2016年02月26日 11:02 弁護士ドットコム
会社帰りや休日に書店へ行き、雑誌を立ち読みすることが好きだというアキコさん(27)は、最近の書店についてこう不満を漏らす。
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「このごろ、本屋やコンビニに行っても、雑誌にテープが貼られていたり、ヒモや輪ゴムが巻かれていたりして、中身を見られないようになっていることが多いんです」。立ち読み防止のためなのだろうが、「買う前に中身を見られないのは残念」とアキコさんは語る。
「ただ時々、テープが剥がされていたり、一度剥がしてまた貼り付けたりしたような形跡がある雑誌も見かけます。そうしたい気持ちも分かりますが、テープやヒモをはずして立ち読みすることって、法的に問題ないんでしょうか?」
アキコさんはこう疑問を口にする。立ち読み防止などのために雑誌に貼られたテープやヒモを外して中身を見ることは、違法なのだろうか。何かの犯罪にあたるのだろうか。中西祐一弁護士に聞いた。
「窃盗罪は、『他人の財物』を盗んだ場合に成立する犯罪です。この『財物』とは、一般的には、何らかの物質でなければならないとされています。雑誌の『盗み見』は、雑誌に記載されている『情報』を盗む行為ですが、『情報』は『物質』ではないため、窃盗罪は成立しません。
もっとも、テープを外す際に雑誌の表紙が破れたり、テープを貼り直すことができない状態にしてしまったりした場合は、雑誌やテープを使い物にならなくした、との点で、器物損壊罪が成立する可能性があります」
では、袋とじを破いた場合はどうなるのだろうか。
「雑誌本体を傷つけたということになり、器物損壊罪が成立すると考えられます。『いずれは誰かが破る物を、今、自分が破いただけだ』と反論したくなるかもしれませんが、雑誌の袋とじは『購入者が自分で破る』という点に価値があると思われますので、購入者以外の人が袋とじを破る行為は、雑誌の価値を低下させることになると考えられます」
破いてしまった場合、代金の支払いに応じないといけないのか。
「表紙や袋とじを破ったことが店員に見とがめられた場合、雑誌の商品としての価値を失わせたということになり、損害賠償金として、雑誌の代金と同じ金額を支払う必要があると考えられます。
一方、テープをはがしたり、ヒモを外したりして、雑誌本体を傷つけていない場合は、雑誌の価値自体を失わせる行為は行っていないため、雑誌の買取を行う必要はないと考えられます」
中西弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
中西 祐一(なかにし・ゆういち)弁護士
金沢弁護士会所属。地元の方々の身近なトラブルの解決を目指し、民事・刑事を問わず幅広い分野の案件を取り扱っているが、その中でも、刑事事件には特に力を入れており、裁判員裁判や冤罪事件の国家賠償請求事件などにも積極的に関わっている。
事務所名:中西祐一法律事務所
事務所URL:http://www.nakanishi-law.net