2016年02月14日 10:51 弁護士ドットコム
今年1月から始まったマイナンバー制度だが、あなたは自宅へ届いた「通知カード」を、きちんと保管しているだろうか。取り扱いに悩むところだが、岡山市では通知カードの詐取事件まで発生した。
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報道によると、岡山市内の80代女性は1月初め、自宅を訪れた20代の男性に「郵便局ですが、マイナンバー通知書を受け取りに来ました」と言われ、自分と知人男性の通知カードを渡してしまったという。
マイナンバー通知カードとは、どのような位置付けのものなのだろうか。もし他人に奪われてしまうと、どんな被害が起きうるのだろうか。影島広泰弁護士に聞いた。
「『通知カード』は、マイナンバーを本人に通知するためのものです。これ単独では、身分証明書として使うことはできません。身分証明書として使えるのは、市区町村に申請して入手する顔写真付きの『個人番号カード』のみです。
通知カードは、行政機関・勤務先・金融機関などに自分のマイナンバーを提供する際に使用するものです。番号を書き間違えていないかどうかを確認してもらうために、提示します。もし通知カードを詐取されてしまった場合でも、慌てることはありません。マイナンバーを知られても、それだけでは何もできないからです」
しかし、盗まれてしまった場合、さすがに不安だ。
「どうしても不安だという方は、市区町村役場に行き、『マイナンバーが漏えいした。不正に用いられる恐れがある』と変更を申請しましょう。認められれば、マイナンバーを変えてもらうことができます。
しかし、繰り返しますが、マイナンバーを第三者に知られても、マイナンバーだけではその第三者は、何をすることもできません。税務署や会社などがマイナンバーを受け取る際には、通知カードに加えて、運転免許証やパスポートなどで必ず『本人確認』しなければならないとされているからです。
マイナンバーの悪用といえば、たとえば社会保険料の不正受給などが考えられます。ところが、もし他人のマイナンバーを持って役所に行ったとしても、運転免許証などがなければ、役所は書類を受け取ることすらしてくれないのです。
このように、マイナンバー制度は、漏えいを前提とした制度設計がされています。もちろん、その前提として、役所が本人確認を行っていることが必要ですから、きちんと運用してもらいたいと思います。
また、我々個人も、マイナンバーが漏えいしてしまうと、『マイナンバーが流出している』と称した『振り込め詐欺』の電話がかかってきたりするかもしれません。ですから、通知カードはなくさないように管理する必要があります」
影島弁護士は、このように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
影島 広泰(かげしま・ひろやす)弁護士
03年弁護士登録。ITシステム・ソフトウェアの開発・運用に関する案件、情報管理や利活用、ネット上の紛争案件等に従事。日本経済新聞2015年「企業が選ぶ弁護士ランキング」の情報管理部門で企業3位・総合2位。
事務所名:牛島総合法律事務所
事務所URL:http://www.ushijima-law.gr.jp/