2016年02月21日 08:42 弁護士ドットコム
政府の介入をきっかけに、「実質0円」などの携帯電話料金の見直しが進む中、批判の声が強かった「2年縛り」についても見直しの動きが出ている。NTTドコモの加藤薫社長は1月下旬の決算説明会で、2年縛り終了後の解約期間を現状の1カ月から2カ月へと延長するよう準備を進めていることを明らかにした。今年3月から変更する予定という。
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同様にKDDIも、解約期間を1カ月から2カ月に延長する方向で検討している。ソフトバンクも、産経新聞の報道によると、2カ月に延長する方向で検討しているという。
「2年縛り」をめぐっては、2年間の契約が終了した後の1カ月間に解約しなければ、契約が自動更新されて、1カ月過ぎてから解約すると、高額の解約金を支払わなければならないことが批判されてきた。1カ月を2カ月に延長するだけで十分なのだろうか。上田孝治弁護士に聞いた。
これまで、どのような問題があったのか。
「現状は、期間を定めた契約と自動更新がセットになっています。
更新の場合には、解約金なしで解約できる期間がわずか1カ月に限られていました。しかも更新月の利用者に対する周知も十分とは言えない仕組みになっています。
契約して最初の2年間はともかく、更新後の期間でも一律に解約金が発生することは、多くの利用者にとって不意打ちではないでしょうか。
すでに長期間利用した後なのに、解約金が発生すること自体、納得しがたいものでしょう」
「無効だ」と訴えた場合は、認められるのだろうか。
「更新後の契約解除料については、裁判も起きています。解除の影響で事業者に発生する『平均的損害』を超える解約金は無効であるという消費者契約法9条などを根拠に争われているのです。
しかし、各携帯キャリアの定める解約金の額が、解除の影響で各携帯キャリアに発生する『平均的損害』よりも低いとして、無効にはなっていません」
今の段階では、無効にすることは難しそうだ。では、各携帯キャリアが、更新月を2カ月に延長することについては、どう考えたらいいだろうか。
「期間の延長は、しないよりはマシでしょうが、根本的な解決には全くなっていません。変化の激しい電気通信の分野においては、各社の提供するサービスについて、利用者が内容や価格を吟味し、より優れたサービスを適宜選択できることが重要です。
しかしながら、2年間の期間拘束が自動更新により繰り返され、長期間にわたって利用者による解約が制限されるために、利用者による適宜の選択ができず、その結果、通信事業者による適正な競争も期待できなくなります。
したがって、利用者にとって実質的な選択肢となり得るような料金水準による期間拘束のないプランや、期間拘束が自動更新しないプランを設け、利用者によりよいプランを選択してもらうといった抜本的な対応が必要だと思います」
上田弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
上田 孝治(うえだ・こうじ)弁護士
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行うとともに、中小企業診断士として企業の経営コンサルタント業務も行っている。
事務所名:神戸さきがけ法律事務所
事務所URL:http://www.kobe-sakigake.net/