日本は高齢化社会に突入している。必然、老人介護施設も増え続けているし、介護を生業とする若い世代も増えている。
しかし一方で、本来であれば老人介護を行うべきではない環境の施設も増えているし、高齢者を介護するための素養のない人間が、介護業界に紛れ込んでいるという現実がある。(文:松本ミゾレ)
キャパオーバー状態のひどい老人ホームは少なくない!
このところニュースでも取り上げられているのが、川崎市の老人ホームで、入居者の転落死事件だ。元職員の男が逮捕されたが、こういった事例がとりわけ衝撃的なだけで、僕が知る限り、介護業界には目を覆いたくなるような凄惨な実態は少なくない。
以前、親戚の入居している老人ホームに出向いた際には、寒い時期なのに毛布一つ掛けられていない高齢者を見て唖然とした経験がある。憤慨して職員に詰め寄ったが、彼らは絶えず様々な業務に追われており、冬場というのに全身汗だくであった。
環境そのものが介護に即してないのに、無理に高齢者を受け入れ、キャパシティを大幅にオーバーしている施設が実際にあることを目の当たりにし、大変驚愕した。
2月21日の「真相報道 バンキシャ!」(日本テレビ系)でも、「老人ホーム プロの見分け方」という特集を放送していた。
取材班は、有料老人ホーム入居支援センターの上岡榮信氏と共に、東京都足立区の、とある施設に出向いた。まず上岡氏が見るべきポイントとして真っ先に挙げたのが、玄関。そこにはおひなさまが飾られていた。
食事は人生の楽しみ! 食器に陶磁器が使われているかもチェック!
もうじきひな祭りの季節。こういった共有の空間に、リラックスできて癒しにもなる。季節の飾り物をするために一手間をするができる、というのが良いホームの特徴なのだという。確かに、業務に忙殺されているホームでは、こういった心配りは難しいはず。
さらに今度は、食堂に移った上岡氏が、注目すべきポイントを紹介する。食器棚に積まれている磁器、陶器。これも優良施設の特徴だという。一見割れやすく、費用も嵩むだけのように思えるが、その理由は、割れてしまうリスクを承知の上で、綺麗な柄の入った器で食事をしてもらおうという心遣い。これが何より優先されているからというのだ。
食事は生きる上でのささやかながら絶対に欠かすことのできない楽しみ。その楽しみを損なうことのないように、気を遣っている証なのだという。
入居者の表情、職員の挨拶もしっかり確認
さて、老人ホームの入居者が1日の大半を過ごすのが個室だ。この個室にも、当然優良ホームを見抜くヒントが隠されている。ある入居者の部屋には、誕生日にもらったという、職員からの色紙や、手作りのプレゼントが大切に飾られている。施設側が、入居者のことを大切に思っているなら、こういう手間も惜しむことはない。
また、清潔さをチェックするには、観葉植物の葉を触るのも効果的だと上岡氏は言う。隅々なで掃除が行き届いているホームなら、葉っぱの表面にも埃が積もることはない。実際このホームでは、観葉植物の管理も徹底されていた。
もちろん、入居者の表情、職員のあいさつの姿勢なども大きなチェック対象になる。上岡氏は、複数の施設を見学し、気に入った施設には何度も足を運ぶことが重要だと説明していた。
これらの優良ホームの特徴をしっかりと覚えておけば、いざ自分の親が老人ホームに入居することになったという時に、確実に役立つ知識となるに違いない。
あわせてよみたい:介護サービスの成長性は確実。「現場」以外にも色々な可能性がある――日本介護福祉グループ代表・藤田英明氏に聞く