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賃貸収入7000万円を得ていた消防副士長に「減給処分」 公務員の副業はダメなの?

2016年02月11日 11:22  弁護士ドットコム

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佐賀広域消防局は1月中旬、自身の名義でマンションや駐車場などの不動産を購入し、許可を受けずに「賃貸料収入」を得ていた消防署職員を、地方公務員法に違反するとして、減給10分の1の懲戒処分にすると発表した。


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報道によれば、処分を受けたのは消防副士長で、自分の名義でマンションなど15の物件を佐賀市内などに所有し、賃貸料収入として年間約7000万円を得ていた。副士長は、消防局の事情聴取に「父親が経営する不動産会社を手伝っていた」と説明したという。



民間企業で働くサラリーマンの中には、自分名義のマンションなどを他人に貸して家賃収入を得ている人もいるが、公務員は、このような不動産投資も「副業」として禁止されているのだろうか。湯川二朗弁護士に聞いた。



●「許可」を得れば副業が認められることもある


「今回の懲戒処分は、地方公務員法38条1項に規定する『営利企業等の従事制限』に違反すると判断されたためです。



実は、公務員の副業は一律に禁止されているわけではありません。地方公務員法38条1項には。次のように書かれています。



『職員は、任命権者の許可を受けなければ、自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない』



つまり、副業そのものがいけないということではなく、『副業をする場合は任命権者の許可を受けなさい』と規定されているのです。



兼業といっても様々なものがあり、兼業が公務員としての仕事に及ぼす影響や公務の信頼を損ねる可能性も様々ですので、任命権者のチェックを受けなければいけないと決まっています。



今回の処分は、上司の許可を得ていなかったことが問題になったと考えられます」



では、「不動産投資」そのものは問題がなかったのだろうか。



「単に親の財産を相続して不動産所得があっただけであれば、許可申請をすれば許可を得られたと思います。しかし、今回は『父親が経営する不動産会社を手伝っていた』ということのようです。



この場合、公務の信頼を損ねるおそれもあるような種類・用途の不動産にかかわるリスクがあります。また、不動産の購入や賃貸物件の管理もしなければならならず、時間も必要になりそうです。すると、公務員としての仕事や信頼に支障が出るとして、許可されない可能性があると考えます」



今回の「減給10分の1」という懲戒処分の内容は妥当だったのだろうか。



「公務員の場合、法令違反、職務上の義務違反・職務懈怠(けたい)、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合は、戒告、減給、停職、免職といった懲戒処分を受けます。しかし、具体的にどういう場合にどういう内容の懲戒処分を受けるのか、法律で明確になっているわけではありません。そこで、各自治体ごとに、懲戒処分の指針が定められています。



佐賀県でも、国(人事院)と同じような内容の懲戒処分の指針が示されています。無許可で報酬を得る事務事業に従事した場合の標準的な処分は、減給または戒告です。ちなみに、戒告、減給、停職、免職といった懲戒処分は、許可手続きを怠ったことに対する制裁という要素が強いのです。



本件の場合は、減給(10分の1)3カ月の処分ということで、やや重い処分のような気もしますが、消防副士長という管理職であることが考慮されたのだと思われます」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
湯川 二朗(ゆかわ・じろう)弁護士
京都出身。東京で弁護士を開業した後、福井に移り、さらに京都に戻って地元で弁護士をやっています。土地区画整理法、廃棄物処理法関係等行政訴訟を多く扱っています。全国各地からご相談ご依頼を受けて、県外に行くことが多いです。
事務所名:湯川法律事務所