2016年02月17日 18:42 弁護士ドットコム
2011年3月に未曾有の事故が起きた東京電力の福島第一原発に近い福島県南相馬市の桜井勝延市長が2月17日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開いた。桜井市長は、九州電力の川内原発が昨年8月に再稼働したことに触れて、「被災地の住民として怒りをもっている」と批判した。
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福島第一原発の北方約10キロ~40キロの範囲に位置している南相馬市では、原発事故の影響で、多くの住民が市外への避難を余儀なくされた。現在でも市内の一部が、帰還困難区域や居住制限区域、避難指示区域に指定されている。
桜井市長は会見で、今年3月末ごろに住宅地の除染が完了することを見込んでおり、4月には避難指示を解除する予定だと説明した。また、避難した人たちの一部が戻ってきていないことを課題としながらも、ロボット産業への参入など「新しいまちづくり」に取り組んでいくことを強調した。
一方で、桜井市長は「南相馬をはじめとした原発被災地が、まだ復興していないのは事実だ」と述べた。
南相馬市は昨年3月、原子力エネルギーに依存しないまちづくりを進める「脱原発都市宣言」を全国に先がけておこなった。だが、昨年8月、九州電力の川内原発が再稼働するなどの動きが起きており、桜井市長は「被災地の住民としては怒りをもっている」と批判した。
会見では、海外メディアの記者から「東京と被災地で温度差があることの背景についてどう考えるか」という質問があがった。桜井市長は「震災が共有されていないからだ」と答えた。「南相馬市で起きていることを原発再稼働の地域の首長たちが知っていたら、市民に対する責任として、命の重さを考えるはずだ」と付け加えた。
さらに、桜井市長は「残念ながら『エコノミー、エコノミー、エコノミー』と叫ぶ首相に象徴されるように、命が先なのか、暮らしが先なのか勘違いしている人が政治家の中にもいるんじゃないか。命を危うくするような政策は推し進めるべきではない」と訴えていた。
(弁護士ドットコムニュース)