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水曜日のカンパネラ、インディーズのままお茶の間へ 『Mステ』初出演に期待できること

2016年02月22日 14:01  リアルサウンド

リアルサウンド

水曜日のカンパネラ『ジパング』

 『ヤフオク』のCMで知名度急上昇。話題騒然の音楽ユニット、水曜日のカンパネラ(※以下、水カン)が、2月26日の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に初登場し、人気曲「桃太郎」、「ラー」を披露する。


 水カンといえば、ひとりでステージに立つ紅一点のコムアイが注目されているが、実は3人組ユニットだ。役割分担は、主演/歌唱/作詞担当:コムアイ、作詞/作曲/編曲担当:ケンモチヒデフミ、それ以外 担当:Dir.F となっている。


 楽曲タイトルに「桃太郎」、「マリー・アントワネット」、「千利休」、「小野妹子」、「ドラキュラ」、「二階堂マリ」など、物語や歴史上の人物名が多く登場し、楽曲を手掛ける鬼才ケンモチヒデフミによるナンセンスかつ80年代『コロコロコミック』&『週刊少年ジャンプ』的センスによる歌詞での脚本を、1992年生まれのコムアイがステージでひとり、イタコのごとく演じていく様が圧巻だ。謎に包まれたDir.Fは、すべてを司る舞台監督としてステージ裏で“ニヤッと”目を光らせている。


 結成は2012年。翌年、下北沢ヴィレッジヴァンガード限定でリリースしたCD『クロールと逆上がり』でいわゆるインディーズ・デビューを果たす。しかし、時はアイドル戦国時代。水カンはアイドルではなかったが、誤解されがちなアイドルとの差別化戦略として、いやライブをおもしろくする為に、オーディエンスにお菓子を投げたり、ちゃぶ台をひっくり返したり、脚立に登ったり、軽トラックでステージに登場したり、コムアイ自身が鹿の解体をおこなうなど、突拍子のない、ある種パンキッシュなライブ・パフォーマンスによって独自路線を走りつづけてきた。そして、低予算ながら、気鋭の若手クリエイターとともにアイディアに溢れるこだわりのミュージックビデオをYouTubeで発信し続けたことがブレイクへのきっかけとなったことにも注目したい。


 そんな水カンの魅力の本質は、楽曲におけるセンスとクオリティーの高さだ。ケンモチヒデフミが手掛けるサウンドは、ダンスミュージック最前線のトラップ、ジュークなどベース・ミュージックを取り入れた遊び心ある音作りをしており、クスッと笑える完全日本語な歌詞がマニア心をくすぐってくれる。さらに、声の成分に何か入ってるんじゃないかってぐらい中毒性の高い、コムアイの歌うラップのインパクトの強さ。既存のJ-POP成功の方程式をまったく無視した活動が、結果、多くのクリエイターやアンテナを張っている早耳リスナーの支持を集めた。


 また、一般リスナーや、お子様人気の高い楽曲「桃太郎」など、誰しもが共感できるお伽噺をテーマとしながらも歌詞に“PCエンジン”“ハドソン”“16連射”などのフレーズがごく自然に登場するなど、“80年代に生きたかつての小学生心”をくすぐる謎のテーマ設定のユニークさが、ラジオ界隈で評価された現象も興味深い。ある種、マニアックなネタがちりばめられながらも世の中的に大ヒットした宮藤官九郎脚本のNHK朝ドラ『あまちゃん』と楽しみ方の構造が近いのかもしれない。そして、水カンはインディーズ・アーティストながら、ついに『ミュージックステーション』出演にまで登り詰めたのだ。


 そんな、水カンはいつの日からか海外展開を夢見ていたという。オーディエンスの心も身体も踊らせる低音の効いたこだわりのサウンド・メイクや、コムアイがステージでオーディエンスを扇情する様は、世界を席巻しているEDMカルチャーの文脈にも近かったという発見があったのかもしれない。今年、3月15日には世界最大規模の音楽・映画・ITのコンベンション&フェスティバル『SXSW 2016』への出演が“WEDNESDAY CAMPANELLA”名義で決定している。水カンが、世界へ向けてどんなパフォーマンスを披露するかが楽しみだ。(ふくりゅう(音楽コンシェルジュ))