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事実婚カップルに赤ちゃん誕生…「認知」しないと思わぬデメリット

2016年02月18日 17:52  弁護士ドットコム

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結婚のかたちはさまざま。役所に「婚姻届」を出さずに結婚する「事実婚」もその1つのかたちです。


そんな事実婚をした女性から、「うまれてくる子どもに、法的なデメリットはないのでしょうか?」と、弁護士ドットコムの法律相談に質問が寄せられました。


事実婚カップルの間に赤ちゃんが生まれるとき、どんな手続き、注意が必要なのでしょうか?


作花知志弁護士に詳細な解説をしていただきました。



A. 父親が子供を認知しないと、父子は法律上の親子になれない。


知っておいた方がよいことの1つは、父親が子どもを「認知」しない限り、父子が法律上の親子になれないことでしょう。


事実婚の夫婦の間に子どもが生まれた場合、出生届を出すことで、母親を筆頭者とする新しい戸籍がつくられます。子供は母親の戸籍に入りますが、父親の欄は空欄のままです。この状態では、子供と父親との法律上の親子関係は存在していません。


父親と子どもが、法的に親子になるためには、父親が、子供が自分の子供であることを認める「認知届」を提出する必要があります。認知は、子どもが胎児の間でも行えます(ただし、認知について母親の承諾を得ることが必要)。さらに、子供から父親に対して認知の訴えを起こすこともできます。


もう一つ、事実婚夫婦の子どもをめぐって問題になりうるのは、親権についてです。


事実婚では、原則として、出生届を出した母親が親権者となります。ただし、父親が子どもを認知した場合、父親と母親が話し合って合意すれば、父親を親権者と決めることもできます。


では、関係を解消することになった場合、親権者はどのように決まるのでしょうか?


法律婚では、夫婦間の話し合いか、家庭裁判所での調停、審判によって親権者が決まります。いっぽう、事実婚の場合は、それまでの単独の親権者が事実婚を解消した後も親権者となり続けます。


ただし民法では、「子供の利益のために必要がある」と認める時は、家庭裁判所が親権者をもう一方の親に変更できるとしています。


最後に、どちらかが亡くなった場合に、子どもが遺産を相続できるかどうかを考えてみます。


相続人になるためには、事実婚の夫婦であった父親・母親と子供との間に、法律上の親子関係が存在していることが必要です。


まず母親は、最高裁の判例により、子供を認知したかどうかは関係なく、分娩によって法律上の親子関係が生まれるとされています。(最高裁昭和三十七年四月二十七日判決)。したがって、母親が亡くなった場合、子供は当然に母親の相続人になることができます。


では、父親が亡くなった場合はどうでしょうか。事実婚の場合、父親と子供との間に法律上の親子関係が生じるためには、先述のように「認知」の手続をしなければなりません。父親が子どもを認知していなければ、父親の死後、子どもは相続人にはなれません。




【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/