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消費税の次は「貯蓄税」と「死亡消費税」? 個人の資産にかかる新税を導入すべきか

2016年02月21日 11:42  弁護士ドットコム

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少子高齢化時代における社会保障の財源として、来年4月から消費税が10%へ引き上げられることが予定されている。政府はほかにも新しい税金の可能性を模索しているようだ。


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NEWSポストセブンに2月2日に掲載された記事には、「貯蓄税」と「死亡消費税」という新しい税金の名前があげられていた。貯蓄税とは貯蓄に対する税金で、たとえば個人の預金残高に一定の税率を乗じて課すかたちが考えられる。一方、死亡消費税は、個人が亡くなったときに残った遺産に一定の税率をかける税だという。



これらの貯蓄税や死亡消費税には、どのようなメリットとデメリットがあるのか。財政の健全化などの観点から、今後、導入すべきなのだろうか。佐原三枝子税理士に聞いた。



●貯蓄税のメリットとデメリットとは?


――貯蓄税とはどんなものでしょうか?



「構想として聞こえてくるのは、『国民一人当たり1000万を超える預金に対して、毎年2%の税金を課税する』というものです。



預金の金利が小数点以下2ケタ、3ケタという時代に、2%も税金が課せられれば、預金は目減りするだけです」



――貯蓄税の導入にどんなメリットがあるのか?



「『預金するほうが損だ』と人々が考えることで、お金が消費にまわり、景気対策としても、所得の再配分としても優れているのではないか、と考えられています。



消費税は、所得に占める生活費の割合から考えると、所得が低いほうが税負担割合が重くなる傾向があります。これに対して、貯蓄税は、お金を持っている人に課税するので『公平になる』という議論もあります。



貯蓄税は、国内の預金残高に対して課税されるので、その対抗策として、現金として引き出してタンス預金をしたり、海外に預金を移転して課税を逃れようとすることが考えられますが、株や不動産への投資につながるメリットもあります」



――デメリットはあるのか?



「投資の経験のない人は、単に預金を引き出しておくことが考えられます。タンス預金が街にあふれると、治安が悪化したり、詐欺でだまされる人が増えるのではないかと不安です。



また、休眠預金が悪者のようにいわれていますが、もし休眠預金が多額に出金されれば、銀行の信用や国債の資金の裏付けはどうなるのでしょうか。そのあたりにも影響が出るのではないかと思います」



●「死亡消費税というネーミングに違和感」


――死亡消費税についてはどうみるか?



「死亡時に残った財産に一定税率をかけて課税するという税金のようです。一定額までは課税されない相続税とは異なり、すべての人を課税対象とすることを想定しています。東京大学の伊藤元重教授が2013年6月の社会保障制度国民会議で提唱したものです」



そこでは、60歳で定年退職し、85歳で死亡するまであまり消費をしないで、お金を『ため込んだ』高齢者が例としてあげられました。その人が残した財産が相続税の対象にならない場合、生前に支払うことのなかった『消費税相当額』を死亡時に支払ってもらい、それを高齢者の医療費に充ててはどうかというアイディアです」



伊藤教授の発言は、政府サイトに掲載されたアーカイブ動画で確認できる。



http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg8047.html


(政府インターネットテレビ・社会保障制度国民会議13回・1時間31分37秒以降)



――この伊藤教授の発言をどう受け止めたら良いのか。



「もし導入されれば、資産家は贈与による資産移転を考えるでしょう。しかし、一般人が高齢になって、そんなに派手に贈与や消費はできないと思います。子や孫に迷惑をかけないように、老後の不安から資産を残しているのが普通でしょう」



――そうなると、死亡消費税なる税金を導入すべきなのだろうか?



「そう簡単に導入するべきではないと思います。



個人的には、所得税を支払ったあとに残った財産の蓄積に、さらに相続税を課税することすら『二重課税ではないか』と考えています。そのうえ、さらなる税金を考えているのだとしたら憤りすら感じます。



『死亡消費税』というネーミングも違和感を感じます。消費税は、事業者が納税するものです。資産を残したことに対するペナルティとして、一般人に消費税と名前が付くものを納めさせるなど、税制に対する誤解を生じさせる元にもなりかねません。



提唱者側のロジックには、経済成長をしなくても成立する社会を作るために、元本を維持し、利息のようなものだけで、国の経済が維持できるような仕組みを考えるべきだ、という思考が見てとれます」



――「貯蓄税」も「死亡消費税」も、個人が形成した資産に課税しようという発想といえるが、その点については、どう考えるか。



「資産を形成することが悪なのでしょうか? 一人当たり1000万の預金と年金で、安心して老後の生活が送れるのでしょうか? 多くの人が、所得再配分の配分をする側でなく、早々に受ける側に回ったほうが得だという気持ちにならないでしょうか? そのあたりの議論も十分に尽くしていただきたいものです。



若い人たちが起業したり、挑戦することで所得がアップし、それによって資産が形成されるという成長型の社会が夢物語だと思いたくありません」



【取材協力税理士】


佐原 三枝子(さはら・みえこ)税理士・M&Aシニアスペシャリスト


兵庫県宝塚市で開業中。工学部やメーカー研究所勤務から会計の世界へ転向した異色の経歴を持つ。「中小企業の成長を一貫してサポートする」ことを事務所理念とし、税務にとどまらず、経営改善支援、事業承継や海外事業展開の支援を手掛けている。


事務所名 : 佐原税理士事務所


事務所URL:http://www.office-sahara1.jp/




(税理士ドットコムニュース)