2016年02月15日 12:41 弁護士ドットコム
兵庫県加西市の市立中学校の授業中に、男性教師が1年生の男子生徒の「髪の毛」をライターの火で焦がしていたことがわかった。この教師は1月20日、国語の授業中に「姿勢が悪い」と男子生徒を注意したが、態度を改めなかったので怒り、持っていたライターの火で生徒の髪の毛を焦がしたという。生徒にけがはなかった。
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教師は同日、生徒宅を訪問し、「不適切な行為だった」として謝罪した。加西市の教育委員会は、弁護士ドットコムニュースの取材に「生徒は元気に登校している。教師に対する処分の方針はまだ確定していない」と話している。
たとえ生徒が態度を改めなかったのだとしても、髪の毛をライターで焦がすことは、いきすぎた指導といえそうだ。このような行為は何らかの犯罪にあたらないのか。三村雅一弁護士に聞いた。
「本件の教師の行為は、体罰にあたります。体罰が違法な行為であることに議論の余地はありません。懲戒処分という行政上の責任や、損害賠償請求という民事上の責任が、問題となり得ます。さらに、刑事上の責任を問われる可能性もあります」
どのような責任を問われる可能性があるのか。
「刑事上の責任としては、『傷害罪』(刑法204条)か、『暴行罪』(刑法208条)にあたる可能性があると考えます。
過去には、他人の髪の毛を勝手に切る行為については、傷害ではなく『暴行』にあたるという判例(大審院明治45年6月20日判決)があります。また、女性の髪の毛の全部を根元から不整形に切除した行為については、『傷害』の罪にあたるとした判例(東京地裁昭和38年3月23日判決)もあります。
さらに、不法行為に基づく損害賠償を請求ができると考えられます。本件は公立中学校で起きていることから、国家賠償法に基づく損害賠償責任を負うことになると考えられます」
体罰は後をたたない。そこで、三村弁護士は次のように提言する。
「文部科学省は、体罰を防止するために、教育委員会と校長、教員が協力して、体罰の実態把握と事案発生時の報告の徹底を図るよう求めています。しかし、本件においては、体罰があったにもかかわらず、校長から教育委員会への報告がされていなかったと報じられています。ここに大きな問題があります。
文部科学省からは、体罰の禁止を徹底するための方法について通知が出されています。にもかかわらず、本件のように学校内部で隠蔽されてしまうケースが多々あるように思われます。
文部科学省からの通知内容が徹底されるべきなのはもちろん、体罰を防ぐためには、体罰を受けた児童生徒が主体的に被害を訴え、相談できる『第三者機関的な窓口』を設置し、それを児童生徒に対して周知することが不可欠であると考えます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
三村 雅一(みむら・まさかず)弁護士
大阪弁護士会会員。中小企業法務から、離婚、相続等の一般民事、交通事故、刑事弁護等幅広く取り扱う。また、子どもに関する事件(親権、監護権、虐待、いじめ、体罰、学校事故、少年事件等)にも力を入れて取り組んでいる。
事務所名:弁護士法人近畿中央法律事務所
事務所URL:http://www.kinkichuou.com/pages/