残業代が出ず実質的にボランティア状態になっている、教員の部活動指導。これまでも問題が指摘されてきたが、ネット上で「教師に部活の顧問をする・しないの選択権をください」という署名活動が立ち上がり、2万人以上の署名が集まっている。
オンライン署名サイトChange.orgで行われているもので、発起人は「部活動問題 対策プロジェクト」。宛先は文部科学相の馳浩氏や文科省初等中等教育局局長ら5人。説明書きは、「ある教師」が語ったという悲惨な経験談から始まる。
「100連続勤務達成。2014年の休日は7日間でした。全ては部活動のせい。ストレスなのか疲れなのか、最近心臓がバクバクなって頭に血が上った状態になる。病院に行く暇は皆無」
バレー部顧問の26歳教員が過労死認定。授業の質低下など生徒にも不利益
部活動は教育課程外の活動と定められているが、教育効果が期待されるあまり、活動内容と教員の責任が拡大しているとサイトは説明。しかもその部活動は、教員がボランティアによる指導で成り立っていると問題視する。
「ボランティアであるはずの部活動の指導は全員顧問制度という慣習のもとに教師に強制されており,過重労働によって様々な不幸が起こっているのです」
2011年には大阪・堺市の市立中学校で、バレー部顧問を勤めていた当時26歳の男性教員が死亡し、過労死認定された。朝や放課後、土日の練習指導などによって教師が多忙を極め、授業の質の低下など生徒にも不利益が出ているとする。
放課後は部活指導ばかりに拘束されるのではなく、教師自身の裁量で使える時間が必要だとし、「学校の教師に部活動の顧問をする・顧問をしないの選択権を与えるよう,文部科学省が日本全国の教育委員会に指導・指示することを求めます」と訴えている。
元教員も部活動強制に激怒「教員にもっと死ねというのか」
このページは昨年12月末に開設され、2月18日現在、約2万1000人の署名が集まっている。賛同者には教育関係者が多く、現在2年目という中学校教諭の女性も、バスケ部の顧問をしている影響で授業準備に充てる時間が不足していると明かしている。
「教科やクラス運営について研究しなければならない若手の教員に、特に運動部の顧問が押し付けられている現状に憤りを感じます。(中略)教員が疲弊し、過労死ギリギリの状態では、学力も生きる力も育てられません」
元教員の男性も、昔から教員は過重な部活指導に苦しめられてきたと指摘。「過労死で教員が死んでも、勤務時間外に仕事ではない部活動をしろと、これからも強制し続けるのでしょうか。もっとたくさん死ねというのでしょうか」と嘆いている。
部活動問題対策プロジェクトは公式サイトやブログなどで、他にもひどい事例を紹介している。「35連勤という人体実験」という記事では、土日の部活動のせいで無休で働き続けた中学教員の体験が綴られている。
一生懸命練習する生徒の姿には感動したが14連勤を終えた頃から体が悲鳴をあげ、「目は常に充血し、頭は部活のことでいっぱいいっぱい。首筋に帯状疱疹ができ、ストレスでイライラが止まらない」といった症状が出たという。
内田良氏「部活動問題解消はこの冬最大のムーブメント」
この中学教員はイライラのため酒量も増え、中学を辞めて小学校の教員になることを検討したという。確かに、これでは続けられない。部活動顧問が実質強制ということであれば、地方公務員法違反になるおそれもあるという指摘もある。
署名ページには、教育学者の名古屋大学准教授・内田良氏も名を連ねていた。部活動問題解消は「教育界におけるこの冬最大のムーブメント」だとし、
「既存の組合や組織を超えて,問題意識を共有する若手の先生方を中心に訴えが始まったことが、画期的です。先生方の冷静で理論的な働きかけが、部活動のあり方を少しずつ変えてくれるものと、心よりご期待申し上げます」
と支援のコメントを寄せている。
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