2016年02月12日 08:31 弁護士ドットコム
「子どもが歩道を自転車で走行中、道路脇に設置されていた店舗ののぼりに自転車のタイヤが引っかかり、転倒しました」という女性(トピ主)が、Yomiuri Onlineの「発言小町」に相談を寄せました。
お子さんは、歩道にある側溝蓋の上を走行していたといいます。その理由は「子どもには歩道であっても左側を走行するものという認識があり、それがこの道路では側溝蓋の上だった」のだとトピ主は説明します。
のぼりは、店舗敷地内にあったものの、風向きによっては歩道に出てしまう状況だったそうです。トピ主が「数千円の治療費と、自転車の修理代(これも数千円)」を求めると、店舗は「側溝蓋は、そもそも自転車の走行・歩行者の歩行に利用される部分ではない。旗の部分がすべて歩道に出ていても、側溝の幅を超えることはないので、違法ではない」として、請求を拒否したそうです。
レスには、「そもそも歩道は自転車で通行して良い場所ではありません」などと、歩道上の走行をとがめる指摘が相次ぎます。しかし、トピを立てた約1週間後、トピ主のもとに店の幹部が訪れ、「のぼりの撤去」と「治療費の支払い」を約束してくれたそうです。
今回、よい方向に事態は動きましたが、トピ主の最初の質問である「すべてのうちの落ち度で店舗の賠償責任は一切求められないのでしょうか?」という当初の店側の言い分は正しいものだったのでしょうか。今田 健太郎弁護士に話をききました。
(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「歩道の側溝蓋の上を走行(歩行)するのは道路交通法違反?」はこちらhttp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2015/1224/744943.htm?g=15)
A. 不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性
公道上に、店の「看板」や「のぼり」などが出ており、その歩道の幅や、通行量などに照らして、通行者の安全に危険を及ぼしていると考えられるような場合、「看板」や「のぼり」の設置者は、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことがあります。
仮に、自転車通行者に怪我をさせた場合、その治療費や通院交通費、自転車の修理代をはじめ、重傷であれば、休業損害や後遺障害に対する損害も、賠償の対象となります。
では、このとき、店側は、自転車通行者が歩道上(側溝蓋の上を含む)を通行していたことを理由に、賠償請求を拒否できるでしょうか。
原則として、自転車通行者は道路交通法により、車道を走行しなければなりません。しかし例外的に、(1)児童や幼児並びに70歳以上の者、(2)車道が狭くて危険な場合などには、歩道を走行できます。
この場合でも、歩道上は、原則として中央から車道寄りの部分を徐行して走行する必要があります。もし、左側走行や速度超過などの義務違反行為があった場合、過失相殺による賠償額の減額はあるかもしれません。とはいえ、減額の幅は小さいでしょう。
なお、歩道走行が認められない場面であっても、これら道路交通法違反の内容は、過失割合の程度に影響はしますが、設置物に危険性がある限り、店側が全く賠償を負わないということは考えにくいところです。
【取材協力弁護士】
今田 健太郎(いまだ・けんたろう)弁護士
広島県出身。一橋大卒。鹿島建設勤務。広島簡易裁判所民事調停官(非常勤裁判官)。平成25年度広島弁護士会副会長。現在、日弁連災害復興支援委員会副委員長。法律相談におけるカウンセリングの役割を重視している。
事務所名:弁護士法人あすか東広島事務所
事務所URL:http://asuka88.jp/