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ホンダF1中村聡インタビュー「2年目とはいえ、走り出すまでは緊張した」

2016年02月26日 11:41  AUTOSPORT web

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2016年バルセロナテスト1 フェルナンド・アロンソ(マクラーレン・ホンダMP4-31)
2016年、最初のバルセロナ合同テストがスタート。テスト後半はトラブルにより走行する事ができなかったが、昨年と比べポジティブなスタートを切ることができたマクラーレン・ホンダ。今回、現場エンジニアたちを統率しているホンダの中村聡チーフエンジニアに、今後のプランや今季の目標についてインタビューを行った。

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――新車が完成したのは、いつですか。
中村聡チーフエンジニア「新車は2週間ぐらい前にファクトリーで組み上げて、ファイヤーアップ(点火)も済ませていました。そのあと、まだ直したい部分がパワーユニット側だけでなく車体側でも見つかったので、いったんパワーユニットを切り離しました。やっぱり、少しでも改善できる点があれば、時間が許す限りアップデートしていきたいですからね」

――今年は2年目ですが、どんな心境でシーズンを迎えましたか。
中村「2年目とはいえ、昨年からパワーユニットの仕様をいろいろと変えてきたので、走り出すまでは緊張しました」

――初日からトラブルに見舞われました。
中村「初日の午前中に出たトラブルは、吸気系周辺のある部分に抱えていたメカニカルな問題があって、すでに対策は打っているのですが、その部品が最初のテストまでに間に合わなかったので、問題があることを把握しつつ、テストを始めるしかなかった。対策した部品は、2回目のテストに届く予定です。とはいえ、最初のテストで走らせているこのパワーユニットが、今年の仕様です。今回トラブルが出たように信頼性の部分にまだ改善しなければならない余地があり、パフォーマンス的にもやり残したところがあるので、2回目のテストでそれらをアップデートしたパッケージを走らせて最終確認をして、開幕戦に臨むというのが現時点でのプランです」


――トラブルが出た後、またすぐに走り出しました。
中村「トラブルが出た場合は、パフォーマンスを犠牲にしてでも、ほかのテスト項目を優先して、走らせることに決めていたので、想定通りトラブルが出たときは、使い方を変えて再びマシンを送り出しました。また昨年、いろいろとトラブルを経験した分、そのような状況になってもクルマを走らせるという観点では成長したのかなと思っている。運用が当然、慣れてきたので、何か不具合が起きても、メカニックたちはどこをどうしなければならないということをかなり理解していいます」

――初日にステアリングを握ったバトンの評価も高かったですね。
中村「テスト走行後のデブリーフィングでも、ジェンソンから「デブロイがかなり改善された」という言葉をもらいました。今年のパワーユニットを製作するために必死に頑張ってくれたHRDさくらの開発スタッフ、ミルトンキーンズのメンバーたちも、それを聞いて思わずニコーっと喜んでいたので、良かった。でも正直、まだいまパワーユニットはわれわれが目標としているレベルには達していない。もう少し信頼性を上げつつ、パフォーマンスも改善したい」

――デプロイが改善された理由はなんですか。
中村「デプロイが改善された大きな理由は、ターボが弱かったので、その部分を大幅に変えました。MGU-Hに関しては信頼性に関わる部分は見直しましたが、特にモーター自体はスペック的にほぼ目標に達しているものなので、あまりいじっていません」

――ライバルに関しては?
中村「このテストの最大の目的は、今年仕様のパワーユニットの機能確認と、今年やりたいと思っている制御系の確認をすること。まだほかのチームのパワーユニットをどうこう言える状況ではない。まずは自分たちの目標としているレベルに持っていくこと。必ずできると思っています。ただ、ほかのパワーユニットの状況もなんとなくウワサは聞いていて、われわれが改善する分、ライバルたちも伸びてくるので、当然厳しい戦いは続くことは覚悟しています。(昨年、最下位だった)マノーもメルセデスを積んでくるので怖い存在。したがって、底上げされた全体的に接近した戦いになると思いますが、なんとかその上には行きたい。とはいえ、いま僕たちがどの位置にいるのかはいまは気にしていないし、正直わかりません」


――バトンは今年表彰台に1回も上がれなかったら、ちょっとがっかりと言っていましたが。
「まだ、そんなに贅沢は言えない。目標は確実に予選でQ3を突破すること。そのうえでわれわれの車体とパワーユニットが得意とするサーキットとなったときには、そこ(表彰台)にターゲットを絞って戦いとは思いますが、まだまだ常に表彰台を目指すというレベルには正直達してはいないと思っています。目標達成までには、苦戦しながら、もう少し時間がかかると思っています。それは、このような高度なパワーユニットの開発においては技術レベルを簡単には上げられないという理由だけでなく、たとえレベルを上げることができても4000kmから5000kmという厳しい信頼性を確保することが同時に行えないという理由もあります」

――1回目のテストで搭載しているパワーユニットがマーク1で、2回目のテストにマーク2を載せ、開幕戦で使用するのがマーク3という話がありますが。
中村「基本的には開幕戦で使用するのがスペック1となるので、いま載せているパワーユニットは開発スペック。だから、開幕までまだ細かいところをいろいろと変えますが、それに対していちいちスペックを変えてよぶことはありません」

――予選方式が変わりそうですが、そうなった場合も、目標はQ3ということでいいですか。
中村「はい、安定してQ3進出という目標に変わりはありません。そこを狙わなければ勝負になりませんから」