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「ネイティブ広告」のステマ問題、藤代准教授「法規制より自主的な排除の仕組みを」

2016年02月09日 10:51  弁護士ドットコム

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宣伝目的であることを消費者に気づかれないように宣伝する「ステルスマーケティング」について考えるシンポジウム(主催・日弁連)が2月5日、東京・霞が関の弁護士会館で開かれた。元新聞記者で法政大学准教授の藤代裕之さんや日本広告審査機構(JARO)の野崎佳奈子さんらが登壇し、「ステマ問題」にどう向き合うべきか議論した。


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●わかりにくい「広告」「PR」表記


ステマ問題は、飲食店の口コミサイトで自分の店に高い評価をつける「やらせ」投稿や、芸能人が実際には落札していないのに「格安で落札できた」などとブログで紹介する事例をきっかけに注目を集めた。



野崎さんは、新たなトレンドとして、各メディアの記事と同じような体裁で流通する「ネイティブ広告」のステマ問題を挙げた。



ネイティブ広告は、主にインターネット業界で注目されている広告手法だが、それぞれのメディアのコンテンツと同じような形式で配信されるため、広告かどうかの区別がつきにくいという問題がある。そこで、ネイティブ広告については、業界の自主ルールで「広告」や「PR」など、広告であることがわかるように表示すべきという基準が定められた。



しかし、実際には、広告であることの表示がなかったり、不十分だったりする「記事体広告」が、いくつかのメディアによって配信されているとして、問題になっている。このような「広告」表記のないネイティブ広告は、消費者が広告だと気づかず、通常のメディアの記事として読んでしまう恐れがある。



ネイティブ広告における「広告」「PR」表記について、野崎さんは「表示される場所が目立たなかったり、色や文字の小ささで、非常にわかりにくいものが多い。もっとわかりやすく表示すべきだ」と指摘した。



●「必要以上に行政が介入することを防ぐことが大切」


一方、メディア業界の動向に詳しい藤代さんは「メディアは生きていくためにお金儲けもしなければならない」として、ネイティブ広告の存在意義に一定の理解を示しつつ、「どのようにネイティブ広告とつきあっていくかが大事」として、ルールを設けることが必要との考え方を示した。



ただし、法律で厳格に規制することは慎重に考えるべきだとして、自主的な仕組みづくりの重要性を訴えた。



「必要以上に行政が介入することを防ぐことが大切だ。消費者の保護を理由に、政府が自由な言論を抑制していこうということはありうる。ジャーナリストとしての視点から見ると、権力とは、常にそうした機会をうかがっている存在だ。人々が自由に発信できてこそ、自由な言論、民主的な国家の根底となりえる。そこに、紛らわしい広告が入りこんだ場合、自主的に排除できる仕組みが大切だ」


(弁護士ドットコムニュース)