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学生向け求人情報「固定残業代」の明記を求むーー大学教授らが企業の採用活動に要望

2016年02月09日 19:01  弁護士ドットコム

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来春卒業の学生に対する企業の採用広報活動が3月からスタートする。これに先駆けて、大学教授や弁護士などで構成する「ブラック企業対策プロジェクト」が2月9日、厚生労働省に対して「求人情報の表示」に関する申し入れをおこなった。


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同プロジェクトは、「募集段階から固定残業代について求人票で明示すること」を事業主に呼びかけるよう、厚労省に求めている。また、離職者数や有給休暇の平均取得日数といった幅広い職場情報を、事業主が積極的に公開することを期待している。



●「好条件を提示して若い人を釣っている企業が多い」


ブラック企業対策プロジェクトのメンバーたちは、厚労省への申し入れ後、東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで会見を開いた。若者の雇用に詳しい上西充子・法政大学教授は、現状の求人票には「初任給●円」などとだけ書かれていて、詳細は明記されていない場合が多いと指摘した。



「ある企業は、ホームページで『月給21万円+インセンティブ』と、別途残業代が支払われるような書き方をしていながら、企業説明会で配布した資料に『21万円以上(40時間分の定額残業含む)+インセンティブ』と、固定残業代が含まれていることをこっそり記載していたケースもあった」



実際は給与の中に「固定残業代」が含まれているのに、そのことが明示されていないと、「見せかけの月給」は高くなる。その結果、いわゆる「ブラック企業」に応募者の目が向いてしまうのだという。



上西教授は「固定残業代が無いなら無い、もし含むのならば、何時間分いくらの固定残業代を含んでいるのか分かるように書いてほしいというのが、今回の要望だ」と申し入れの目的を語った。



一方で、優良企業の例として、初任給に固定残業代を含めておらず、別途残業代を支給している会社をあげた。そのような会社が「固定残業代は含まない」と明記すれば、適正に残業代を支払う企業に応募者の目がいくようになり、「(固定残業代があることを隠す)問題のある企業が淘汰されていくのではないか」とも指摘した。



同プロジェクトの共同代表の今野晴貴さんは「飲食関係や介護、不動産など人手不足の業界で、好条件を提示して人を釣っているケースが多い。本来であれば優良企業に行くことができた若い人がだまされて、生産性の低いところに放り込まれている」と語った。


(弁護士ドットコムニュース)