履歴書に貼る証明写真のクオリティを上げると、内定の確率は上がるのか――。その答えは、私たち採用担当者がどのタイミングで写真を活用するのかを知ればすぐに明らかになります。
こういった現場の話は、就活生を専門に証明写真を撮り続けている業者にとっては「不都合な真実」かもしれません。正直なところ証明写真の役割とは、複数の就活生が集まるグループ面接やグループディスカッションで、一人ひとりを識別するときくらいしか使わないのです。(文:河合浩司)
実物を見たときに「滑稽な違和感」を与えるだけ
まともに人を採用しようとする企業は、履歴書だけで合否を決めることはまずありません。それが履歴書のごく一部に過ぎない写真であればなおのこと。一緒に働く仲間を見つけるためですから、様々なデータを考慮して合否を考えていくものです。
履歴書以外のエントリーシートや、SPIなどの試験結果なども重要な判断材料になります。にもかかわらず、証明写真がさも重要であるかのように売り込んでくるのが、写真業者のタチの悪さです。
それも単にきれいに明るく撮るだけでなく、お目目パッチリ肌ツルツル、挙句の果てに後付したかのような髪型に画像を修正するというのですから、知性のほどを疑ってしまいます。技術の進化により、昨今の証明写真はかつてないほど整っており、見るものに異様さを感じさせるほど。同様の感想を何人もの採用担当者から聞いています。
これらの写真を見ていると「たかだか証明写真に、一体いくらかけたのだろう」といらぬ心配を勝手にしてしまいます。しかし証明写真が使われるのは「複数の就活生と会う場面」だけ。写真とまったく異なる実物にお目にかかったときに「あれ、なんか違わない?」という滑稽な違和感を相手に与えるだけなのです。
それで何かを頑張った気になっても無意味
就活生専門の証明写真屋のサイトを見ると、1枚あたり4000~5000円という価格を掲げるものもあり、数枚撮れば2万円から3万円に。WEBエントリーで写真データが必要となるときには、追加料金を請求されることもあります。
しかし証明写真は、1枚500円程度の一般的なもので十分。一般企業に就職するために、証明写真に力を入れるのは明らかに無駄なのです。
志望業界ごとにメイクや髪型を変えると、書類選考の通過率が上がるという触れ込みもありますが、この手の対策が有効なのはTV局のアナウンサーくらいでしょう。この場合はもはや就活対策ではなく、モデルや芸能人と同様のオーディション対策が必要ですから。
数年前にTV局のアナウンサー志望者のエントリーシートを見たことがありますが、全身写真を4枚貼るスペースと「自分のキャッチコピー」を書く欄が一行だけ用意されていました。「顔とスタイルで合否を決めますよ」という、非常に分かりやすい書面の一例でしょう。
それでも就活ビジネスに携わる人は「少しでも確率が上がる可能性が否定できないのであれば、何をやっても自由じゃないか」と言うかもしれません。しかし反省すべきは、その考えの安直さです。それで何かを頑張った気になっても、まったく意味がありません。努力と工夫をすべきところは、まさに「全然そこじゃない」のです。
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