2016年02月16日 11:42 弁護士ドットコム
カシャッ!カシャッ!。静けさを破るようなシャッター音が本屋の店内で鳴り響く。東京都内在住のMさんが振り向くと、雑誌を立ち読みしている男性客が、ページをめくりながら、スマートフォンで撮影していた。すぐに店員がやってきて、その客を注意し、画像を削除するよう求めていた。
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こうした光景は、Mさんにも身に覚えがあった。ずいぶん前だが、本を購入せずに、気になるページをスマホで撮った。1ページだけだったので、罪悪感はほとんどなかったが、もし店員にバレていたらどうなっただろうと気になった。
本を万引きしたら、窃盗罪に問われる。では、本を撮影するのは、問題ないのか。同じように「情報」を盗んでいるようにも思えるが・・・。書店で本を撮影する行為が法律違反となるのか、東山俊弁護士に聞いた。
「結論からいうと、書店で本を撮影する行為は、窃盗罪とはなりません」
東山弁護士はこのように述べる。どんな理由があるのだろうか。
「写真を撮影しているだけで、本を盗んだわけではないからです。『情報』を盗んでいるのは間違いありませんが、窃盗罪は原則として、『かたち』があるものを盗む場合にしか成立しません。例外的に、電気は窃盗罪の対象となりますが・・・」
本を買わずに撮影することは、著作権法などに触れないのだろうか。
「撮影するだけなら、『著作権法違反』となりません。著作権法では、私的に利用するために複製を作ることは禁止されていないからです。
もっとも、その画像データを他人に渡したり、インターネットで閲覧できる状態にした場合、私的に利用するためといえず、著作権法違反になる可能性があります」
だが、こうした行為が横行すれば、書店としては困ったことになる。ほかの法律には触れないのだろうか。
「もし、無断撮影を禁止していることが張り紙などで明示されている場合、建造物侵入罪が成立する余地があります。
また、書店の営業の妨害になっている場合、業務妨害罪が成立する可能性もあるでしょう。退店を求められて拒否した場合には、不退去罪が成立することになります」
店員から注意されたり、画像を消去するよう求められたら、どう対応するのがよいのか。
「店には施設の管理権がある以上、注意されたら、速やかに撮影をやめなければなりません。また、退店を命じられた場合も、同様の理由により、素直にしたがう必要があります。退店を拒否した場合、先ほど述べたように、不退去罪が成立します。
画像の消去については、著作権法違反の場合は当然ですが、犯罪になっていなかったとしても、状況によっては撮影行為が損害賠償の対象になる可能性があります。その観点から、応じなければならない場合があると思います」
東山弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
東山 俊(ひがしやま・しゅん)弁護士
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。
事務所名:東山法律事務所
事務所URL:http://www.higashiyama-law.com/