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「臨月の妻と離婚して、親権をとりたい」夫の願いは叶うのか? 【小町の法律相談】

2016年02月26日 11:42  弁護士ドットコム

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出産間近の妻(27)と「離婚か続投か」との質問が、YomiuriOnlineの「発言小町」に夫である男性(27)から寄せられました。妻は妊娠36週目。臨月での離婚相談とは、穏やかではありません。


トピ主さんが離婚を考えている理由は「性格の不一致」だといいます。「妻は気分の浮き沈みが激しく、他人との付き合いを極度に嫌がる性格です。2週間に1度の会社の飲み会の時でも、20回以上の着信音とメールがきます」。さらには「自分の意見が通らないと、自傷行為や僕に対して暴力をふるう日々です」という状況です。


上の子ども(1歳2ヶ月)への悪影響も考え、親権をとって離婚することを考えています。ただし「妻の性格が治るのであれば離婚はしたくない」ともいいます。


男女トラブルや離婚問題を数多く扱ってきた原口 未緒弁護士に、お話をききました。


(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「妻との仲」はこちらhttp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2016/0129/749107.htm?g=15)


A.  「母性優先の原則」により親権をとるのは難しい


暴力がどの程度の内容かはわかりませんが、旦那さんにとって大変な状況であることは確かのようですね。ただ、それでも「妻の性格が治るのであれば離婚はしたくない」とも仰っていますので、まずは「離婚しない」ための方法をお答えしていきましょう。


夫が他人と付き合うことを妻が極度に嫌がるのは、もしかしたら、子育てと妊娠とで、家庭に一人取り残されたような孤立した感じをお感じになっていらっしゃるからかもしれません。だからこそ、旦那さんが家に居てくれない、外に出てしまうことに対して、嫌がらせのようなことをしてしまうのではないかとも考えられます。


そこで、まずは、ご自宅に帰った際に、奥様をねぎらう言葉をたくさんかけてあげてください。


奥様は、普段、ご自宅にお子様と2人きりの状態ですので、お仕事をされている旦那さんと異なり、他の人から評価される、褒められる、ねぎらわれる、ということがありません。一生懸命、子育てや家事などをやっても、誰からも感謝をされた感じがされていないのなら、どんどん疲労感が募るばかりですよね。「自分は何のためにやっているのだろう…」と。


ですから、奥様が居てくださるからこそ、家庭を守っていてくださるからこそ、旦那さんが外で働くことができ、お子さんも健やかに育っていることに対して、ねぎらいや感謝の気持ちを伝えてみてください。女性が一番喜ぶのは、物よりも言葉のプレゼントではないかと思いますよ。


では、逆に「離婚する」と決めた場合の親権について、お答えしていきます。


奥さんも離婚に同意したとして、問題となってくるのが、親権です。夫の気持ちとしては、「妻が原因の離婚なのだから、親権は自分がもらえる」と思っているかもしれません。


しかし、子どもの親権を決める際に重視されるのは、「子にとっての利益(幸せ)」です。トピ主さんの家庭は1歳、そして間もなく生まれる0歳の2人がいます。乳幼児には「母性優先の原則」が適用されます。


「母性優先」とは、母親を親権者として養育させるのが、子の利益になるという裁判所の考え方で、たとえ妻の浮気が原因での離婚であっても、親権者は妻となるのが普通です。これは、乳幼児にとっては、お母さんのお父や愛情が必要不可欠だからなんですね。


現在、奥様の育児に問題がないようであれば、残念ながら、トピ主さんが親権をとるのは難しいとの覚悟が必要です。




【取材協力弁護士】
原口 未緒(はらぐち・みお)弁護士
東京護士会所属。ココロもケアするカウンセリング離婚弁護士。コーチング・カウンセリング・セラピーなどをもとに、なるべく調停・裁判をしないで、スピード・円満離婚を実現する、『次へ進むための離婚』を提唱しています。

事務所名:弁護士法人 未緒法律事務所
事務所URL:http://mio-law.com