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堀北真希の女優キャリアはどこに向かう? 清楚系から実力派への道を検証

2016年02月10日 11:41  リアルサウンド

リアルサウンド

『ヒガンバナ~警視庁捜査七課~』公式サイト

 現在放送中のドラマ『ヒガンバナ ~警視庁捜査七課~』は少し変わり種の刑事ドラマである。メインとなる刑事七課は全員女性で構成されているだけでなく、主人公が特殊能力を使って事件解決に導くというややSFめいた物語は、一昨年二時間ドラマとして放送された時はかなり浮いて見えたが、今回連続ドラマとして帰ってくると、不思議と何の抵抗もなく見れてしまう。


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 このドラマで特筆すべきは、何と言っても主役の来宮渚を演じる堀北真希である。他人の心を読む「シンクロ」と呼ばれる特殊能力を秘め、常にクールで毒舌を吐き、表情の大きな変化を見せないこの役柄は、彼女のこれまでのイメージとはかなりかけ離れたキャラクターである。もっとも、人気とは裏腹に、彼女の表情の演技については疑問視する声もよく見かけるだけに、このようなポーカーフェイスキャラは向いているのかもしれない。少なくとも、昨年俳優の山本耕史と電撃結婚をしてから初めての主演作となる今回のドラマは、彼女の女優キャリアにおいて重要な作品であることは間違いない。


 88年生まれの女優といえば、新垣結衣、戸田恵梨香、吉高由里子、そして堀北真希。この四人が同年代の女優の中でも群を抜いている。もちろん今回『ヒガンバナ』で共演している高梨臨や、最近CMや映画の出演が相次ぐ森カンナなど、数え上げれば多くの注目すべき女優が並び、俳優陣でも濱田岳や松坂桃李、三浦翔平などまさに黄金世代と呼ぶに相応しいメンバーが揃っている。その中でもかなり早い段階から注目を集めたのが堀北真希であろう。


 2003年にデビューを果たすと、その年の秋からは主演ドラマ『ケータイ刑事 銭形舞』がスタートする。この「ケータイ刑事 銭形」シリーズは、初代は宮崎あおいが主演を務め、堀北の後も黒川芽以、夏帆と続いただけに、2000年代前半の若手女優のブレイクを後押しするシリーズであった。その後もホラー映画『渋谷怪談』や喜劇『逆境ナイン』などの映画で、「真面目」かつ「清楚」なイメージを定着させると、同年代の男子たちにとって堀北真希は、憧れの女優という立ち位置ではなく、初恋の女性の理想像として印象付けられたのである。


 そして極め付けは大ヒットシリーズとなった映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で見せた、田舎から集団就職で東京にやってきた天真爛漫な女学生の役と、同時期に放送されていたドラマ『野ブタ。をプロデュース』での根暗な役。前者はシリーズを通して彼女が演じる役柄の成長に大きなフォーカスを当てられている重要なキャラクターであり、後者は原作小説では男性だったポジションをあえて女性に変更して作られた、かなり個性の強いキャラクターである。このふたつのギャップで、2005年末にはすでに人気女優としての位置を獲得したのである。


 それからは映画やドラマのみならず、人気ゲーム「レイトン教授」シリーズのボイスキャストを務めるなど活動の幅が拡がっただけでなく、演技の幅も多様化してくる。『翼の折れた天使たち』で演じた、保護観察中の引きこもり少女役や、『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』では男装して男子校に潜り込むという、かなり挑戦的な役が続くのだ。


 そういった若者向けのドラマでの人気先行の印象的な役柄だけでなく、日本テレビ開局55周年ドラマ『東京大空襲』でのヒロインや、ドラマ版『幸福の黄色いハンカチ』では映画で桃井かおりが演じていた役どころを演じるあたり、かなり実力を信頼されている部分も伺える。2012年にNHKの朝の連続テレビ小説『梅ちゃん先生』に主演し、全世代からの人気・知名度を獲得したわけだが、それにあやかって話題作ばかり出演するということがなかったのが、より彼女の好感度を上げるのである。女優としての実力で勝負する、その潔さという新たな魅力を獲得することになる。


 2013年末に公開された映画『麦子さんと』は、自分を捨てた母親の遺骨を持って、母の育った町を訪れた主人公が、かつて母が町のアイドルだったことを知るヒューマンドラマだ。元々監督の吉田恵輔が堀北真希のファンだったということがきっかけで動き出した映画だけに、アイドルとしての堀北真希が映し出されているだけでなく、与えられた難しい役にも正解を出せる女優としての彼女のポテンシャルの高さも見ることができる。まさに彼女の演技キャリアの集大成と言える作品となった。


 清楚系女優から人気女優へステップアップし、実力派女優として開花させた彼女は、ひとつの集大成的作品と結婚を経て、これから女優としての第2章が始まろうとしている。一部では引退説がささやかれているが、このまま引退してしまうのはさすがに勿体無い。昨年の1月クールに放送されていたTBSドラマ『まっしろ』は平均視聴率5.8%の失敗作として語られ、この一本で「低視聴率女優」のレッテルを貼られてしまったわけだが、その前の主演ドラマであった『ミス・パイロット』は全話2桁視聴率を獲得する安定感を見せたし、今回の『ヒガンバナ ~警視庁捜査七課~』もまだ10%台を下回らない好調を見せている。今後どんな女優に成長していくのか、楽しみな存在である。(久保田和馬)