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「ペット禁止」のマンション、飼育がバレたら出て行かないといけない?

2016年02月24日 11:21  弁護士ドットコム

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ペット禁止を掲げている賃貸住宅はたくさんありますが、金魚やハムスターも含めて、すべてのペットを飼ってはいけないのでしょうか。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、質問が寄せられています。


「賃貸住宅の入居要綱には『犬、猫その他動物(迷惑な鳴き声を出すもの及び他人に危害又は迷惑をかけるものをいう。)を飼育することにより、近隣住民又は近隣入居者に対し、安眠を妨害し、傷害し、又は生活衛生上迷惑を及ぼす行為。』とありますが、この一文だけでうさぎやハムスターなどの小動物を飼うことは駄目でしょうか?」


ペット禁止という条件を受け入れて入居した場合でも、小動物などであれば飼っても許されるのでしょうか。もし、ペットをこっそりかっていることばバレた場合、退去することになってしまうのでしょうか。賃貸住宅のペットをめぐる法律問題について、五十部紀英弁護士に解説していただきました。


●ペット飼育禁止の場合、飼育することは契約違反


最近では「ペットは家族の一員」として、ペットを家族のように愛する家庭が増えてきたように思います。弊事務所の職員も、ペットのチワワをまるでわが子であるかのように可愛がっています。では、「ペットは家族の一員」として当然に借りているマンション、アパートで飼うことができるのか考えてみましょう。


借りているマンションやアパートで、動物を飼うことができるかは、「賃貸借契約」によって決まります。多くのマンション、アパートは、契約書においてペットの飼育を禁止していますので、ペットを飼育することはできません。


マンションやアパートを探すときに、「ペット飼育可」、「ペットOK」等の記載がありますが、そのようなマンション、アパートですと、動物を飼っても良いという内容の賃貸借契約を交わすことになり、マンション、アパート内で動物を飼育することができるということになります。


ですので、小動物や観賞用の魚等でも、「ペット」に該当する限り、ペットの飼育を禁止しているマンション、アパートで飼育することは、契約違反ということになります。


●飼育したら、出て行かないといけない?


では、ペットの飼育を禁止するマンション、アパートでペットを飼ったことが発覚した場合、出ていかなければならないのでしょうか。


結論は必ずしも出ていく必要はないということになります。


賃貸借契約を解除するためには、貸主と借主の「信頼関係が破綻(はたん)」したと言える状況が必要です。


例えば、借主が賃料を何か月も払わなかった場合は、「信頼関係が破綻」したとして、賃貸借契約を解除することが認められます。


ペット禁止のマンション、アパートにおいてペットを飼ったとしても、契約内容には反するものの、信頼関係が破綻したとまでは言えないとして、賃貸借契約の解除を認めなかった裁判例があります。


このように、ペット禁止のマンション、アパートにおいてペットを飼ったとしても、必ずしも出ていく必要はないということになります。


小動物や観賞用の魚等であれば、賃貸人や他の住民に損害を与える可能性が低いため、飼育したとしても信頼関係が破綻したとまでは言えず、出ていかなければならないということにはならない可能性が高いと思われます。


●ペットOKのマンション、アパートでもゾウを飼うことはNG


では、ペットOKのマンション、アパートにおいて、どのような範囲のペットまで飼うことができるでしょうか。


例えば、住人が「自分はゾウをペットとして飼っている。『ペットOK』と書いてあったのだから、ゾウもペットとして飼っていいはずだ」と主張した場合はどうなるでしょう。


いくらペットOKの住宅だからといって、ゾウを飼われた場合は臭いや騒音など、隣の人にとってはたまったものではありません。


また、原状回復が困難になってしまう可能性もあり、大家さんにとっても大打撃を受けることになります。


そこで、このようなトラブルを防ぐために、契約書においてどのような動物まで飼ってもいいか決めたり、契約書とは別に、「ペット飼育に関する覚書」を作成したり、「ペット飼育規則」を定めたりすることが多くあります。


この中では、飼育して良いペットの種類、数、大きさを定めたり、糞の処理方法や予防接種の方法、クレームが出たときの手続等が定められます。


このような契約を交わすため、「ペットOK」のアパートやマンションにおいて、ゾウを飼うことはできないということになります。


●飼い方次第では多額の賠償をしなければならなくなる可能性も


最後に、ペットを飼うときの注意点について説明しましょう。


ペットを飼ってもいいとするマンション、アパートでも、前述の「ペット飼育に関する覚書」や「ペット飼育規則」等のルールを守る必要があります。


ルールを守らずにマンション、アパートの住人に損害を加えた場合、その住民に損害を賠償する義務が発生する場合があります。


また、飼っているペットが、マンション、アパートの他の住民に噛みつく等の危害を加え、その住民が引っ越してしまった場合、賃借人は賃貸人に対して、その住民が引っ越さなければ得られたはずの賃料相当額を賠償する責任があるとした裁判例も存在します。


ある有名人夫婦が高級マンションにおいて飼育していたペットに関する裁判例なので、目にしたことがある方も多いかと思います。


ペットOKのマンション、アパートにおいても、ペットの飼育は、他の住民の迷惑にならないよう十分注意して行う必要があるということになります。


●まとめ


「ペットは家族の一員」といっても、法律上、動物は「物」として扱われますので、色々と注意することが多くあります。


皆様もペット飼育のルール、マナーを守りながら、ペットを飼育していただく必要があるということになります。




【取材協力弁護士】
五十部 紀英(いそべ・としひで)弁護士
弁護士法人アドバンス代表弁護士。第一東京弁護士会、日本マンション学会、スポーツ法政策研究会などに所属。日本プロ野球選手会公認代理人。法人・個人を問わず、あらゆる方が抱えるリスク・トラブルに対し、常にクライアントの側に立って向き合うことをモットーにしている。
事務所名:弁護士法人アドバンス
事務所URL:http://advance-lpc.jp/