2016年02月12日 10:42 弁護士ドットコム
「会社の粉飾決算を内部告発するか迷っています」。はてな匿名ダイアリーに、社員200人の非上場企業(売上高20億円、利益1億円)で働く従業員の悩みが投稿されていた。
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この従業員は、会社が過去10年間に12億円の利益を水増しして、黒字に見せかけてきたと指摘。金融機関から新規の借り入れを繰り返し、役員報酬や配当、賞与などで散々ばらまいてきたため、借金返済に追われているそうだ。
従業員は「経営陣自らやっていることだから、社内通報しても意味はないし、告発するなら、税務署、決算書を提出している取引先企業、取引先金融機関を考えています」と自身の考えを書いている。
ただ、「さんざん甘い汁吸ってきた経営陣はどうでもいいけど、最悪200名が路頭に迷うことを考えると・・・どうしようかなぁ」と悩みも尽きない。この従業員の立場は書かれていないが、もし従業員が内部告発しようとした場合、どのようなルートでおこなうのがいいのだろうか。鎌田智弁護士に聞いた。
「この会社の粉飾決算は、会社法に違反するだけでなく、金融機関からの借入が詐欺にあたる可能性があります。
内部告発としてまず考えられるのは、上司や役員などに実態を伝えることです。コンプライアンス室や内部監査室、監査役に通報することも考えられます。会社に内部通報制度がある場合は、所定の通報窓口に通報を行います。
これらを行っても調査が行われず、違法行為が是正されない場合は、会社の外部である監督官庁などの行政機関に通報することが考えられます。このケースでは、警察などに対して通報することが想定されます。
さらには、新聞社などのマスコミや取引金融機関などに情報提供することもあり得るでしょう」
会社内部に通報することから始めたほうがいいのか。
「会社内部、行政機関、それ以外の通報先を取り上げましたが、通報は基本的にこの順序で行うことが重要です。外部に対する通報は会社のダメージが大きいですが、万一情報が間違っていたり、不正確だったりした場合、就業規則違反による懲戒処分や損害賠償請求をされる危険があるためです。
公益通報者保護法が、会社からの不利益処分に対して通報者を保護しています。一定の要件のもとに、内部告発をした従業員に対し、解雇やその他の不利益処分をすることを禁止しています。その保護の要件は、通報先が外部になればなるほど厳しくなっています」
鎌田弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
鎌田 智(かまた・さとる)弁護士
上場企業の法務部長を務めた後、現在の事務所を開設。企業内弁護士の経験を生かし、中小企業のビジネス法務に取り組む。
事務所名:鎌田法律事務所
事務所URL:http://www.kamata-law.jp