症とも言える強烈な腹痛が残り、医者からも「菌がいなくなっても慢性化した腹痛は一生残ります」と言われてしまいました。結婚して5年経ちますが、一緒に暮らしたのは10年間。子どもが1人います。離婚ができるのか、慰謝料が取れるのか、子供の親権を手に入れられるのかを気にしているそうです。
果たして、夫の風俗を理由に離婚することはできるのでしょうか。長瀬佑志弁護士に聞きました。
A. どこまでの行為に及んでいたのかによります
離婚を切り出して、夫が同意すれば協議離婚として成立しますが、そうではない場合、裁判で離婚が認められるかどうかになります。認められるためには、離婚原因(民法770条1項1号ないし5号)にあてはまっているとともに、裁判所で棄却されないことが必要になります(民法770条2項)。
今回の場合離婚原因としては、夫が風俗に行ったことが、「不貞行為」(民法770条1項1号)又は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するかどうかが問題となります。不貞行為とは、本人の意思に基いて、配偶者以外の者と性交を行うことをいいます。
夫が風俗店を利用して行った性交については、配偶者以外の者との性交ですから、「不貞行為」に該当するといえます。また、仮に性交まで及ばなかったとしても、オーラルセックスなどの性交類似行為を繰り返すなど、度を超えた行為があったのであれば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」といえます。
以上からすれば、風俗に1回だけ行ったとしても、「不貞行為」又は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚原因に該当する可能性があります。
ただし、夫が風俗店を利用したことは不貞行為にあたらないと判断している裁判例もあります(東京地判H25・3・22)。また、クラブのママがいわゆる「枕営業」として顧客と性交渉を繰り返したものの、この行為は不貞行為には該当しないと判断した裁判例もあります(東京地判H26・4・14)。
まとめると、風俗に行った際にどこまでの行為に及んでいたのか、また夫が風俗に行ったことで夫婦間にどのような影響があったのかがポイントになるといえます。
次に、性病をうつされた場合についても説明しましょう。
夫から性病をうつされたということは、夫は自分以外の女性と性交に及んで性病に感染したと考えられることから、夫の第三者との性行為、つまり夫の「不貞行為」の証拠に当たるとして、離婚をすることは可能といえます。
もちろん離婚原因が夫の「不貞行為」であるならば離婚に伴う慰謝料請求は可能ですし、それに加えて性病をうつされたことで被った精神的・肉体的な苦痛への慰謝料を請求することも可能です。
【取材協力弁護士】
長瀬 佑志(ながせ・ゆうし)弁護士
弁護士法人長瀬総合法律事務所 代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)
「ノンストップ!」、「ZIP」、女性セブン、週刊ポスト等メディアに出演。夫婦カウンセラーの資格を取得し、精神的サポートも心掛けている。
事務所名:弁護士法人長瀬総合法律事務所
事務所URL:http://nagasesogo.com/