この国では、小学生から中学生、そして高校生といったように、年齢を経るごとに学校教育の場を何度か移動しつつ、社会に出るまでに基礎的な知識を身につけていくのが、一般的な子供の成長過程だ。
一方で、様々な理由で学校に行きたくないと考える子供も少なくない。そういった子供たちの中には、普通の学校ではなく、フリースクールで学ぶ選択肢を選ぶ子もいる。2月20日の「報道特集」(TBS系)で、フリースクール運営の実態が紹介された。(文:松本ミゾレ)
時間割もなし、先生もなし、生徒が自主的に過ごし方を決めるサドベリースクール
鳥取県智頭町。ここにちょっと変わった学びの現場がある。新田サドベリースクールは、山間に建つ牧歌的なログハウスだ。昨年、全日制民間スクールとして開校したばかりだという。 このスクールには、時間割も授業も、そして先生もいない。1日どうやって過ごすのか、それは生徒自身が決めるのだ。
1968年にアメリカで発祥したサドベリースクール。その理念は、子供の主体性を尊重し、自主的な活動で思考し、判断する力を身につけさせるというもの。教育機関による通り一遍の勉強方法とは、子供に対しての考え方が土台から異なっている。
こうした、既存の学校以外の学びの場を「オルタナティブスクール(代替学校)」と呼ぶ。 従来型の教育に疑問を感じた親世代からの大きな期待が、このオルタナティブスクールは寄せられている。
オルタナティブスクールは補助金なし、平均会費月3万3000円
ただ、海外ではそれなりに浸透しているオルタナティブスクールではあるが、日本では公的に認められた教育機関ではないため、まだまだマイナーではある。しかも、こうしたスクールは学校制度の外に位置しているため、現状、公的支援を受けられないという問題がある。
一方で、肝心の子供たちはと言うと、90年代以降は学校に行くことを拒む、いわゆる不登校児が急増している。現在では、毎年12万人前後の子供が不登校状態となっていると番組は説明している。
オルタナティブスクールが、そんな彼らを受け入れるための施設として機能する余地はある。だけど公的な支援の範囲外という理由で、どうしてもコストが高くなり、通わせようにも親の金銭的な負担になってしまっているという現実があるのだ。
オルタナティブスクールは、具体的にどの程度のコストがかかるのか。特集では、入会金が平均で5万3000円、月の会費が3万3000円と紹介されている。率直に言うと、高い。
与野党の超党派議員連盟が発足、多様な学びの法制化を検討中
しかし、学びの多様性をいつまでも阻害していたって、良いことは一つもない。折りしも昨年、文部科学省は、はじめてオルタナティブスクールの実態調査を行った。これによると、現在全国のオルタナティブスクールに通っている子供は、およそ4200人だという。そして、施設のスタッフのおよそ3割が、無給で働いていると報じられた。これはちょっと衝撃的だ。
親の負担もさることながら、運営している側もギリギリの状態なのだ。このため、オルタナティブスクールの関係者たちは、多様な学びの法制化に向けて動き出している。
実際、この働きかけによって、一昨年には与野党含む超党派の議員連盟は既に発足している。現在、オルタナティブスクールなど、多様な学びについて、法制化を検討しているということだ。近い将来、日本の子供たちの教育について、今よりももっと経済的負担が少ない状態で、幅広く選択できる日が来るはずだ。
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