2016年02月24日 21:01 リアルサウンド
脚本家・遊川和彦の初監督作『恋妻家宮本』の撮影が開始され、主演を務める阿部寛、天海祐希、遊川監督からコメントが到着した。
参考:『偽装の夫婦』脚本家・遊川和彦が監督デビュー 阿部寛と天海祐希が初の夫婦役を務める
『恋妻家宮本』は、『家政婦のミタ』『偽装の夫婦』などの脚本を手がける遊川和彦が、重松清の『ファミレス』を原作に、初めてメガホンを取ったヒューマンドラマ。学生時代に合コンで知り合い、卒業と同時にできちゃった結婚をした宮本陽平と美代子は、25年間、ごく平穏な結婚生活を送っていた。息子夫婦が転勤で福島へ旅立った日、25年ぶりに2人きりで生活をすることになった美代子は飲みつぶれてしまう。その夜、陽平は妻の記入欄がすべて書き込まれ、捺印もされた離婚届を発見する……。
本作は、1月17日に千葉県のロケセットでクランクインした。原作タイトルでもある『ファミレス』を完全に再現したセットでは、阿部と天海が演じる宮本夫妻が、ファミレスに訪れる映画の冒頭シーンや、ファミレスの多様なメニューに迷う優柔不断な夫・陽平の姿を、無表情で見つめる妻・美代子のシーンなどが撮影された。
撮影は3月上旬まで行われる予定で、公開は2017年1月を予定している。
■阿部寛 コメント
遊川監督は脚本を書いていらっしゃることもあり、誰よりもその役と台詞をわかっている方なので、僕が演じたらやりすぎちゃうところも、監督の解釈で的確に演出をしてくださるので、この現場で迷うことは何もないんですよね。昨今の映画やドラマでは役者の演技は大きいところしか演出されないことが多いのですが、遊川監督は細部まできっちり100%演技の面倒をみてくれるので、非常に新鮮だし、楽しんでやらせて貰ってます。
この作品は生きている中で一番多い「なんでもないこと」を表現していると思います。何でもないことのなかに、面白さや切なさがあるんじゃないか、と今回読んでて思いました。また、この脚本のテーマでもある「大切なことは正しいことよりもやさしいこと」というのは目の覚めるような思いがして、正しいことをいうのは簡単だけど、やさしいことというのは難しいと思ったんです。そこは一つのこの脚本の宝物として自分の中に生涯持っていかなきゃと思いました。
■天海祐希 コメント
ファミレスってなんだかわくわくしますよね、メニューも沢山あって。待ち時間の間も阿部さんと二人で何が美味しそうだとか、今の季節はイチゴだね、とかいいながら撮影を楽しんでます。
阿部さんと遊川さんを見ていると、すごく理想的な関係だなと思います。阿部さんは器が大きくて、純粋かつ素直に監督の指示を聞いて、自分なりに消化してお芝居に活かされる方ですし、遊川監督はこうやって欲しいっていうのを脚本家ならではの言葉で的確に伝えるので。遊川さん、監督向いてるかもな~なんて思ったりして。
この撮影で思ったのは、今回阿部さん演じる陽平に美代子が酔っぱらってのしかかる、というシーンがあるのですが、リハのときから全力で乗っていっても阿部さんがいい感じに腹筋で止めているんですよ(笑)。遠慮せずいっても腹筋で私の体重を支えてくださるので、頼りがいがあって全力でどーんと行けました。安心感がやっぱり違うんですよね(笑)。
この作品は日常何気なくいられることとか、なんでもないと思えることがどれだけ幸せで、何が大切なのかが、じんわりと沁みるように心に広がっていく映画なんじゃないかと思います。
いい大人だからこそできないこと、本当は伝えなければいけないのに伝えられない大人たちの背中を押してくれるような映画になったらいいなと。是非ご夫婦で観に来てほしいです。
■遊川和彦 コメント
ファミレスって人生と一緒ですよね。メニューから選んでも選びきれなくて、選んでも結局自信がないというか。でも前に進まなきゃいけないというのもあって。なのでこの作品は「ファミレス」のシーンで始めなきゃという思いがありました。
阿部さんは不思議な人で、すべてを素直に受け止めて、少年のように一回考えて咀嚼して演じる方です。すごくやりやすいです(笑)。失礼ですが、こんなに「一生懸命」という言葉が似合う人はいないです。この年になるとふつう一生懸命やる人はいないですからね(笑)。そこは人間的にも見習いたいです。
天海さんは新しい刺激を与えるほどどんどん新しいものが出てくる人で、新しい刺激に対して今まで見たことがない芝居をどんどん出せる人だと思います。
5~6年前だったら、この二人の夫婦役なんてリアリティがないんじゃないかと思いましたけれども、二人とも年齢を重ねて、そういう二人が夫婦として、一生懸命頑張って、でも少し疲れたりして、順風満帆ではなくいろいろな苦労をしてきて、これからどうなるんだろうという不安なんかも隠しもせずやっていこうという姿にリアリティが出てきて「あ、この夫婦なら共感できる」と思えるようになりました。
愛妻家ではなく恋妻家というタイトルにしたのは、愛妻家っていうとなんか「優しくしてやろう」「大事にしてやろう」みたいな上から目線になるじゃないですか、男って。でもそうじゃなくて、妻のふとした仕草が好きになったり、可愛い瞬間があって、そういう瞬間瞬間、恋する一日一日を積み重ねて夫婦って生き延びるんだと思うんです。年をとってもそういう恋するときめきみたいなものをいつまでも持てるんだという確信が持てる話になればいいと思ってます。ここに描かれているのは理想の夫婦ではないのですが、リアリティがあって、何が正しいかを決めるのではなく、優しいことをすれば、正しくなくても伝わるんじゃないか、毎日いろいろありますけども。と頑張っている夫婦の話です。
(リアルサウンド編集部)