ドライバーがレース中は攻め続けることができるよう、F1は燃料搭載量の上限撤廃を検討している。これによって、批判の多いリフト&コースト(アクセルをオフにして惰性で走る)のテクニック使用も避けられる。
現在のレギュレーションでは各マシンに対し1時間あたり最高100kgまでの燃料流量制限があるが、レース全体を通して100kg以上の燃料を使用することはできない。この規定によって、レース中ドライバーはしばしば燃料を節約する必要にせまられ、結果としてリフト&コーストのようなテクニックを使用することになる。
燃料流量規定は現状通りになるが、燃料搭載量の上限を撤廃することでドライバーはレースをとおして攻めた走りをすることが可能となり、理論上はより多くのアタックができるようになる。これは23日にジェノバで行われたストラテジー・グループとF1コミッションのミーティングで議論されたトピックの一部で、2017年の新規定決定に向けて検討が進められている。
マクラーレンのレーシング・ディレクターを務めるエリック・ブーリエはこの件について「環境への配慮は続けていく。つまり燃料流量規定は維持するが、燃料搭載量の上限は廃止する方向だ。マシンのドラッグやパワーはそれぞれ異なるので、より多くの燃料が使えればドライバーは節約する必要がなくなり、全開で走行できる。オーバーテイクの問題を改善するうえでも鍵となるが、まだ検討中の段階だ」と語る。
マシンのパフォーマンス向上に関しては「マクラーレン案:1周あたり3秒短縮」に票が集まり、2017年での採用が決定。レッドブルは積極的な「1周あたり6秒短縮」、メルセデスは「現状維持」とそれぞれ案を出しており、マクラーレンは1周あたり3秒短縮という「折衷案」を提案していた。ストラテジー・グループの投票では、レッドブルとメルセデスのみが反対票を投じ16対2という結果に。可決に66%以上の賛成が必要となるF1コミッションの投票では、26の投票者から20の票が集まった。
採用された案の詳細に関して、ブーリエは以下のように述べている。
「我々はディフューザーのパワーを少し下げ、FIA側がウイングやビームシステムなどに取り組んだ。最終的にはシミュレーション上で、コースにもよるが3~5秒短縮できることが分かった」
速くはなるが、問題はオーバーテイクの問題が改善されるかどうかだ。
ブーリエは「ウイングよりも床面でより多くのダウンフォースを稼げるようになるので、私としては後続車への空力的影響は現在よりも少なくなると考えている。今はすべてがフロントウイングにかかっているため、誰かの後ろについた途端に全ダウンフォースを失ってしまう。ドライバーにブレーキングを遅らせる自信があれば、勇敢に戦える。ブレーキング勝負で追い越しをかけられるようになる」と付け加えた。