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<桜宮高校体罰事件>「二度と息子のような犠牲者は出てほしくない」遺族が心情語る

2016年02月24日 17:31  弁護士ドットコム

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大阪市立桜宮高校のバスケットボール部のキャプテンだった男子生徒が部活の顧問から体罰を受けて自殺した事件をめぐり、生徒の遺族が大阪市を相手取って計約1億7400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2月24日、東京地裁であった。岩井伸晃裁判長は、市に対して計約7500万円を支払うよう命じる判決を下した。大阪市は弁護士ドットコムニュースの取材に、控訴をおこなわない方針を明らかにした。


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この日の判決後、現在は関東地方で暮らしている遺族と代理人の弁護士が東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。生徒の両親は「正しい判決を下してくれた思う。主要な部分については納得している」としたうえで、「二度と息子のような犠牲者は出てほしくない」「生徒をあずかる立場の先生たちは真摯に受け止めてほしい」と訴えた。



●体罰と自殺に因果関係が認められた


遺族側の代理人をつとめる関聡介弁護士などによると、亡くなった男子生徒は2012年9月、大阪市立桜宮高校のバスケットボール部にキャプテンに就任した直後から、当時の顧問に「キャプテンをやめろ」などといった暴言を受けはじめた。その後も、平手打ちなどの体罰や圧迫的な言葉を受け続けて、同年12月に自殺した。



元顧問は懲戒免職処分を受けたあと、2013年7月に傷害と暴行の容疑で在宅起訴された。同年9月には、懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受けて確定。遺族は2013年12月、大阪市を相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こした。



関弁護士は会見で「元顧問の暴言と暴力によって、生徒が自殺に追い込まれたという因果関係が認められた」「学校現場における暴力・暴言について、警鐘を鳴らしたという点で意義がある判決だった」と話した。



●兄「弟は帰ってこない」


亡くなった生徒の父は会見で、「刑事裁判も含めて、約3年弱の間、天国にいる息子も一緒に裁判をたたかってくれた。息子に『ありがとう』と感謝を捧げたい」と話した。母は「二度と息子のような犠牲者を出したくない。息子が『ありがとう』と思っているかわからないけど、自分なりにはベストをつくした」と目に涙を浮かべながら語った。



兄は「判決で、因果関係が認められて、賠償額が決まって、すべてが終わったとしても、弟は帰ってこない。『生きていれば、弟も二十歳になって、お酒が飲めたり、将来結婚してお互いの子どもを見せあうこともあったんだろうな』と思いながら、これからを過ごして行くことになる。たった一人の弟だった・・・」と言葉をつまらせた。



●大阪市「控訴は行わない」


大阪市教育委員会事務局は判決を受けて、吉村洋文市長の名前で次のようなコメントを発表した。



「本市にとって厳しい判決であるが、判決の内容は真摯に受け止めなければならないと考えている。本事案は一人の尊い命が失われた重大な事案であって、本市として控訴してまで争うべきではないと考えており、控訴は行わない。桜宮高等学校の事案については、本市として極めて厳しく受け止めており、体罰・暴力行為を許さない開かれた学校づくりに向け、様々な取組を進めているところであり、このような痛ましい事案を二度と起こさないよう引き続き取組を徹底してまいる」



(弁護士ドットコムニュース)