2016年02月26日 19:22 弁護士ドットコム
「11園に希望を出して全て落ちました」「お母さんは家にいろ、といっているようなものです」。東京都練馬区で保育園への入園を希望する母親ら12人が2月26日、区役所の保育課を訪れ、保育園に子どもを預けたくても預け先がない現在の状況の改善を訴えた。
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2月になると、区の認可保育園に新年度から入れるかどうかが通知される。しかし、保育園回りや情報収集などにどれほど取り組んだとしても、全ての子どもが希望した保育園に入れるとは限らない。各地で「保活」に苦しむ親たちがいる。
この日、練馬区役所に集まったのは、区内で保育や子育ての課題に取り組む「練馬保育問題協議会」の呼びかけに応じた母親たち。約半数の母親の胸元には、抱っこ紐に入った赤ちゃんたちの顔がみえた。午前10時30分、練馬区役所本庁舎1階のロビーに集合した母親たちはそれぞれ自己紹介し、保活に苦しむ現状を共有。その後19階の会議室に上がり、保育課の課長を含む職員6人と相対した。
子どもたちは母親の手を離れて自由に動き回っていた。カーペット敷きの床をハイハイする子、キャッキャと楽しそうに声を上げながら部屋じゅうを走り回る子がいる中、部屋の空気は緊迫感に包まれていた。
母親たちが職員をまっすぐに見据え、それぞれ訴えた。
「11園に希望を出して全て落ちました。何のために見学や申し込みで保育園をまわったかわかりません。保育園に入れずに、仕事を失ったときの補償はどうなるんですか」
また、母親たちによると、新設の保育園には、スペースや人数の点で問題があるという。「16園見学して、保育園の格差に驚きました。新しくできた保育園はほぼ、母親として安心して子どもを預けられないレベルです。増設する保育園の質を上げてください」
母親からの「保育園に入れなかった人に対して、今後どう対応してくれるんですか」という質問に対して、職員は「個々の保護者の方には、相談に乗って、状況を見ながらなるべく保育園に入っていただけるよう対応している」などと回答したが、母親たちは不満げだった。
ある母親は「お母さんは家にいろ、と言っているようなものじゃないですか」とヒートアップ。室内の不穏な空気を感じ取ったのか、1人の子どもがぐずり始め、母親が「ごめんねー」となだめる場面もあった。
50分にわたる話し合いの後、母親らに話を聞いた。
10カ月の息子を抱いて話し合いに臨んだ森田さん(41)は、今も保育園が決まらないままだという。「育休は子どもが1歳半になる今年10月までなんとか伸ばせるが、それまでに保育園に入れる保証はない。受けたいときに受けられない行政サービスに意味があるのか」。
1歳の息子を「運良く認可保育園に入れられた」と話す三浦さん(32)も、不安を抱えている。「第13希望まで出して、11番目の園に入れた。認可といってもマンションの1室を利用した民間委託の新設保育園で、1歳児が27人もいる。園庭があるようなかなり広い施設でも、1歳児は10人から20人が普通なのに、ありえない数です。0~2歳は子どもの成長に一番大切な時期なのに、私が求めるレベルの保育に全く達していない。会社に復帰せず、自分で子どもの世話をしようかとさえ思っている」。
練馬保育問題協議会副会長の山口真史さんは「区は『今あるものでしのげるだけしのぐ』という考えで、新しい受け皿を作ろうという気持ちは全くない。毎年話し合いの場を設けているが、『この時期だけやりすごそう』という姿勢は変わらない」と語った。
練馬区保育課の課長は弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「保育園の1次選考は終わってしまったが、2次選考申し込みの期限はちょうど今日までで、3月中旬に結果が出る。それ以降も、キャンセルが出るなど数字は動くので、保育園に入りたいと思っている人にはギリギリまで対応していきたい」と話した。
(弁護士ドットコムニュース)