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「ビクターロック祭り ~2016~」がオーディエンスに与えてくれた“楽しさ”

2016年02月26日 14:51  リアルサウンド

リアルサウンド

サカナクション/Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

 2016年2月14日(日)、ビクターエンタテインメント主催&企画制作のフェス、「ビクターロック祭り ~2016~」が、幕張メッセ・ホール9~11にて開催された。


 2014年、2015年に続き、今年で3回目。1回目と2回目は1ステージだったが、今年は「BARK STAGE」と「ROAR STAGE」の大小2ステージになり、それぞれ35分と20分の持ち時間で交互にステージが進んでいく。「BARK STAGE」にはTHE BAWDIES、サンボマスター、THE BACK HORN、Dragon Ash、レキシ、くるり、サカナクションの7組が出演。「ROAR STAGE」には、優勝するとこのフェスに出演できるオーディション『ワン!チャン!』を勝ち上がったヤバイTシャツ屋さん(グランプリ)とkiki(準グランプリ)、そしてヒステリックパニック、Gacharic Spin、Awesome City Club、藤原さくら、go!go!vanillas、DJやついいちろう、SAKANAMON、DJダイノジの9組が出演──するはずが、ヒステリックパニックはヴォーカルのともがインフルエンザに感染、残念ながらキャンセルになった。


 なお、当日の関東地方は昼頃まですごい荒天で、すぐ止まる京葉線はもちろんのこと、めったに止まらない東西線まで一時止まったりして、交通が大混乱。ヒステリックパニックのキャンセルのため、11時、BARK STAGEのトップのTHE BAWDIESからイベントがスタートする予定だったが、急遽開演を30分後ろ倒しにすることがアナウンスされた。と、スタート時こそちょっとバタついたが、2つのステージがスムーズに交互に進んでいき、終了時にはほぼ予定通りのタイムテーブルに戻っていた。


 全体的に、飲み食いや休憩なども含めて楽しむというよりも、「観られるものは全部観たい」みたいな、ライブに貪欲な参加者が多い空気。Gacharic Spinの途中でROAR STAGEに人が収まりきらなくなり、外からも見えるように開放された客席エリア後方の黒幕は、終演時まで閉まることはなく、そのまま飲食・休憩スペースまでフロアがつながっているような形になっていた。PA卓のところでステージを観ていて、ふとふり返ると「うわあ、あんな後ろまで踊ってる」と驚く、という体験を何度もしました、私。


 それぞれのアクトについては、このイベントの公式サイトにライブレポートがアップされているので、そちらをご参照ください。って、なんでよそのサイトの閲覧をうながしているのかというと、自分もそこで書いているからです。


 というわけで、以下は、イベント全体としての総評のようなことを書きます。


 1アクトの持ち時間が短くて2ステージ交互に演奏していくシステムであり、しかも2つのステージが近くて移動に時間がかからないので、(渋滞時刻を避ければ)いっぱい観れてお得であること。くるりやDragon Ashといった重鎮から、昨年デビューのAwesome City Clubや藤原さくらまで、幅広く観られること。DJやついいちろうやDJダイノジ(ビクター所属ではないのに去年・今年と出演)なども観られて、バラエティに富んでいること。などなど、今年の『ビクターロック祭り』は、よりいっそう濃く、かつ手軽に、楽しさをオーディエンスに与えてくれるイベントになった。


 また、『ワン! チャン!』優勝バンドの時の盛況ぶりに顕著だったが、耳が早くて能動的な参加者が多い印象だった。すでに全国区に知られつつあるヤバイTシャツ屋さんが満員になったのはわかるが、準優勝のkikiのステージにも、かなりの人が集まっていた。そんな客層なのだから、Gacharic SpinもAwesome City Clubも藤原さくらも、go!go!vannilasもSAKANAMONも、人がはみ出っぱなしの大盛況。DJやついいちろうとDJダイノジの人気は言うまでもなし。つまり、小さなステージをもうひとつ増やして若手をフックアップしたい、という目的にかなったオーディエンスが来場していた、ということだ。○○を目当てに来て、それが終わったら帰る、というのではなく、ちゃんとフェスそのものを楽しむ人たち、いろんなものを積極的に聴きたいというロックファンたちのイベントになっていた。


 最近、デビュー以来ほぼ100%ステージで演奏してきた「そのぬくもりに用がある」をあえて外す、という攻撃的なモードでツアーもフェスも行っているサンボマスターは、この『ビクターロック祭り』でもそれを貫きつつ、6曲中4曲をビクター移籍後の曲からセレクトしてセットリストを組んだ。


 Dragon Ashは、「For divers area」で始まり「AMBITIOUS」につなぎ、KenKenがフィーチャーされる「The Live」から最新アルバムの「Neverland」を経て、「百合の咲く場所で」「Fantasista」の2連発でシメるフェス必勝パターンで、場を制圧した。


 2004年リリースのアルバム『アンテナ』の再現ライブツアー『NOW AND THEN Vol.2』を5月に控えているくるりは、「グッドモーニング」「Morning Paper」「Race」「ロックンロール」「Hometown」と『アンテナ』の頭から5曲目までをノンストップで披露、さらに後半では「すけべな女の子」を経て、NHK「みんなのうた」でオンエア中の「かんがえがあるカンガルー」と新曲「どれくらいの」をライブで初披露──というスペシャルな内容だった。


 そして、この日BARK STAGEのトリを務めたサカナクションのステージで、山口一郎は開口一番「帰ってきました! サカナクションです」と言った。一回目の一昨年もトリをやったが、昨年はベース草刈愛美の出産によるライブ活動休止期間と当たったので出られなかった、だからそう言ったのだろうが、「ああ、何かもう、出演者側にとってもそういう場になっているんだなあ」と、改めて思った。


 ひとつだけ不満。
 去年はオープニングの時、シークレット・ゲストで長山洋子が登場してびっくりしたが、今年はそういうカマシ、特にありませんでした。来年あたり、小泉今日子、出てくれないかな。彼女なら、ひょっとしたら出てくれるかも、という気がしません?(文=兵庫慎司)