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「作品」から「アーティスト」へ? ビルボードランキングが伝える音楽シーンの最新力学

2016年02月22日 09:51  リアルサウンド

リアルサウンド

 ライター・物語評論家のさやわか氏の連載『さやわかの「Billboard Japan Hot100」チャート分析』。今回は、前週がビッグアーティストのアルバムリリースが重なった週ということもあり、いつもの「billboard Japan HOT 100」ではなく、「Hot Artist」に着目し、ランキングから見える人気アーティストの傾向と、音楽シーンの動向を分析してもらった。(リアルサウンド編集部)


 リアルサウンドでは以前よりシングルチャートについて書かせていただいているのだが、今週はホットアーティストランキングに注目した記事を書くようにというふうに言われたわけです。要するにそれはシングル/アルバムの作品名じゃなくて、注目度ランキングみたいなものなんですね。


 このチャートだとベスト10の中にBUMP OF CHICKEN、MAN WITH A MISSION、ONE OK ROCK、星野源と、ロック系のアーティストが多めに入っているように感じます。まあ最近のロック系はセールスがよろしくなくともファンの熱心な支持がありますから、上位にもなるのも納得かもしれません。とはいえ1位のバンプは新アルバム『Butterflies』をリリースしたばかりでして、これが評価されてこの順位なのは間違いないでしょう。というわけでアルバムのチャートでも、ちゃんとバンプが1位になっております。それとマンウィズも、あとは2位のE-Girlsもアルバムをリリースしていますから、これが上位に食い込んだ主因と考えることはできるでしょう。


 さりとてアルバム順位ではなく、アーティスト順位が重視されるところに、結局いまの音楽シーンを支えているのは個々の作品ではなくアーティスト自身の力なんだなあというのがますます前面化してきたのを感じます。9位の星野源や12位のback numberなんかも、もう新譜が出てからかなり経っているのですが、やっぱりアーティスト自身への支持があってこそ上位になっているようであります。


 ちなみにシングルだけの順位だとKAT-TUNが首位であります。こちらはグループとしていろいろな紆余曲折がありすぎた末に10周年を迎えて活動休止することが発表されたばかりでして、ファンの皆さんもひとまず最後の買い支え体制に入っているということなのでしょうか。曲調は今どき珍しくもなくなったハードなエレクトロテイストを打ち出すロックナンバーといったところですが、メンバーが掛け合いのようなハーモニーを見せることでアイドルらしいボーカルワークの楽しさがある曲になっております。これが見られなくなるのであれば、全く残念なところでありますし、いやそもそもこの状況下でシングルの曲名が「TRAGEDY」というのは悲しすぎる気がする次第であります。


 あと、アーティストランキングでやや気になったのは26位にアース・ウィンド・アンド・ファイアーがランクインしていたことでしょうか。もちろん、ボーカルだったモーリス・ホワイトが2月頭に亡くなったことにより注目度が高まったということなのでしょうが、このランキングにおいてぶっちりぎで上昇率の高かったのはラジオでのオンエア回数でして、オンエア数だけで見れば今週1位ということらしいです。まあラジオって機会があればアース・ウィンド・アンド・ファイアーとかかけちゃいそうだし(偏見)、まして追悼ともなればものすごく張り切ってオンエアしそうだよなあというところであります。しかしながら他の指数を見る限り、追悼の動きがラジオ以外でそこまで広がったようにも見えないわけで、ひたすらにラジオの人たちのモーリス・ホワイトに対する熱意の強さが感じられたチャートアクションだったなあというところでありましょうか。(さやわか)